ショートストーリィ(しりとり小説)

106「多趣味」

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しりとり小説106

「多趣味」

 
 スマホのアドレスから選んだ名前は未歩。義堂は彼女に電話をかけた。

「未歩、映画に行かないか? ガメラ対キングギドラをやるんだよ」
「へーっ、やるんだ。行く行く」

 彼女は女の子には珍しい、怪獣好きだ。未歩は義堂にとっては、怪獣や特撮や宇宙ものの映画を観たり、そのたぐいのフィギュアを専門店に探しにいったりするとき用の友達だった。
 未歩と約束を取りつけてから、次は歩美に電話をして、一週間後に世界の爬虫類展を見にいく約束もした。義堂の女友達は「女の子には珍しく」と言われるタイプが多い。むろん義堂がそんな友達を発掘しているからなのだが。

 そのあともこまめに電話をかけて、多趣味な義堂につきあってくれる、各ジャンルの女友達とのスケジュール調整をした。ロックバンドのライヴを聴きにいくだとか、新しくできた楽器店を覗きにいくだとか、中古ゲームソフトショップの閉店セールに行くだとか、靴屋のバーゲンに行くだとか。

 すべて、一緒に出かける友達がちがう。すべて女の子だ。男友達は義堂には数少ないのだが、別段なんとも思わない。遊ぶ相手は女の子のほうが楽しいではないか。

 趣味の中では一番のロックは、姉の影響だったのかもしれない。子どものころから姉の友達と遊んでもらう機会がよくあったから、女の子と遊ぶほうが慣れているのかもしれない。姉は高校のときにロックバンドをやっていて、義堂もちょっとだけ混ぜてもらったりもしてベースギターがうまくなった。

 高校生になった義堂は、大学生になってもドラムをやっている姉を誘って新しくバンドを組もうと言ったのだが、断られた。

「義堂は友達とやればいいじゃん」
「ロックバンドやりたがるのって、男ばっかなんだよな」
「まあ、男のほうが多いよね。義堂は女の子とやりたいの?」
「そのほうがいいな。男ばっかってやだよ」
「男は怖いとか?」
「怖くもないけど、僕は女の子とのほうがやりやすいんだよ」

 気持はわからなくもないけど、私はあんたとはつきあいたくない、と姉は冷たかった。
 他にも好きなことがたくさんありすぎて、義堂は大学受験に失敗した。浪人生のときに姉の知り合いのおじさんバンドに助っ人に入って、やっぱり僕は男よりも女とやってるほうがいいと、つくづく思ったのだった。

 二浪の末にようやく、姉が卒業したのとは別の経済大学に入学した。大学も男子のほうが多いのだが、学校では致し方ない。勉強と友達づきあいは無難にこなし、大学二年生になった義堂は趣味に生きていた。

「義堂って女友達はたくさんいるんだよね」
 映画を観たあとで、未歩と食事をしながら感想を語り合う。面白かったね、あそこは古すぎて笑えたね、と言い合っていた合間に、未歩が言い出した。

「その中ではあたしは……」
「ああ、友達はたくさんいるけど、未歩ちゃんは特別だよ」
「あたしは義堂の彼女?」
「まあ、そうだね」

 きみは特別。女の子はその言葉に弱い。言うだけならば無料なのだから、あたしは義堂の彼女? と問われればうなずいておいたほうがいい。そうだよね、と未歩は笑い、食事を終えて外に出ると腕をからめてきた。

「今日は友達の家に泊まるかもしれないって言ってきたんだけどな」
「ああ、そうなの」
「義堂のうちにもお父さんやお母さんがいるんだよね」
「姉ちゃんもいるよ」
「だったらさ……あ、お金だったら私も持ってるよ。割り勘でも大丈夫だよ」
「そうだねぇ、どうしようかなぁ」

 からめた腕をはずし、また今度ね、とにっこりすると、ちょっとがっかりはしたようだったが、未歩もうなずいた。

 三日後には歩美とデート。爬虫類愛好サイトのオフ会で知り合った彼女の自宅にはイグアナがいるのだそうで、見せてもらいにいってから仲良くなった。未歩は怪獣やヒーローのフィギュアを扱っている店で彼女に声をかけられたのだから、義堂の女友達はほぼ全部が、同じ大学の子ではなかった。

 待ち合わせたビルの前には歩美が先に来ていて、スマホで話している。女友達との通話中のようだったから、義堂はおとなしく待っていた。

「そうなのよ。義堂っていうんだけど、趣味がたくさんで、趣味に合った女の子の友達がたくさんいるみたい。ええ? そんなの、友達だもん。気にしてないよ。あたしは義堂の彼女だから、他の子たちとはちがうの。そうだよ。あたしは気持ちが大きいんだよね。他の女友達なんか気にしてたら、精神的によくないし」

 どうも義堂に聞かせようとしているようだが、秘められた意味には気づかないふりをしておいた。

「ごめんね。友達と喋ってたの」
「うん、気にしなくていいよ」

 気にしなくていいよ、には別の意味も込めて言うと、歩美が寄ってきて囁いた。

「今夜は家族みんないないの。お姉ちゃんの彼氏に紹介してもらうんだって。彼氏っていうのが関西のひとで、関西のホテルで両方の親とお姉ちゃんと彼氏のお食事会。だから、今夜は誰もいないんだよ。展覧会が終わったら来る? 泊まってもいいよ」

「いや、それはけじめがないでしょ」
「義堂って真面目だよね。そういうところも好きだけど、ちょっと草食系?」
「そうなのかなぁ、それより、展覧会、行こう」

 草食系の定義ってどんなのだろう? というよりも、近頃の女の子は肉食すぎるんじゃないだろうか。そんなにセックスってしたいか?
 僕はそんなこと、したくない。趣味の合う女の子とデートして、お喋りしたり展覧会だの映画だのを見たりして、楽しくすごせばそれでいい。暑苦しくて汗臭いそんなこと、どうしてみんなはしたがるんだろ。

 しかし、口にしてはよくないのかもしれないと義堂は思う。適当にごまかしておけば、女の子はいいほうに解釈してくれるのだから、にっちもさっちもどうにも身動き取れないようになるまでは、女の子とはこうしてつきあっていたい。
 身動き取れなくなるのはなんのせいだろう? 年齢? そうなのだとしたら、年なんか取りたくないなぁ、が義堂の本音だった。

次は「み」です。

「主人公について」

蛇足ながら、小さなストーリィの各主人公について補記しておきます。
フォレストシンガーズ最新シリーズの一部「落花流水」関連のストーリィに、義堂照子というロックお姉ちゃんが出てきます。照子の弟、義堂。ちょっとだけ本編にも顔を出す、現代青年の義堂が主人公でした。








 

 
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