ショートストーリィ

CHIZURU/たおるさんのイラストによせて

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フォレストシンガーズ

白蓮」のたおるさんが描いて下さったイラストと、以前に書いたFSショート(100話)「1/100の純情な感情」をつなげて書いた「1/1000の純情な感情

このイラストはたおるさんが哲司と千鶴を描いて下さったものですから、千鶴も書いてやらなくちゃ、ということで、千鶴編です。

「99%の純情な感情」


1・繁之

 劇団ぽぽろと我々とは縁がある。乾さんが、ぽぽろの主催者である台湾人のゆうゆさんに中国語を習いはじめたのが発端で、関わりができた。

 頼まれて幸生が芝居に出演したり、章が芝居のテーマソングを書いたり、劇団員の方に我々のプロモに出てもらったり。そうして関わっているうちに、さして人気のある劇団ではなかったぽぽろからスターが誕生した。

 そのスター、KCイッコウくんの紹介で、乾さんに映画出演の話が持ち上がった。幸生にはドラマ志向があり、もとが大げさでオーバーアクションな奴だからもあって芝居はうまい。乾さんはドラマや映画に出たいとは思っていなかったようだが、その依頼を引き受けた。

「ハレムのサルタンの役らしいんだよな。ハレムの女たちは俺の寵を得んとして大騒ぎ。もててもてて大変らしいんだよ」
「……いつもと変わらないじゃないか」

 乾さんがそう言ったものだから、本橋さんはやっかんでいた。幸生と章は本気にしていなかったようだが、俺も大真面目に受け取って、乾さんの出番のときに見学に連れていってもらった。

 ところが、ハレムのサルタンのわりには、乾さんは私服でギターを抱え、バーの中のようなセットで弾き語りをやっていた。あとになって考えると、ハレムのサルタンは乾さんの嘘だったらしい。
 それは嘘だったのだが、俺が見学させてもらった写真撮影は、十分に色っぽいものだった。

 佐田千鶴、俺は知らなかったのだが、十九歳の女優だ。俺だけではなくて知っているひとはほとんどいないようだから、無名といっていいだろう。

 無名の女優と、ミュージシャンの役でちょっとだけ出演する乾さん。今から思えば乾さんはミュージシャン役だからこそ引き受けたようだが、なぜかそのふたりをポスターにしようということになった。俺はそのあたりの事情はまったく知らないし、できあがって街角に貼られ、すぐさま撤去されていたポスターも見ていないのだが。

 だが、俺はこの目で撮影風景を見た。あれはまだしも穏当だったようで、その後さらに濃厚でセクシーな写真を撮ったのだそうだが、俺はポスターの初期段階を目撃したのだった。

 女優なんてものは仕事で男とからんだって、いちいち恋なんかしない。相手を人間の男だとも思っていない、とも聞くが、千鶴さんは慣れていないせいもあり、乾さんに恋をしてしまった。恋をしても受け入れてもらえずに子ども扱い。哀しかったんだろうなぁ、と、俺には彼女の心を慮ることしかできないのだが、かわいそうだな、千鶴さん。


2・章

 役作りだの感情移入だの。役者なんだから仕事のためにはそれが大切なはず。乾さんになついている千鶴をはじめて見たときには、こいつ、プライベートでまで芝居してやがる、だった。

 よく見ればプロポーションがいいとわかるのだが、丸顔で胸が大きいせいか、千鶴は太って見える。俺は太目の女は嫌いだから、こんなデブ、こんなガキ、乾さんが相手にするわけねえだろ、としか思えなかった。いや、それ以前に、千鶴のは芝居だから。

 はじめは千鶴もそのつもりだったのかもしれない。
 けれど、いつしか本気になるってのもありがちだ。しかし、本気ってのはなにを示すんだろう? 乾さんと結婚したいのか、十九の小娘が?

 そうではなく、抱かれたいのだったら……抱かれたいだけだったら、俺だったら歓迎してやるのにな、と口走っては、幸生に怒られる。なぜか幸生はひどく千鶴に思い入れがあるようで、俺には不気味に映るのだった。


3・幸生

 ハートの中に女の子を住まわせているからこそ、俺は千鶴ちゃんの恋心を完全な他人事だとは思えない。おまえは変だ、わけわからん、と章には言われるが、章なんかにわかってたまるか。章はああ見えて完璧男。俺のハートは完璧男ではないのだから。

「女好きでセックス好きで、ナンパも好きなおまえのどこが男じゃねえんだよ? この変態」
「ああ、俺は変態だよ。微量に変態だよ。ほっとけ」
「……開き直ったな」
「ああ、開き直ったさ。俺が変態だったら誰かに迷惑かけてんのかよ?」
「俺に迷惑がかかってんだよっ!!」

 いいや、俺は章には迷惑なんかかけていない。乾さんにだったらちょっとだけかけているのかもしれないが、乾さんは器が大きいから笑って許してくれるんだ。

 と、こうして想いが乾さんへとたどりつくのは、千鶴ちゃんと俺の中のユキには共通点があるからだ。好きよ好きよ、隆也さん、って。
 だから俺は、千鶴ちゃんの恋心が手に取るようにわかる。わかりすぎて切ない。こんな気分は100%男である章にはわかりっこないのである。


4・真次郎

 わかりっこないと言われれば、章以上に「男」なのであるらしい俺にはもっとわからない。なにしろ俺は乾隆也には、本橋の長所は「男らしいところ」。短所も「男らしいところ」とまで言われる男なのだから。

 だから、女心なんてわからない。わかろうと努力する気もない。女なんてものは男にはわからないからこそ可愛いというか? 

 それよりも俺は思う。三十五歳の乾に十九の千鶴ってのは年の差がありすぎるが、千鶴が二十歳になったら別段問題もないのでは? そんなに惚れられてるんだから結婚してやればいいじゃないか。俺は仲間の奥さんが女優だなんて嬉しいけどな。

「千鶴は俺と結婚したがってるんじゃないんだよ。千鶴の野望は本物の女優になることだ。そのためには夫なんて当分はいらない。俺では千鶴のステップアップの要素にもならない。彼女はそう考えてるみたいだ」
「意外にしたたかなのか?」
「大物女優になりたい女の子だぜ。したたかでなくちゃ生き残ってはいけないよ」

 なるほど、そういうものか。
 ということは、千鶴は乾とどうしたいんだ? 抱かれたいだけだろ、と章は言っていたが、十九の女の子ってそんなに即物的なのか? 俺はちがうと思う。

 ともあれ、仲間の奥さんが女優だったらいいなぁ、という、俺の俗っぽい夢はかないそうにもないようだった。

 
5・英彦

 若くて美人でエロっぽい女の子。しかも彼女は売れていないとはいえ女優だ。俺が興味を持たないわけもない。

 乾さんが関わっているのだから、俺のかつての仲間たちは千鶴さんの秘蔵DVDなどを手に入れられる。俺は千鶴さんと乾さんのシークレットポスターも、大学時代の後輩が作成したふたりのショートドラマのようなものも見た。

 本人にも会ったので、千鶴さんの実物が本当に色っぽいとも知っている。
 で、感想? 乾さんはすげぇなぁ、しかない。女優なんて俺には雲の上の存在だから、生の姿を拝めただけで満足だ。

 そんな女の子と演技とはいえ抱き合ったり、素肌に触れたり。そういった仕草をいやらしくなくセクシーにやってのける乾さんはすごい。昔から俺は乾さんを見ては何度も何度も感じ入ったものだが、今回もこの言葉を彼に贈りたい。

 ほりゃあ乾さんはもてるろう。もてるに決まっとるきに。


6・隆也

 みんな好き勝手を言ってくれるが、俺の身になって考えろと言いたい。

 十九歳の女優の卵とつきあったり、彼女をベッドで抱いたり、まして結婚? そんなこと、できるわけがない。俺はこの次に恋をしたら、彼女にプロポーズして結婚するつもりでいる。そう、俺は千鶴には恋はしていないのだから。

「恋はしていないって言いながら、優しくしたり叱ったり、思い切りかまってるんだよね。乾くん、あなたの行為は千鶴さんには罪つくりだよ」
「そんなつもりは……」
「つもりはなくても事実なのよ」

 決めつけてくれたミエちゃんに、反論の言葉は見つからなかった。

 恋はしていないけれど可愛い。甘ったれで手のかかる妹のような千鶴を可愛がってやりたいのは罪なのか? 俺には下心も二心もないってのに、そうすることはよくないこと……うん、うなずけなくもないだけに痛い。

 だったら俺はどうすりゃよかったんだ? おまえみたいな小娘に興味はない!! と言い放って、最初から相手にしなければよかったのか? 今さら遅い。俺は千鶴に関わってしまったのだから。

 願わくば、千鶴が気の迷いを吹っ切って本当の恋をして、俺のもとから羽ばたいていってくれますように。若いころには乾さんを好きだと思っていたけど、あんなの錯覚だったのよ。十年後には千鶴がそう言って笑っていてくれますように。

 それまでは兄貴みたいに接していよう。それでいいだろ、千鶴? 俺だっておまえを完全に切り捨てはできない。可愛い女の子にあんなに慕われて、そこまでつめたくできる男がどこにいる? だから俺は甘くて、だから罪つくりだって、わかるけど。

 こんなふうにつらつらぐだぐだぼやいてみたところで、もてる奴はいいねぇ、と冷笑されるんだから、俺は不幸なのだ……とも断言はできないところが、俺も修行が足りないね。

END





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コメントみて飛んできましたー!二つもお話書いてくれて嬉しいです!!一生懸命描いた甲斐がありました(>_<)
今度は千鶴ちゃん編♪純情な感情が99%に上がりました(笑)(ん?上がったのか?)

シゲちゃん、相変わらずのんびりというか(笑)素敵な性格です♪

章くんは完全な男で、ユキちゃんは男と女が同居してるってことですね。

人間にも色々あるのですね…私も男性的な部分もあるだろうし、とか考えてたら男と女の定義ってなんなんだとか考えはじめてよく分からなくなってきました(´ε`;)ウーン…奥深い。
ユキちゃんが章くんに恋してる話しとかあるんですか??二人だと喧嘩ばっかしててもお互い分かり合ってる仲良しカップルになりそうです(^^)

真次郎さんの言うとおり、19と35だと犯罪!と思いますが、20と35だったら許せますね(^_^;)この1歳の差はなんなんだ(笑)19から20になるとき大して自分自身変化はなかったように思うので、数字の見た目の問題でしょうか(^_^;)

ヒデちゃんは乾さんが憧れなのでしょうか。女優さんの知り合いはいないですがきっとすごく美人さんで雰囲気ある人達なんだろうなあ。私も一度お目にかかりたいです(*´ェ`*)

そして最後に当の本人の乾さん(笑)
可愛い女の子に懐かれたら確かに無碍にはできませんよね(笑)
そこら辺の男の人だったらあわよくばって思いそうですが、そう思わないあたりが乾さん素敵…なのか千鶴ちゃんからしたら辛い点になるんでしょうね。彼氏彼女にならない、微妙な関係。こういう関係をなんて呼ぶのでしょう。私だったらもどかしくてわーってなりそう(^_^;)大人になりたいです(何歳だ)

たおるさんへ

見にきて下さってありがとうございます。
私のほうこそ、喜んでいただけるととーっても嬉しいです。
ひとりひとり、丁寧なご感想をいただけるのも嬉しいです。

シゲは、こう見えて可愛い女の子には弱いのです。深読み、裏読みはできない性格ですので、千鶴さん、かわいそうとしか思わないのですね。

アニマ、アニムスってあるでしょう?
男の中には何パーセントかの女がいて、逆もあるって。
深く考えると複雑すぎますので、シゲとシン、章は男。
隆也、幸生はいくらか女、みたいなつもりで書いています。

幸生と章のカップルですか? なぜかふたりが若返ってしまって、少年と少女になってしまうというストーリィだったらありますが、ジョークみたいなものです。

http://quianred.blog99.fc2.com/blog-entry-279.html

19歳と20歳って、おっしゃる通り、本人の意識はあまりちがわないのに、周囲の見る目が変わるってのはありますよね。
たしかオダギリジョーは、三十をすぎて二十歳くらいの女優さんと結婚したのでは? ボーディズのロイくんもそうだったような。
男は基本、若い女を求めるのですね←勝手にしろ~。。。

ヒデは学生時代から、乾さんはもててえいなぁ、とひがんでいました。
あまりにタイプがちがいますので、ヒデの目標は「とりあえず本橋さん」だったのです、とりあえず(^o^)

千鶴の恋心に関しましては、私も書いていてもどかしいのですよ。
もしかしたら千鶴本人も、あまりよくわかっていないのかもしれませんね。

たおるさんにイラストにしてもらって、千鶴も哲司ももっともっと書きたくなりました。ほんとにありがとうございました。


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