ショートストーリィ(しりとり小説)

116「理想的な嘘」

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しりとり小説117

「理想的な嘘」


「彼にプロポーズされたときに打ち明けたのよ」
「僕も、彼女にプロポーズされたときに、もうこれで彼女は僕のものだって思ったから」
「そうね。そんなことで嫌いにはならないって自信はあったものね」

「それで、彼はなんて言った?」
「えらいなぁ、僕は未華子ちゃんを尊敬するよ、って。あなたの彼女はなんて言ったの?」
「今どき、感心よね。私は大くんを好きになった自分を誇りに思うわ。私ってやっばり男性を見る目があるんだなって改めて思ったんだそうだ」
「男を見る目があるのは私のほうよね」
「僕も女を選ぶ審美眼には自信があるよ」

「もちろん、そう言ったんでしょ」
「きみも、打ち合わせ通り?」
「ええ、もちろん」

 故郷で同じ小学校、中学校に通っていたミカコとマサルは、子どものころから妙に人に親しみを持たれた。異性を意識するような年頃になってくると、ふたりともにやたらにもてた。
 外見的には特別な美男美女でもないのだが、そこそこ華もあり、それほど目立ちすぎもせず、よく見ればプロポーションもいい。成績もまあまあ。スポーツもできなくもない。性格にも特筆すべき点はないが、じっくりした人柄のいいひとだと、ふたりともに長ずるにつれて他人に言われるようになってきた。

 突出した人間は意外に人気がないものなのかしれない。出る杭は打たれるとの格言通り、目立ちすぎるとよくない。あら、あのひと、ハンサムね、他のひとは気づかないかもしれないけど、私だけは彼のよさを知ってるのよ。ああ、彼女、よく見れば素敵だな。あのくらいだったら他の男は目をつけないだろうから、美人だけどよその男にさらわれる心配はなさそうだし。

 つきあう相手は必ずそう考える。未華子も大も自ら告白したことはなく、いつだって相手につきあってほしいと言われて異性と交際した。自然につきあい自然消滅する。俺が、私がふった、と必ず相手は思い込んでいた。

 高校を卒業すると、未華子と大は故郷から出て都会に行った。今どき大学くらい卒業していないと、まともな人間だと思ってもらえなくない? と相談して、そこそこの大学に入学して卒業した。大学には都会の人間も地方出身者もいたが、いずれからも故郷にいたころと同じようになんの苦労もなく告白され、交際し、自然に別れた。

 都会人は一筋縄ではいかないかと思ったこともあるのだが、まるでそうでもない。未華子にも大にも生まれながらに「異性にもてる」というなにかがそなわっているのだとしか言いようがなかった。

 そうして大学生までを、未華子と大は別々の相手とつきあい、別れ、を繰り返して生きてきた。卒業してからは表向きは堅実な企業に就職し、着々と準備を進めてきたのだった。

「奨学金を借りている妻のために、協力して返してやろう。そう決意する俺は男気があってかっこいいと、そう思う男はけっこういるよね」
「故郷の親に送金するために、貧しい暮らしをしている夫。私も彼を助けて支えてあげよう。そう考えるけなげな女に愛されてよかったね」

 だけど、ばれないかな、とはちらっとも考えたことはない。
 ついでに、未華子と大は互いに恋愛感情はない。そもそも恋愛に熱くなる体質ではなく、自分からは異性を愛したりしないからこその人生だったのかもしれない。

 理想的な相手を手に入れ、配偶者が都合してくれた金を上手に算段して蓄える。まとまった金額になったら起業する予定で、そういう意味で未華子と大はがっちり手を組んでいる。配偶者につく嘘もそう込み入ってはいないほうがいいのだから、これでいいのだ。

 人間的にも男性として、女性としても魅力がある未華子と大がタッグを組めば最強なのだから、いずれは配偶者にだって還元する予定なのだから、ふたりの前途は洋々としているのであった。

次は「そ」です。









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~ Comment ~

NoTitle

ここでいう「別れる」というのは、離婚じゃなくて、ただ恋人を解消するという意味なのかな?
それだったら何の罪にもならないし、この二人の作戦勝ちですね。
きっとこの二人はうまく起業して、この先も賢く儲けていくんだろうなあ。
だれも嫌な思いをしないし、この二人も幸せそうだし、・・・すべてこの世は事も無しなのかな^^;
でもこんな二人がいたら、こわい~。私は騙されないようにしよう。

limeさんへ

コメントありがとうございます。

若いころのこのふたりは、恋人同士としてつきあった相手と上手に別れ、むこうが「あいつをふった」と思っている、という感じです。
これはまったく罪ではありませんよね。

これから結婚してうまく相手をだましてお金を引き出そうとしているわけですから、このあたりは罪か? 「どうせ私をだますなら、だまし続けてほしかった」とか言いますから、一生だましとおせたらそれはそれでいいのかも?

詐欺師っぽい人間を書いてみたかったのですが、むずかしいですよね。
なーんかわかりにくいなかぁ、と思っていましたので、ご感想いただけて嬉しかったです。

読者さまをだませるようなトリックを使った小説、書いてみたいですよね。

NoTitle

似たもの同士の二人ですね。
上手く今まで生きてきて、結婚もいい相手を選んで、将来の野望も叶いそう…ってあたりで思い通りにならないどんでん返しがある人生が待ってそうで、この先が気になります((o(´∀`)o))ワクワク

あかねさんのお話はさらりと流れるように進むのですが、とても人間のことを見ていて、それをすくい取って書き上げるのが上手いと思います! 勉強になります。

あ、恋愛成績表 女性バージョンやってみたので良かったら見てくださいー http://ll050023.blog.fc2.com/blog-entry-154.html

たおるさんへ

コメントありがとうございます。
女性たちの恋愛診断も見せていただきました。

私のこの小説のほうですが。

こんなふうに調子よく世の中渡っていってる人間には、きっと悪いことが起きる。
お天道さまは見ている、とか言いますが。そうでもないような気もします。

こういう人間は死後にひどい目に……とか、来世はゴキブリ(シゲじゃなくて)に生まれ変わるとかなどとも言いますが、意外に周りのひとも彼らを悪くは思っていないのだったら、八方ハッピィなのかもしれませんよね。

上手いと言っていただけると恥ずかしいですが。
こんな感じの、微妙に悪い奴なのか、そうでもないのか、みたいな人間を本当に上手に書けるよう、がんぱります。

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