ショートストーリィ(フォレストシンガーズ)

FSのお正月ストーリィ「Happy Happy Greeting」

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あけましておめでとうございます

今年もフォレストシンガーズ及び、津々井茜、及びその他のストーリィもなにとぞ、よろしくお願いいたします。
2015年年始ストーリィは、幸生の妹たちです。


フォレストシンガーズ

「Happy Happy Greeting」

 三沢家の三人の子ども、幸生と雅美と輝美が両親と五人で暮らしていたのは、輝美が産まれてから、幸生が大学生になって家を出るまで。

 十八歳になった兄の幸生が家から出ていったころには、母は兄の心配ばかりしていた。

 ひとり暮らしをしたいなんて言って、あんたたちがうるさいからって言われたらたしかにそうだから許したけど、幸生は大丈夫かしら。
 大学の入学式にも来るなって言うのよ。親はお金だけ出してりゃいいってこと? 生意気だけは言うんだから。ええ、行きませんよ。誰が行くもんですか。

 末っ子の輝美が高校に入学したお祝いに、四人で外食したときにも、母は幸生にも食べさせてやりたいね、と言っていた。

 ちゃんと食べてるのかしらね。ちゃんと学校に行ってるのかしら。
 今夜は冷えるね。幸生ったら、お腹を出して寝てて風邪をひかないかしら。電話? うるさがられるからかけないわよ。

 もうじき大学のテストなんじゃないの? 幸生は勉強してるのかしら。
 合唱部に入ったって言ってたわね。先輩に迷惑かけてないかしら。あの子は喋りすぎるから、うるさがられてないかしら? お母さんに似たからお喋りだって? あんたたちもじゃないの。

 彼女、できたのかしらね。できたらできたで心配だし、大学生にもなって彼女もいないじゃ、そっちも心配だね。だけど、幸生は彼女ができない心配のほうはいらないと思うの。ほら、あの子が高校生のときに家出したじゃない? あれは女の子のことでお父さんに叱られたかららしいのよ。

 ねぇ、雅美、幸生は……。ねぇ、輝美、幸生は……。
 見るもの聞くものが幸生につながって、兄のことばかり言っていた母。輝美も私もやきもちを妬いたりはしなくて、母の心配が兄のほうに向いて私たちからそれることを喜んでいた。

 長女の私が生まれたときには、兄は一歳。まだなんにもわかっていない赤ちゃんみたいなもので、赤ちゃんをふたり抱えた母は大変だったらしいが、兄は俗にいう赤ちゃん返りはしなかったらしい。おませな兄はおむつがはずれるのも、歩き出すのも喋り出すのも早く、私も兄を追っかけるようにして、赤ちゃんから脱するのが早かったようだ。

 次女の輝美が生まれたときには、兄が三歳、私が二歳。ふたりいたせいか、赤ちゃんに嫉妬したりもしなかったようで、そこは助かったと母が言っていた。

 そうして三人の子どもたちを育ててきて、時にはアルバイトもしていた母なのだから、兄がいなくなったら穴が開いたような気分だったのはわかる。母は息子がいちばん可愛いもの。真ん中の私はほったらかしにされる傾向もあったので、そんな母に不満はなかった。

 かといって母は、長男がいなくなったからと十五歳と十六歳の娘をかまいっぱなしになるわけでもなく、徐々に精神的子離れをしていったようだ。つまりは娘たちが、兄を反面教師にしてしっかりしていたから? かもしれない。

「はい、三沢です。ああ、お兄ちゃん?」
「雅美……決まったよ」
「なにが?」
「デビューが決まった。CDを送るから」
「ええっ?! ちょっと待ってよ」

 あのお喋りな兄が、それだけ言って電話を切ってしまったのは、私が二十一歳になった夏。私は短大を卒業して銀行員になっていて、十九の輝美は短大生。兄が大学を卒業してからだと数か月がすぎていた。

 知り合いはたいてい、雅美と輝美の声の区別がつかない。外見は私のほうが美人だから、と輝美も言うのであるが、似ていてもどちらだかわかるようだが、父も母も電話だと姉妹の声を聴き分けられない。輝美と私は時々、母だか姉だか妹だか、声だけではわからなくなるときがあった。

「雅美ちゃんとまちがえられるのはともかく、お母さんとまちがえないでよ」
「あたしもこの間、お父さんに言われたよ、お母さんかぁ? って」
「お兄ちゃんだけはまちがえないよね」
「あいつはそれだけがとりえだね」

 耳がいいのはまちがいなくて、たしかに子どものころから歌は抜群にうまかった、兄の所属していた少年合唱団の歌は、とてもとてもとても素敵だったのを覚えている。

 そんな兄だから、いつのころからか歌手志望になった。大学の先輩、本橋さんと乾さんとシゲさんとヒデさんと兄の五人でフォレストシンガーズを結成して、プロになるんだ、と家族の前でも宣言した。父も母も難色を示したけれど、雅美と私は応援してあげると告げて、そのかわり、プロになったら洋服買ってね、バッグも買ってね、とおねだりしておいた。

「輝美ちゃん、お兄ちゃん、プロになるんだってよ」
「えーっ?! 嘘ぉっ!! ほんとかな。あいつ、嘘つきだからね」
「嘘だったらもっとぺらぺらと、よけいなことも言うんじゃない? えらく簡潔な電話だったよ」

 でも、嘘だったらいけないから、両親にはCDが送られてきてから話そうと、輝美と約束した。

 夏の終わりごろに、本当にCDが送られてきた。父も母もびっくり仰天。フォレストシンガーズのデビュー曲、「あなたがここにいるだけで」をテーブルに置いて、母は兄に電話をしたのだが、留守電になっていたと嘆いていた。

「幸生は携帯電話、持ってないのよね」
「買ってやろうかと言ってもいいんだけど、社会人なんだから親が金銭的援助をするのもなぁ……」
「メールができないと彼女とデートの約束とか、やりにくいだろうにね」
「輝美でも雅美でもいいから、一度うちに来なさいって言っておいて」
「恥ずかしいんじゃない?」

 四人でそんな話をして、主役は抜きでフォレストシンガーズデビューお祝いパーティをした。
 あれから約四か月、十二月になってようやく、兄が帰省してきた。我が家は横須賀にあり、東京からだと近いのに兄はちっとも帰ってこない。めんどくせぇだとか金がないとか言っているが、母に会うと叱られるからだと私は思っていた。

「正月は仕事だから、明日にはアパートに帰るよ」
「そしたら今夜、鍋パーティしようか」
「なんでもいいけどさ」

 嬉しそうな母と、敢えてなにも言わないらしい父と、わざとぶっきらぼうにしている兄と、なぜか複雑な三人を見て、輝美とこそこそっと相談した。

「三人とも素直じゃないんだよね」
「まだ年は明けてないけど、いろんなお祝いの意味で、雅美ちゃんとデュエットしまーす」
「お兄ちゃん。おめでとうっ!!」

 姉妹で声をそろえて叫んでから、歌った。
 
「星が沈む海に
 太陽がのぼる
 光の矢の中で
 君を抱いていた

 生きてるって 素晴らしいね
 君がそばにいると違う

 古い過去は捨てて
 時のページめくるように
 今 未来へ走れ

 Oh! happy happy greeting
 おめでとう おめでとうNew Year! 
 何かが始まる
 きっといいことある
 予感で胸がさわぐよ」

 小さなころから歌が自慢で、俺は少年合唱団だもんね、おまえらが一緒に歌うと調子が狂うから黙って聴いてろ、といばって言っては、父に叱られていた兄。

 やっぱ下手だな、と呟いて舌を出してから、だけど、兄はなんだか嬉しそうな顔をして、輝美と私の歌を聴いていた。

END





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~ Comment ~

団らん

ユキちゃんの家は、とても日本の家庭らしい、温かい家ですね。
あ、ここのみんな、割と温かな家庭で育ってるかな。

母親はユキちゃんにべったりだったみたいですね。
でも妹たちも、なんだかんだ言って、お兄ちゃんは自慢なんだなあ。
今年の正月も、ちゃんと帰ってあげたでしょうか、ユキちゃん。
いきなり年上の彼女、連れて行ったりしないよね^^

今年も、よろしくお願いします。

あけましておめでとうございます

お正月→家族のだんらん。いいですよね。少し遅ればせながらのおめでとうに照れあっている家族の姿、とても暖かい1年の始まりの物語……正月始めはこうでなくちゃね。(年末? ま、いいか)
嘘だったらもっとぺらぺらと余計なことを喋る……^^;

さて、それはともかく、昨年はあれこれとお世話になりました。
マコトもいっぱい遊んでもらって、いつもひとりぼっちでおるすばんなので、とても喜んでおります。
今年もよろしくお願いいたします!

limeさんへ

コメントありがとうございます。

FSのみんなは、隆也がちょっと異質ですけど、わりと普通の家庭、普通の親のもとで育っています。

美江子が四人きょうだいのいちばん上、モロ長女気質。
シゲは姉のいる弟。
隆也がひとりっ子。

この三人は自分でも、まあそんなもんでしょ、と思っているのですが。
幸生と章が「兄」で、シンは「弟」っていうのが我ながら解せない気がします。
そういえば真ん中の子がいませんね。

三人姉妹の真ん中は強い。
私の知っているその立場の女性はたしかに強いですから、今度はそんな女性も書いてみたいです。

いやぁ、母はやっぱり息子命でしょ。うちの母もいまだに……ですから。
んで、妹ってものはどこかしら、兄ちゃんが好きなんじゃないかと。
私は弟は嫌いですが、子どものころは仲良かったですからね。

いきなり年上の彼女……ないとはいえない。今ではユキの母は、ただひとり独身の息子が気がかりで仕方ないようですから、ちょっとくらい年上でも喜ぶと思います。
ユキはたぶん、七十過ぎてから結婚……え? 乾さんと結婚したい? なんて言ってますが、どうしましょ(^o^)

大海彩洋さんへ

あけましておめでとうございます。
あっという間にもう五日ですね。
今年は元日に、大海さんも書いておられた磐船神社に行ってきましたよ。

それはそうと。

嘘だったらもっとぺらべらよけいなことを喋る。
ここに注目していただけて嬉しいです。
幸生の妹たちはたぶん誰よりも、三沢幸生という人物をよく知っている……といっても、ある面だけでしょうけどね。

マコトちゃんのストーリィはちょこちょこと書きかけていますので、お許しいただけるようでしたら完成させてアップしますね。

こちらこそ、今年もよろしくお願いします。

A HAPPY NEW YEAR 2015

あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。
新年初の投稿ですね。首を長くして待ってました。

新年になってからご挨拶に伺いたかったのですが、やはり新年のご挨拶の投稿が出てから行った方がしっくり来ると思い、あかねさんの投稿を待ってました。

あかねさん忙しいから、新年になって投稿は難しいのかなって思ってました。自分も色々な方へ新年の挨拶を回ってまして、新年早々に出した人もいますが、2日とか3日になってから投稿した人もいますし、今だに出してない人もいますね。

お、正月の挨拶にSSですか?親は子供がいくつになっても心配するものですよね。子供の夢って親は喜んでるシーンを読んで、正月早々私も癒されました。
正月になってもフォレストシンガーズで来るとは、作品に対する愛を感じます。
私も自分のキャラで挨拶をしようと思いましたが、なんか自分の趣味とかをぎっしり書いてしまったんで、今回は見送りました。

昨年は色々とお世話になりました。今回は新年最初と言う事で、オープンコメとさせていただきます。
今年もあかねさんにとっていい年でありますように。

想馬涼生さんへ

あけましておめでとうございます。

お正月はパソコンが使えないところにいまして、スマホではネットはほとんどしませんので、遅くなってすみません。
新年初の投稿を待っていたと言っていただけると嬉しいです。
ありがとうございます。

私は忙しいわけではないんですけど、小説のストックもだんだん減ってきて、長いものは書けないし、というのもあり、なくなったらどうしよう? なんてネガティヴになったりして。

フォレストシンガーズを書くのがやはりいちばん楽しいですから、もっともっと書きたいです。
尽きることなきネタがあればいいんですけどね。

こちらこそ、去年はお世話になりました。
今年もよろしくお願いします。

NoTitle

あかねさん、今年もよろしくお願いします^^

そうか。ユキちゃんはアニキなんですよね。
きちんと自分を持っていて妙に(?)しっかりしているところに納得。
海外だって一人で行けちゃうしね。
シンちゃんが三男末っ子なところがなんかぷぷぷです。ごめん。

そうか。キャラで新年のご挨拶、良いですよね。
普段と違う、シーズン物の顔が見える。メモメモ・・・
とかいって、どのキャラでご挨拶しましょうかね。

今年一年良いお年を過ごされますよう、お祈りしていますね。

あかねさんへ!!♪

迎春!!
今年も宜しくお願いいたしますねー。!
話がそれますが、マクドナルドの日本社長は以前から問題が多い体質らしいですねー。渇)
「食品管理に万全は無い」ということには呆然としますねー。
万全を期すことが当然ではないでしょうか!!

今日宮尾登美子さんが亡くなり、深い哀悼の意を表したいと思います。合掌)
小説家は大変です。あかねさんも頑張ってくださいね~~!

けいさんへ

今年もコメント、ありがとうございます。

ユキはこれでも、そう、兄貴なんです。
章も弟のいる兄貴です。

章のほうが兄らしいというか、幸生には「章は兄として以前に人としてどうしようもない」とか酷評されてますが、十二歳も年下の弟なだけに、兄らしいふるまいはしている、かなぁ?

その点、ユキは妹たちに馬鹿にされ、それでもやっぱり慕われてはいるみたいですね。

シンはもう、兄たちのおもちゃというか子分というか、大人になっても形無しです。なのにリーダー気質に育ったのは、なぜなんでしょうね。

けいさんのキャラでなにかのご挨拶をして下さるのでしたら、私はやっぱり田島くんがいいなぁ。
なんだかもう、田島祥吾くんは他人だとは思えません。

「他人だろうがよ、寄るな」

そんなこと言わないで、田島くん。
と、こんなことを今年もやってしまってます。

荒野鷹虎さんへ

コメントありがとうございます。
マク怒……なんて気分になっている大阪人も多いようで、こちらの繁華街のマクドのお客があきらかに減っているそうです。

こんな時期のほうが、もう変なものは絶対に入ってないんだからいいんじゃない? と思ってしまう私は、あの程度だったらどうってこともない感覚の人間なんですよね。
受ける側はそうでも、供給する側は真摯に受け止めてもらわないと困りますけどね。

あけましておめでとうございます!

こっちでもおめでとうございます!

ゆきちゃん、そうか、妹さんいたんだった。てっきり末っ子さんだと思い込んでました(^_^;)
家族といるときのゆきちゃん見れて楽しかったです(笑)ぶっきらぼうなんですね(笑)可愛い!(*´ェ`*)
ゆきちゃんがいなくなって心配になるお母さんの気持ち分かります(笑)
私もゆきちゃんみたいな子どもがいたら色々心配しそうです(^^)
暖かい家庭に育ってるみたいで和みます♪

2015年もよろしくお願いします!

たおるさんへ

コメントありがとうございます。

そうなんですよ、ユキってフォレストシンガーズでは末っ子ふうですが(章とは同年同月生まれですが、ちょっとだけ章のほうが遅いので、章が末っ子なんですけどね)、家では妹ふたりの兄です。
男の子はわりと、家族の前ではぶっきらぼうだったりしますよね。

そうそう、こんな息子がいると、母の心配は絶える間もありませんよね。
FSのみんなの母の中では、三沢母にいちばん思い入れがあるのは、そのあたりのせいもあるのかもしれません。

2015年もよろしくおつきあいくださいませね。
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