番外編

FS超ショートストーリィ・四季のうた・初夏・五人

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近頃長いのが書けなくなっておりまして、NOVEL、番外編のストックが尽きそうになっています。
そこで、番外編にも超ショートストーリィを。

季節感があったりなかったりの短い短い、物語とも呼べないほどに短いストーリィ。
楽しんでいただければ、最高に幸せです。

ちょっとの時間つぶしにでも、読んでやって下さいね。


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フォレストシンガーズ・超ショートストーリィ・四季のうた

1「四季の音(ね)」

 ハイネ? ハイネケンビールか? と連想してしまった真次郎に、隆也が言った。

「詩人の恋ってあるだろ」
「あ、ああ、そっちか」
「そっちって……他にどっちかあるのか?」

 いやいやいや、とごまかして、真次郎は乾隆也以下四人のフォレストシンガーズのメンバーに向かって、解説をはじめた。

「幸生は少年合唱団にいたんだから、知ってはいるだろ。シューマンの歌曲だよ。ハイネの詩集をもとに作曲したらしいんだ」
「美しい五月にはっての、ありますよね?」

 そう、それだ、と幸生を指さして、真次郎は続けた。

「ハイネってのは乾みたいな性格らしくて、詩の中には皮肉が盛り込まれているらしい。ドイツ語だから俺にもわかんねえけど、そのあたりをシューマンがどれほど音楽的に表現できたのかってことについては、ドビュッシーなどが議論していた、という話もあるな」

 またはじまった、と章は思う。俺はクラシックって嫌いなんだよな。
 俺は嫌いではないけど、むずかしいよなぁ、と繁之は思う。

 リーダーの真次郎が言った通りで、幸生は小学生のころには少年合唱団にいたのだから、基本的素養はある。真次郎は幼少のころからピアノをやっている上に本人の趣味もあって、クラシックには詳しい。隆也は門外漢だというが、クラシック好きではあるようだ。

「第1曲から第6曲までは愛の喜びを、第7曲から第14曲までは失恋の悲しみを、最後の2曲はその苦しみを振り返って歌っているらしいんだ。で、乾、詩人の恋がなにか?」
「俺たちが歌うとか? ライヴでやるの? アルバムにするんですか」

 目を輝かせた幸生が言い、やめようよぉ、と章はぼやく。隆也は言った。

「美しい五月には、僕のあふれる涙から、ばらに百合に鳩に太陽、君の瞳に見入る時、心を潜めよう、ラインの聖なる流れに、恨みはしない、小さな花がわかってくれたら、あれはフルートとヴァイオリン、あの歌を聞くと、若者が娘を恋し、まばゆい夏の朝に、僕は夢の中で泣いた、夜毎君の夢を、昔話の中から、古い忌わしい歌」

 日本語にしたタイトルも素晴らしいじゃないか、と隆也が言うのを聞いて、幸生の中にひらめきが生まれた。

「そのタイトルをぱくって詞を書いて、一枚のアルバムにする!!」
「そうだ、幸生、正解だよ」

 ぱくるとは人聞きが悪いが、タイトルには著作権はないので自由に使える。クラシック曲は著作権などはとうに切れているものがほとんどなので、CMなどでもよく使われるというのもあった。

「まずはこの歌、歌ってみるか?」
「ドイツ語でしょ」
「楽譜はあるはずだよ」

 英語でも苦手なのに、ドイツ語なんて無理だよぉ。俺が少年合唱団にいたころには、原語がなんであれ日本語に訳してあったよ、そうしてから歌おうよぉ、と言いたい幸生に、章は舌を出した。

「どんな曲だか俺は知らないけど、クラシックだろ。かったるいんじゃねえの?」
「かったるい……とも言える。あ、でも……聴けよ」
「あ……でも……」

 遠い昔にこんな経験がある。幸生と章は思い出した。
 大学生だったころ、物陰に隠れてふたりで聴いた、二年先輩の真次郎と隆也のデュエット。練習だったからこっそり聴いて、ふたりして感動した。

 あのときからだと十五年経つ。大人になって円熟味を増し、身内びいきではなくすべてに於いてグレードアップしたふたりの歌声。真次郎と隆也が「美しい五月には」を歌っている。聴き惚れそうになっている幸生と章を、繁之が促した。

「俺たちも歌おう」
「はーい」

 ただ聴き惚れているだけではない。今の俺たちは先輩たちの歌に参加できる。そうして五つの声がハーモニーになるのを、聴きにきてくれるお客さまもいる。プロになるってそういうことなんだな。

 かったるいとかクラシックだからとか、ドイツ語だからとかってどうでもいいじゃないか、と繁之も言いたい。歌おうよ、五人で歌おう。
 春も秋も夏も冬も、五つの声を五つの音色にして、世界中に響かせよう。

END









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~ Comment ~

NoTitle

ゆたんぽを使っても寒くて肩がバッキバッキです。
勝手なイメージですが乾くんは寒さに強そうです。


先日もう一つのほうのブログにコメントを書いたのですが、
なんでかそれが見当たらず……汗……
送信エラーに気づかなかったのか……
はたまた送信ボタンを押していなかったのか、定かではありません。。。
すみません……泣



ハルさんへ

コメントありがとうございます。
もうひとつのブログのコメント、確認してみましたが、なかったです。
どうして消えちゃったんでしょうね。
エラーになったのかもしれませんね。

ハルさんのおうちのあたりは寒いでしょうね。
大阪は今日はあたたかいですが、一時は雪がちらついたりもしました。
隆也は金沢生まれなので、寒さは得意なほうです。
大阪生まれの私は「本当に寒い!!」をあまり知らないせいか、冬が好きです。

NoTitle

あぁ、やっぱりですか……きっと送れてなかったんですね。



「晴れたから外に洗濯物を」なんて干してると、
乾くどころか凍っていることもあります(笑)
ここのところ暖かいですが、いつもなら一番寒い季節です。
そうしてバレンタインが過ぎたあたりから鼻がむずむずし始めます。

仙台は東北といえどあまり雪は積もりません。
10㎝積もろうものならニュースで「大雪が~」という程、
平野は降らないんです。
それなのに夏も35度になることもほとんどなく、
夏冬の気温差が一番少ない場所です。

仙台では何故か受験日に雪が降るジンクスがありまして、
大学or高校受験のどっちか必ず雪になります。
私もそうでした。
おかげで面接が中止になって喜んだのを覚えています。


いまの東北は温泉が最高です!
雪景色をみながらゆっくり入っていっぱい食べて寝る!
これぞ東北の冬!
あかねさんも是非!

ハルさんへ

いつもありがとうございます。

最近はぼちぼち書けるようになってきているのですが、まだ平常心に戻れていなくて、なにかにつけて生前のくぅを思い出してしまっています。
ちっともご訪問できなくてすみません。

冬の仙台、いいなぁ。
冬にはなかなか行けそうにないので、春に旅行しようかと計画していたのですが、なにかともの入りで、東北まで行くには経済的に……でして、残念です。

呑気な大阪人は雪に憧れているところがありますね。
夏に三十五度まではならないっていうのは、私にはもっともっと憧れです。
大阪だと、今日は三十五度? ましなほうやん、って感じですから。

NoTitle

いえいえ、気にしないでください!
もうひとつの方のブログに書いたのですが(そして送信されてなかった…)、
私は生き物を飼ったことがないので、
飼う大変さとか別れの辛さをしりません。
スーパーでもらった金魚は飼ったことがありますが、
まぁ、名前もなく虫かごを水槽代わりにして飼ってただけで。
だから想像するしかないのですが、
結局は想像以上のものにはなりません。
だからあかねさんが落ち着くまで待っています。


話しは飛びますが温泉は寒さが増すとその分、
あったかいのが身体に染み渡る!と思っているのです。
大阪といえど冬は寒いじゃないですか!
この季節こそ近場でもいいので温泉でぬくぬくするのが最高だと思うのです!
夏だからさらに汗をかいてさっぱり!という話も聞きますが、
私は本っっ当に虫(特に蛾)が嫌いで怖くて、
夏場の温泉はどうしてもいけません。
だって、温泉は山の方にあるし、山や森は虫がわんさか…………
だからこそ!!だからこそ冬なのです!!!

と、個人的すぎる意見ですが、温泉は身体があったまりますし、
泉質によって効能も色々です。
都合があった日には近場の温泉でゆっくりしてみてください。

ハルさんへ

コメントありがとうございます。

今の家では猫は四匹目でした。
最初の子とくぅは急死してしまったので、呆然って感じ。
ちぃは二十歳まで生きたので、心の準備もできていたし、十分だと思えました。
もう一匹は家出してしまったのですけどね。

ようやくどこかから帰宅したときに「くぅちゃんただいま」と言わなくなって、こうして忘れていくのかと寂しい気もします。

私は虫は平気ですが、暑がりなので夏はあまりお湯につかりたくないなぁ。
その点、冬のお風呂はいいですね。

冬のいいところは、お布団やお風呂やおこたでぬくぬくできるところだと思っています。
今は我が家で半身浴。
けっこういつまでも全身があったまってますよ。

ただ、冬でも暑がりなので汗がだらだら。
短気なのもありまして、長くつかっているのは苦手です。
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