ショートストーリィ

たおるさんのイラストに寄せて

 ←FS続・四季の歌「春の小川」 →ガラスの靴28
bigひとぽち
たおるさんが描いて下さった犬耳少年ポチのイラストを見ていて、こんな短編ができました。
たおるさんのサイトはこちらです。

白蓮

なお、けいさん、大海彩洋さんのキャラもお貸しいただいています。
ポチは美月さんのキャラです。
詳しくはこちらをごらん下さいね。

「スターダスト」


「ポチはみんなの願いをかなえてくれたけど、ポチの願いってないの? ああ、そっか。ポチはこの間、やったっけな」
「なに?」
「これだよ」

 にやりとして腕を組んでみせる幸生を見て、ポチは舌を出した。
 気づかれていたのか。

 魔法使い犬ポチが、大好きな飼い主の宮田京介さんとその家族と一緒に暮らしているおうちの近くに、大学の男子寮がある。そこに住む三沢幸生と友達になり、幸生とは波長が合ったのもあってテレパシーで会話ができるようになった。

 京介さんはポチが魔法使いだと知っているが、他の人間はほとんど知らない。噂が広まる恐れがあるので人間にはなるべく知られないほうがいいのだが、人間以外の種族は他者に口外はしないのでかまわない。たとえば猫が集会で、宮田さんちのポチは魔法使いなんだよ、と噂をしたとしても、伝播していくような事態にはならないから。

 なのだから、ポチは人間以外の動物にだったら積極的にコンタクトを取っている。ところが、ポチのテレパシーが伝わる相手はそうそうはいないのだった。

 そんな中、親しくなれたのがチャトラのオッドアイ猫、マコト。マコトのつながりで知り合った黒猫娘のノラとも会話が成立した。
 マコトとノラの願い、人間の幸生と祥吾の願いをかなえてあげたポチは、そのときにちょっとだけ便乗して、巨大犬に変身した。巨大な犬はやたらに腕が長くて、ポチの念願だった腕組みができたのである。

 小学生の祥吾は人間だが、彼とは夢の世界でしか会っていないので、この出来事は夢だと思っているのかもしれない。現実だと知っているのだとしても、誰にも言わないでね、と祥吾に念を押す必要はない。祥吾は幸生と秘密を共有するのを楽しんでいるのだから、口外はしないとポチも信じていた。

「だけど、あれだけでいいの? ポチには他には願いはないの?」
「うーん……動物園には行ってみたいけどね」
「動物園か。動物園に犬が行くと、野獣が興奮したりしないのかな。問い合わせてみようか」
「……僕が人間に変身したら、動物園に入れる?」

 提案してみると、おー、それはいい、と幸生が手を打つ。マコトを豹や半にゃライダーに変身させたのは夢の世界でだったが、現実世界で幸生を女の子に変身させてあげた経験もある。自分自身が人間になるのはポチには不可能ではないはずだった。

「やってみるよ」
「うん、ポチ、がんばれ」

 他者の望みをいくつもかなえてあげたのだから、自分の夢だって実現させてもいいだろう。動物園は現実のもので、ポチが現実に人間になれば問題なく入場できる。ご先祖さまに叱られたりしないよね? 若干の不安を押し殺して、ポチは自分に魔法をかけた。

「……お、できた。ポチ、人間になってるよ。可愛い男の子だな」
「なれた?」

 予行演習は夢の世界でやったので、いよいよ次は本番だ。人目のあるところで犬が突然人間になるのを目撃されると大変だから、どこでやろうか? とポチと幸生は相談した。

「来週の日曜日に、うちの寮の全員でハイキングに行くんだ。京介さんに俺の部屋の鍵を貸しておくから、連れてきてもらって変身しろよ。俺の部屋でやったら誰にも見られる心配はないよ」
「うん、京介さんにお願いしてみる」
「で、それってどれだけ続くの? 三分ってことはないよね?」
「三日くらいだったら人間でいられるよ」

 よし、わかった、京介さんに話すよ、と幸生が言って、翌日には宮田家を訪ねてきてくれた。
 当日にはポチは京介さんに連れられて、彼の友人のうちに遊びにいく。京介さんはポチとともに友人の家に泊めてもらうことにする、というのが宮田家の家族への説明だ。

 実際には京介さんはポチが変身するのを見届けたら、ひとりで友人の家に泊まりにいく。幸生はハイキングから早めに帰ってきて、寮のみんなには、親戚の子だと少年ポチを紹介する。

 そっかぁ、ポチは動物園に行きたいのか、と京介さんも笑って協力してくれ、手筈通りに、なんの支障もなく計画は実行された。少年に変身したポチをはじめて見た京介さんも拍手してくれた。

「うん、可愛いよ。僕の孫みたいだな」
「夢の中でだったら成功してたんだけど、僕は僕の人間姿を見てないんだよ。可愛い?」
「風呂場に全身が映る姿見があったね」

 体調を崩したとかでハイキングに不参加の寮生がいたら困るところだったのだが、全員参加で寮は無人になっている。万が一誰かが帰ってきたとしても、人間のポチだったら、幸生の親戚のおじさんといとこだと言える。名前はなんにする? ポチのままじゃおかしいね。あだなはポチにしておくかな、などと話しながら、京介さんとポチは浴室に入った。

「わぁ!! 僕、人間だ」
「そうだね。でも、ポチ、あまり大きな声で叫ばないように」

 テレパシーでも各自の声にちがいがあるような気もするが、現実となるとポチの声は、高く澄んだボーイソプラノだった。通りがいいので叫ぶと遠くまで届きそうで、ポチも声を低めた。

「あれ、でも、あれれ?」
「あれれ? 興奮したせいかな。耳が……しっぽが……」
「引っ込めなくちゃ……えっとえっとえっと……」

 他の誰も言わなかったことを、目を細めた京介さんが口にした。

「魔法を使っているポチの指先から、星屑がこぼれ落ちているようだよ」
「京介さんにはそう見えるの?」

 えへっと笑った拍子に、またもやしっぽがぴょこん、耳がにょっきり。ポチは焦って耳としっぽを引っ込めようとする。動物園に行ってエキサイトしたりしたら、鼻までとがってくるのではないかと、ポチの不安がまたひとつ。

「その犬耳もしっぽも可愛いんだよなぁ。捨てがたいんだよなぁ。なぁ、ポチ……なんだったら帽子をかぶって、だぶだぶのズボンでも履いていくってのもいいかもしれないね。幸生くんに買ってきてもらおうか」
「ううん、僕、がんばるから」

 現実の世界で動物園に行くためだったら、指先から星のかけらを振りまいて、僕は人間の姿を保つ努力をする。星は京介さんにしか見えないはずだから、外では思い切りがんばってくるよ。

END







スポンサーサイト



【FS続・四季の歌「春の小川」】へ  【ガラスの靴28】へ
  • Tag List 
  •  * |

~ Comment ~

きゃーー!

コメント見させてもらってすっ飛んできました!!
こんなに大きく絵がトップに(*ノェノ)キャー

そしてぽちくんかわいい!!きゃーきゃーきゃー!腕長くして腕組したかったとか かわいい! それに興奮して耳としっぽ出てきちゃったとか かわいい! ボーイソプラノの高い声とかかわいい! 聞いてみたい! もう私メロメロです(笑)
こんな可愛いぽちくん書けるあかねさんさすがです!
ほっこりしましたーありがとうございます!(*´ェ`*)

あ、このURL 絵UPした記事に追加してもいいでしょうか??
お返事まってます♪

たおるさんへ

早速ありがとうございます。
ポチが動物園に行きたいと言っていたのを、たおるさんのイラストにくっつけてみたのですが、可愛いと言っていただけて嬉しいです。

でも、動物は敏感ですから、ポチが人間に変身していても、あれ? こいつ、人間じゃないんじゃないか? と怪しんで吼えたてて、ポチも焦ってしっぽが……耳が……となりそうで、心配になってきました。

まあ、あまり深く考えるのはやめましょうね。
そうしましょう、そうしましょうって、無責任ですみません。(^^ゞ

URLを貼って宣伝して下さるのは大歓迎です。
よろしくお願いします。

可愛い&カッコイイ(笑)

あかねさん、私もすっとんで来ました。

ポチの可愛さはもう前から抜群なんだけど・・・

この京介さんは、いくつくらいなんやろ?
めっちゃなんかツボなんですが。
しかもなんか関東の言葉喋ってる。

とてもすてきなお話でした。
無事に動物園に行けたかどうかは・・・またお楽しみということで。

大変楽しませて頂き、ありがとうございました。ちょっと興奮しました。

美月さんへ

コメントありがとうございます。

京介さんって関西人でした? 美月さんの書かれる人々は、岡山とか京都とかの出身が多いみたいですよね。そのわりにはわりと標準語で話しているような気がしてましたが、京介さんは「京」なのだから京都人ですか。

私の書くこのお話はパラレルワールド(便利なフレーズやわぁ)ですので、舞台は東京だと思ってやって下さいませ。

京介さんは定年退職していたように思うんですけど、当たってます?
この彼は美月さんのお好みの、六十五歳くらいのつもりで書かせてもらってます。
気に入っていただけたら最高に嬉しいです。

動物園の話もできましたらまた、アップしますね。
管理者のみ表示。 | 非公開コメン卜投稿可能です。

~ Trackback ~

卜ラックバックURL


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

  • 【FS続・四季の歌「春の小川」】へ
  • 【ガラスの靴28】へ