novel

小説6(Love me tender)

 ←小説5(いつか俺にも) →小説7(君がいた夏)
abata1.gif
フォレストシンガーズストーリィ・6

「Love me tender」

1
 
 どどどどどどどどーっ、と「ど」が限りなく連なるどどどどど田舎、最果ての地、稚内で生まれて育った俺は、いつのころからか、ではなくて、高校生になってロックバンドを結成したころからだったのだろう。俺は見果てぬ夢を見ていた。
 東京に行きたい。東京に出てロックスターになるんだ。田舎から脱出するための手段は、大学進学以外は思いつかない。だからどこの大学でもいい。東京にあるんだったらどこだっていい。東京にも田舎っぽい地域はあるんだろうから、大都会東京、光り輝く東京都内の大学に進学して、東京のロッカーになりたい。
「東京の大学だ? 札幌ぐらいにしておけよ」
 父は言い、母も言った。
「東京なんかに行くと、あんたは悪い女にだまされるよ」
「……女にだまされに行くんじゃねえよ。勉強しにいくんだ」
「勉強じゃなくてロックだろうが」
 親には見抜かれていたのだが、なんとかかんとか説得して東京の大学を受験し、なんとかかんとか都内の大学にもぐり込んだ。その日、十二歳年下の弟の龍は小学校入学間近で、買ってもらった真新しいランドセルをしょって、あぶなっかしい足取りで表を歩いていた。
「龍、母ちゃんが心配してるぞ。こんなに雪が積もってるのに、帰ろう」
「ランドセルって重いね」
「俗に、ランドセルに背負われてる新小学一年生という。おまえはまさしくその通りだよ」
「ぞくにってなに?」
「いいから帰ろう」
 こんなちびっこには言ってもわからないかとも思ったのだが、俺は龍に言った。
「兄ちゃん、東京に行くんだよ」
「東京でなにすんの?」
「俺も新一年生になるんだ。ただし、大学の」
「いなくなっちゃうの?」
「時々は帰ってくるよ」
 表情がゆがみ、泣きながら走り出した龍は雪に足をとられてころび、ランドセルの中身が雪の上に散乱した。
「なに入れてるんだよ。学用品も買ってもらったのか」
「兄ちゃん……」
 ロックにうつつを抜かしてばかりで、ちっちゃな弟に優しい兄貴ではなかった自覚はあるのだが、あの日の俺は学用品を拾い上げ、ランドセルにおさめて龍に背負わせ、ランドセルごと龍を背負って歩き出した。
「泣くなよ、ころんだぐらいで。おまえも男なんだから。泣き虫だと小学校で苛められるぞ」
「女の子だったらいいの?」
「女の子はたまに泣くと可愛いかな。泣き虫すぎるのも困るけど……父ちゃんと母ちゃんを……こっぱずかしくて言えねえ」
「なに?」
「いいよ。今度帰ってきたら、おまえもでかくなってるかな。俺よりでかくなるなよ」
「なるもん」
 稚内は春にはほど遠かったけれど、東京では桜のつぼみがほころびかけているという日に、俺は東京へと旅立った。家の前で見送っていた両親。母にしがみついて泣いていた龍。こんな兄貴でもいなくなると寂しいのか、なんて、くすぐったい気分で俺は家をあとにした。
 だまくらかされたのか諦めたのか、親はなんとかごまかしたのだが、俺の思いはむろん、勉強なんかではなくてロック一筋だった。高校時代のバンド「ガレージキッズ」から東京に出たのは俺ひとり。そうして自然にバンドは解散してしまったのだから、東京で新しいメンバーを探さなければいけない。
 まずは同じ大学の仲間だろう。だったら大学ではロック同好会に入ろうかと、俺は同好会の見学にいった。俺を迎えてくれたのは、パンクロッカーじみたスタイルの四年生女子だった。
「木村章くん? 大学生なんだよねぇ。大学に入学してうちのサークルに入ろうって言うんだもんね」
「もちろん大学生ですよ。十八です」
「十六ぐらいにしか見えないね。ちっちゃいしさ。ギター弾くの?」
「ギターも好きだけど、俺はヴォーカルやりたくて……」
 先輩は小声で言った。
「バンドの花形はギターとヴォーカルだもんね。その気持ちはわかるよ。新入生はみんなそう言うんだから、実力もないくせに……さ」
「はい?」
「ううん、ひとりごと。あたしはこの格好でもわかるように、パンクスなんだけどね、パンクやりたくない?」
「俺はハードロックが歌いたいんです」
「そうなのかぁ。ま、いいけどね。じゃ、ついておいでよ。歓迎会してあげる」
「他のひとは?」
「ふたりきりでやろうよ」
 そういうもんなのかな、といぶかしみつつも彼女についていき、ふたりして酒を飲んでパンク談義につきあって、あげくのはては彼女のアパートで襲われた。章くんってはじめてだったのぉ? 道理でねぇ、と大笑いされて傷ついて、田舎出の十八歳を毒牙にかける女の先輩のいるような、こんなサークルになんか入るもんか、と彼女の部屋を飛び出した。
 だけど、俺は歌いたい。ロック仲間がたやすく見つかるものではなさそうだし、手っ取り早く歌えるところはないか? なに? 合唱部? 合唱部だったらとりあえず歌えるよな、となって、合唱部に飛び込んだのだ。
 男子部、女子部に分かれている合唱部の男子部キャプテンの名は渡辺さんといった。渡辺さんって頭いいらしいぜ、法学部なんだって、との同学年の奴らの噂を聞いたのが、合唱部での最初の記憶だろうか。頭いいったって、俺が合格した大学なんだからたいしたこともないだろ、と思っていたら、同じ一年生の鈴木が教えてくれた。
「うちの大学の偏差値はたしかに高くはない。だけど、医学部と法学部は別格なんだよ。よその学校にも特別にここだけはって学部があるだろ。うちは医学部と法学部だよ。続くは理学部かな。木村、おまえはどこの学部?」
「工学部だけど、そんなの、歌と関係ねえだろ」
「ないけどさ、法学部っていうと尊敬しちゃうんだよな」
「勝手に尊敬してろよ」
「渡辺さんはなにかのまちがいで合唱部に入ってきたんじゃないかって噂されたりもしてるんだけど、歌もそこそこ上手だよ。俺の兄貴も合唱部にいて、渡辺さんの話も聞いたから知ってるんだ。それよか問題は溝部さんだそうで……」
「溝部さんって誰?」
 なにをっ!! 知らないのかっ!! と鈴木は叫び、噛みつきそうな勢いで言った。
「副キャプテンくらいさっさと覚えろよな」
「ああ、サブのひとね」
「サブのひとだよ。兄貴に言わせると、溝部さんって本橋さんと乾さんを毛嫌いしてるらしいんだ。本橋さんと乾さんは知ってるだろ。知らないって言うなよ」
「なんとなくは知ってる」
「なんとなくか……おまえは合唱部に入ったくせに、先輩たちの情報に興味ないのか」
「あんまり……」
 かの有名なと前置きのつく本橋、乾という先輩については、俺も耳にしていた。溝部副キャプテンが彼らを毛嫌いしている理由も、なんとなくだったらわかる。本橋さんと乾さんは一年上の溝部さんから見ると、目障りでしようのない実力派だからなのだろう。本橋、乾両人が合唱部に入部してきた際のエピソードはそのころには伝説になりかけていて、興味を持たないつもりでも聞こえてきていたのだから。
 一年生の鈴木は強二、彼の兄の四年生鈴木は力、よほど息子たちに強くなれと願っている親なのだろう。そのわりには強二はふにゃっとして見えるが、俺も他人をふにゃっだとか言えた外見ではないので、それはいい。秋田出身の力が上京してきて俺たちの大学に入り、弟も兄貴を追っかけるようにして同じ大学に入った。サークル活動までも同じ合唱部を選んだ。
「俺、北海道出身だよ。近いかな」
「ああ、そうなのか。故郷の話はあとにしよう。んでな、去年、兄貴が目撃したんだそうでさ……」
 兄が暮らすアパートにころがり込んで同居しているという鈴木は、合唱部情報には詳しかった。彼の語りによると、去年、部室の裏手にある芝生のあたりで、溝部さんが当時のキャプテンだった金子さんと話しているのを、力が見たのだそうだ。
「そんなに本橋と乾を追い出したいんだったら、丑の刻参りでもやれよ」
 金子さんが言い、溝部さんはぎくりとした様子で金子さんを見返した。
「……追い出したいなんて……」
「気づかれてないつもりか。俺の目はビー玉か」
「いえ、そんな……」
「俺は皆実じゃないから、鉄拳制裁なんて趣味じゃないんだけど、うちの体質にはそういうところもあるだろ。あまりに目に余ると、俺もなにをするかわからない。理解できるね、溝部?」
 又聞きでもあり、あやふやでもありそうな話をしてから、鈴木は俺を見つめた。
「このような会話だったんだってさ」
「丑の刻参りをやってまで本橋さんと乾さんを追い出したいのか。だとしても俺たちには関係ないだろ。それより、鉄拳制裁ってなんだよ。そういう体質ってなんだよ。皆実って誰だよ。合唱部の先輩は後輩を殴るのか」
「皆実さんは当時の副キャプテンだ。うちの兄貴は殴られたことなんかないって言ってたけど、噂によるとなくもないとか……」
「やだっ!! 暴力反対!」
「おまえがやだって言ってもな……」
「そんな部だと知ってて、なんでおまえは入部したんだよ」
「兄貴がいるから」
「……うわぁ、やだな、俺、やめようかな」
「やめるなよ、もったいない。おまえの声ってすんげえ高くてさ、びっくりするような高いキーで歌えるんじゃないか。なんでも木村と三沢には、渡辺さんが注目してるらしいとも兄貴が言ってたよ」
「三沢? ああ、あいつか」
「三沢は知ってるんだ。仲間だもんな」
 仲間かぁ、別に好きで仲間になったわけでもなし、と白けた気分でいた俺だったのだが、それから数日後、三沢幸生を改めて意識した。夏休みには合唱部の合宿がおこなわれ、海辺で歌の特訓漬けとなるのだそうだ。それからコンサートがあり、学園祭もある。キャプテンに呼ばれて一年生たちが集合し、そんな話を聞かされ、各々がひとりずつ歌ったりもして、三沢って変な声してるなぁ、と妙に気になっていたら、三沢のほうから話しかけてきた。
「……ふひゃあ、木村? おまえの声ってけたたましいほど高いんだな」
「けたたましいのはおまえの声だろ。なんつう声だ。おまえは声だけ女か」
「のっけから喧嘩腰になって、どうしたの? 俺の声って女? そんなら女子部に行こうかなぁ。ソプラノは無理だろうけど、アルトパートだったらやれるよな。うんうん、ありがとう、木村くん、女子部に行ってくるよ」
「待て。冗談だ」
 声も変だけど性格も変な奴だと、そのとき俺は三沢幸生という男の先っぽをつかんだ。三沢はきわめて軽い調子で言った。
「冗談にまぎらわせなくてもいいじゃーん。俺はマジだよ。女子部に入ったら俺の声はさらにきわだつ」
「男子部にいても際立ってるよ。おまえの名前は三沢幸生だよな。俺は最初からおまえがさ……いいけど」
「なに? 俺が気になってしようがなかった? 高い声のライバル? ふーむ、顔もライバルになりそうだな」
 けけけのけ、顔なんかどうでもいいだろ、とそっぽを向くと、三沢はいくぶん真面目な顔つきになった。
「木村はなんとなく他の奴らと雰囲気がちがうね。その雰囲気はなんだ? おまえの音楽のルーツはなに?」
「おまえは?」
「少年合唱団」
「……俺はロック」
 道理でっ!! と同時に叫び、なんだよ、おまえの声は、おまえの声こそ、とこづき合って、なぜだか俺は三沢と仲良くなってしまった。ほどなく幸生、章、と呼び合うようになった幸生は、俺よりは若干背が高いのだが、ちっちゃいのは言うまでもない。その身体で神出鬼没をやらかしていた幸生は、いつしか鈴木に張り合うほどの情報通になっていった。
「合宿、楽しみだな」
「俺は行かないよ」
「なんでなんで? 章も行こうよ。いっしょにごはん食べたり、いっしょにお風呂に入ったり、枕投げもやったりしてはしゃごうよぉ」
「おまえは中学生か。枕投げなんかやりたくねえっての」
「いっしょにお風呂は?」
「答える気にもなんねえ」
「行かないの? 寂しいな。僕ちゃん、泣くよ」
「勝手に泣いてろ」
 合宿なんてロッカーのやるこっちゃねえんだよ、が俺の本音だった。ロックバンドの練習合宿なんてものもあるのだろうけど、俺はそういうのは嫌いだ。そもそも合宿というネーミングが嫌いだ。それでもしつこく誘われたら、渋々でも行ってやってもいいな、と思っていたのだが、幸生は話題を切り替えた。
「そんなら銭湯に行こうよ。お風呂だけでもいっしょに入ろ。ね、章ちゃん?」
「……この超弩級変態!」
「超弩級? 調度品がクラス替えしたの?」
「意味不明なシャレをやんなっ!! おまえといっしょに風呂に入るくらいだったら、俺は一生入浴しないよ」
「やーね、ばっちいんだから」
 うるせえんだよっ!! と言い返し、おー、やんのかやんのか、と幸生が身構え、はじめて取っ組み合いをした。やっているうちに楽しくなってきて、しまいには水溜りに転倒して泥だらけになり、幸生の変態的願望がかなってしまった。
「章、これでも風呂に入らないの? 銭湯行こう」
 着替えの安いTシャツを買い、幸生に強引に銭湯に連れて行かれ、致し方なく服を脱いだら、幸生が嬉しそうに言った。
「仲間だね、細くてちっこいんでやんの」
「おまえに言われたくねえんだよ。俺が細くてちっこいって確認したかったのか。見るな、変態」
「だって、見えるんだもーん」
 服を着てたって細くてちっこいのは充分にわかるだろうに、こいつは本物の変態なのかと横目で睨みつつ、威嚇しつつかかり湯をして湯船に飛び込み、その中でももめていたら、相客のじいちゃんに怒られた。
「高校生にもなって他人の迷惑を顧みず、こんなところで暴れてるんじゃないんだよ、きみたちは」
「……ごめんなさーい。あの、でもね」
「なんだね?」
「僕ら、大学生なんですけど……」
「大学生? 嘘をつくんじゃない」
「ほんとですよぉ。大学一年生」
「……だったらなおさらじゃないか。まったく近頃の学生はなっとらん」
「はい、はい、ごめんなさい。反省してます。章、おとなしくしろよ」
 じいちゃんは幸生にまかせておいて、返事もせずに身体を洗っていた。やがて幸生はじいちゃんに放免され、風呂に入っている間も、幸生の口はひっきりなしに動いていた。あまつさえ、幸生はこうも言った。
「ついでだしぃ、ホテルに行く?」
「……おまえな、その趣味はないんだろ?」
「その趣味? なんの趣味?」
「頼むからやめろ。それを続けるようだったら友達やめるからな」
「俺、そんな趣味ないよ。友達はやめないでね、章ちゃん」
「……はあ、おまえとつきあってると死にそうだ」
「死んだらやだよぉ、章ちゃん」
「章ちゃんと呼ぶなっ!」
 一事が万事この調子だった幸生に、俺はペースを狂わされっぱなしだった。そのころはまだ、かの有名な本橋さんや乾さんとは幸生も親しくなってはいなかったのだが、幸生に紹介されて、本庄さん、小笠原さんとは知り合っていた。
 この超弩級変態、超弩級お喋り男のペースに巻き込まれてばかりいたのは、本庄さんも同様だったのであるらしい。小笠原さんはさまでは幸生に狂わされなかったようで、ある意味、剛の者だったのかもしれない。幸生は俺をしつこく合宿には誘おうとせず、帰ってきてから話してくれた。
「尊敬を深めたよ」
「誰の?」
「知りたい?」
「知りたくない」
 知りたくないと言ったからといって、話さない奴ではない。幸生は長々と喋った。
「本橋さん、乾さん、山田さん、本庄さん、小笠原さん、それぞれの行動とそれぞれの考察をじっくり観察してきたんだ。今はまだ俺なんかは彼らの意識の端っこにちょこっといる程度だろうけど、近いうちに必ず、意識のど真ん中に躍り出る。三沢幸生、ここにあり、って感じ?」
「あっ、そ」
 好きにすりゃあいいじゃん、としか返答のしようがなかったのだが、俺の心の中にもまぎれもなく、幸生の口から出た五人の男女はいた。それからもずっといた。けれど、俺はロックを求め、合唱部なんかじゃ満足できなくて、幸生からさえも遠ざかっていき、一度は彼らと訣別した。
 すべてをリセットして、俺は俺のいるべき世界で生きるんだと決めて、歩き出したはずだった。だけど、消え失せてはいなかったのだろう。それから先もロックバンドのメンバーとしてささやかなステージで歌っていられたら、忘れてしまえたかもしれない。いや、大学生だった一時期があることを忘れようとつとめて……つとめないとならないということは、忘れ切ってはいなかった証拠だったのかもしれないと、今になれば思う。
「キャプテン、俺、合唱部をやめさせてもらいます」
 そう告げたときの渡辺さんの顔も、忘れてはいなかった。引き止められたらうざいな、だとか、正直、勝手にしろって言われたらそれはそれで寂しいかも、だとか、複雑な心境でいた俺を見つめて、渡辺さんはしばし沈思黙考してから、弱々しく微笑んで言った。
「惜しいな。引き止めても無駄か」
「……はい」
「そうか。惜しいけど止めないよ」
「俺、大学もやめてロックバンドやるんです」
 訊かれてもいないロックバンドの話まですると、渡辺さんはうなずいた。
「木村にはやりたいことがあるんだな。心底やりたいことはやらなくちゃ。がんばれよ、これからも」
「はい」
 安心したような、拍子抜けしたような気分で出ていった部室には、二度と戻らなかった。俺にはコーラスなんて向かなかったんだ、体育会系合唱部なんて、ロッカーのいる場所じゃないもんな、これで学校とも合唱部とも完璧にさよならだ。せいせいしたよ、などと考えていたような気もする。

 
2

 いっとうはじめに知り合ったのはミミだった。俺よりも背が高くて、大きな目をますます大きく見せるアイメイクをして、黒いレースのドレスを着たミミとは、ライヴハウスの客席で出会った。
「それってゴシックロリータとかいうファッション?」
 そのわりには足元がロンドンブーツなのは変かも、と考えつつ、声をかけたら、ミミがぎろっと俺を見返した。
「変わった声だね、あんた。ロック少年なんだよね」
「少年じゃないよ」
「いくつ?」
「十八」
「だったら少年だよ。なんて名前?」
「てめえが先に名乗れ」
「なんだって? えらそうに言ってくれるね」
 そのときはまだ名前を知らなかった彼女は、迫力あるまなざしで俺を睨みつけ、そのとなりにいた男が俺をすかし見た。なんだ、男連れか。そんなら声なんかかけなかったらよかった。後悔していたら、彼女が言った。
「あたしはミミ。二十歳。ロックバンドやってる、ってのか、ただいまメンバー募集中。あんたの名前は?」
「章」
「アキラだね。アキラ、ライヴがすんだら話そうよ」
「そいつは?」
 こんなの関係ないんだよ、とミミは男の顔を押しのけ、俺はなんとなくうなずいた。そのころ売れかけていたロックバンドの演奏を堪能してライヴハウスの外に出ると、ミミが待っていた。
「でけえ女だな」
「あんたがちびなんだろ。もっともさ、これを脱いだらそんなにはでかくないんだよ」
 シルバーのロンドンブーツを示し、ミミは俺を見下ろして笑顔を見せた。
「あんたもロックやるの?」
「うん、まあ。ヴォーカリストなんだけどさ、そのつもりなんだけどさ、ギターも弾けるけどさ」
「歯切れがよくないね。なんかわけあり?」
「わけはないけど」
 さきほどの男はどこにもいなくて、ふたりでぶらぶら歩き出しながら、俺は安心して言った。
「わけがなくはないかな。俺、今は大学で合唱部にいるんだ。ロック同好会ってのもあるにはあったんだけど、入りたくなかったから、歌えるって意味では同じかと思って合唱部に入った。俺はこんなに高い声だし、歌うキーもすっげえ高いんだ。だから合唱部でもテナー中のテナーだよ。高校のときにはロックバンドで歌ってて、昔からヴォーカリスト。合唱も面白いけど、やっぱロックのほうがいいな」
「そりゃあそうだよ」
 わが意を得たりとばかりにミミはうなずき、言った。
「ヴォーカルってのはちょうどいい。メンバー募集中って言ったろ。だいたいは決まってるんだけど、ヴォーカルが決まらない。女を探してたんだけど、あんただったら男でもいいかな。アキラ、みんなに会ってみない?」
「女の子バンドか」
 そう、あたしはギタリスト、他もみんな女、とミミは言い、俺は意外な展開に悩ましくなった。
「……黒一点ってのか。やりにくそう」
「あんただったら黒じゃないね。紅一点の逆だろ? あんたはちっとも男っぽくないから、赤と黒の中間の茶色一点。明日、アキラもおいでよ」
「俺の歌が滅茶苦茶だったらどうすんだよ」
「そしたらお断りするからいいよ。下手なの?」
「下手じゃねえよ」
 他のなににも自信なんかないけど、歌にだけは自信がある。そんな自信が本橋さんと乾さんのデュエットを聴いて以来、ぐらつきかけてはいるのだが、それゆえもあったのだろうか。俺には「ラヴ・ミー・テンダー」の世界なんかじゃなくて、ロックこそがふさわしいんだ、と思い直していた。
 合唱部では混声も男声も経験してきた。歌うは唱歌からフォーク、ポップス、などなど。ロックはない。ハードな曲調は合唱には似合わないものであるらしい。
 高校生ロックバンドは、仲間たちの進路が分かれて自然消滅した。稚内の高校だったのだから、東京に行ったのは俺ひとりだ。俺もまたロックバンドを結成したいと考えていたのだが、大学生活は予想よりも忙しくて、ロック仲間を探すのにばかり力を入れていられない。そんなところへのミミの誘いは渡りに船だった。
 ギターのミミ、ベースのスー、ドラムのローザ、キーボードのマリ、それなりにルックスもいい女たちに囲まれて、俺の新しいロック人生がはじまった。「ジギー」のヴォーカリスト、アキラとして、俺はロックスターになる。なんの根拠もないそれを確定事項だと信じ切って、俺は仲間たちとともに歩き出した。


 ぼちぼち仕事もできるようになって、ファンもついてくれるようになってきて、俺は思い切って大学をやめた。ちっちゃなライヴハウスでの演奏では、ロックだけで食えるわけもない。大学を中退したと電話で話したら親父が憤死しかねない勢いで怒り、仕送りを止められてしまったので、音楽以外のアルバイトをせっせとして稼がなくてはならなかったけれど、ロックのためならつらくはなかった。
 昼間はバイトをして、夜になるとライヴハウスで正規の仕事につく。そんな日々を送っていたある日、ライヴハウスの控え室に入っていったら、今夜の共演者であるスキンヘッドの強面男と、うちのメンバーたちが睨み合っていた。「ぷにぷに」とかいうふざけた名前のパンクバンドの一員であるその男は、名前もふざけていて「ブル」とかいうのである。名前の通りにブルドッグみたいな顔をしたそいつは、控え室に足を踏み入れた瞬間に硬直した俺を見て薄ら笑いを浮かべた。
「この女たちはおまえの追っかけか。仕事場に女を四人も連れてくるんじゃねえよ」
「……あたしがさっきから言ってるだろ」
 食ってかかったのはミミだった。
「あたしたちはジギーのメンバー。アキラもそうだよ。追っかけなんかじゃない」
「そんなこと、言ってたっけか? おまえら、女ばっかのバンドかよ。そしたらこいつも女?」
「見たらわかるだろ。アキラは男だよ」
 言ったローザにも、ブルは薄ら笑いを向けた。
「見てもわかんねえよ。こいつはちっこくてか細くて、どこが男だってなもんだ。あんたらのほうがよっぽど男らしいんじゃねえの? あんたとあんたは特にさ」
 指さしたのはミミとローザ。たしかにミミは長身で凛々しいタイプだし、母親が東欧のどこやらの国の人間だと聞いているローザは、ドラマーらしくがっしりした身体つきをしている。スーは小柄で、マリは中背ほっそり型、ではあるものの、中身は全員俺なんかよりよほど男らしいので、俺としては反論のしようもなかった。
「アキラ、なんとか言いなよ」
 スーが俺を睨み、マリも言った。
「こうやって侮辱されて黙ってんの? こいつの言ってることって矛盾だらけだよ。女がロックやってんのか、へぇぇ、ってせせら笑ってみたり、あたしたちをアキラの追っかけかって言ってみたり。それってアキラが男だって認めた台詞でしょ? なのに今度は、アキラが男に見えないって言う。無茶苦茶ばっかり言ってるんだ」
「いいよ、マリ」
 ミミがマリを止めた。
「言いたい奴は言ってればいいんだ。演奏で黙らせてやる」
「自信満々だねぇ、お姉さん。よっ、かっこいいぜ」
 あからさまに馬鹿にした調子で言うブルの脚を、スーが蹴飛ばそうとした。ブルはスーの脚を宙でつかみ、そのままスーを引き寄せた。スーになにをするんだよっ、とミミが飛びかかろうとしたのを、ブルはこともなげに片手で押し返した。顔のみならず、体型も大型ブルドッグみたいな奴だ。いくらミミでも、気が強いだけではこんなでかぶつにかなうはずもない。吹っ飛んで壁に激突したミミにローザが駆け寄る。マリは俺に金切り声で言った。
「アキラ、あんたはなにやってんだよっ! せめてミミをかばいなよっ!」
「アキラなんかに頼らないよ」
 女にしては低い声をなおも低めて、ミミは言った。
「あたしはなにも喧嘩なんかしようって言ってるんじゃない。ブル、スーを離しな。離さないと承知しないよ」
「どう承知しないんだ? 面白い。やってもらおうか」
 へらへらとブルはミミを挑発し、ローザとミミは身構えた。マリは走り寄って、ブルにがっちりと抱きすくめられてもがいているスーを引き剥がそうとしている。俺はどうしても動けなくて、ただ見つめていた。と、控え室のドアが開いて、どやどやと集団が入ってきた。
「ちょっと、ブル、なにやってんの?」
 相当に迫力のある調子で言ったのは、ジギーと似たタイプの女の子バンドのヴォーカリストであるセナだった。ジギーは全員が愛称のみを名乗っているのだが、彼女たち「プシィキャッツ」も同様で、俺はジギーもプシィキャッツも、メンバーたちの本名を知らない。
 プシィキャッツとジギーの共通点は、メンバーのうちの四人が女、ひとりが男というところだ。ジギーはヴォーカルの俺が男だが、プシィの男はドラマーで、アメリカ人の大男である。そのドルフもいるのか、と探してみたけれど、ドルフの姿はなかった。ここにいるのはブルと俺以外はみんな女。だけど、女が八人もいたら、ブルにだって勝てるかもしれない。
「おんなじ売れないバンドのメンバー同士で、なにをもめてんだよ。なんだか知らないけど、ブル、スーを離しな」
 セナ以上に迫力のある声で、プシィのギタリスト、チカが言った。プシィのベースとキーボードの女の子がマリに加勢し、ようやくスーをブルから引き離すと、そこからはわいわいがやがやと女の声が響き渡った。
「スー、大丈夫か?」
 訊いてみたけれど、答えは、ふんっ!! だった。
「あのさ、俺はだらしないかもしれないよ。だけどさ、こんなときに俺がよけいな真似をすると火に油を注ぎかねないだろ。だから俺は黙ってたんだよ。女にだったらブルの奴もたいしたことはしないだろうけど、俺が飛びかかったりしたら怪我をさせられるかもしれなくて……」
「言いわけばっか上手だね、アキラは。悔しくないの?」
 ブルに詰め寄って攻め立てている七人の女を見ながら、スーは言った。
「あたしは悔しいよ。あたしがブルに引っ張られたのは、あたしがあいつを蹴飛ばそうとしたからもあるんだろうけど、あたしがこの中でいちばんちっちゃくて弱そうだからだよ。だからってあたしは黙ってなんかいたくない」
「わかるけど……」
「ま、アキラも気の毒だよね。ちっちゃくて弱そうなのはあたしとそんなに変わらないのに、男だってだけでだらしないとか言われて。アキラ、外に行こう。ブルの仲間が外にいたよ。仲間に止めてもらおうよ」
「パンクやってる奴らだろ」
「パンクやってる奴らだって、話せばわかるかもしれない。あんまりもめてたらここのライヴハウスから仕事がもらえなくなるかもしれないんだよ。あたしらみたいな無名のバンドを使ってくれる、ありがたい店なのにさ。アキラ、行こう」
 ふたりして外に出たら、「ぷにぷに」のメンバーたちが輪になって煙草を吸っているのが見えた。ここは男ばかりのバンドである。パンクスというものには臆してしまう俺がためらっていると、スーがそいつらに話しかけた。
「ブルが中で女の子たちに責められてるよ。悪いのはブルなんだからね。あんたたち、ブルの味方をして女と喧嘩する? それともブルを止める? 喧嘩するつもりだったら、オーナーさんに言いつけてこよっかな」
「ブルが女と喧嘩してる?」
「しようのない奴だな。止めてくるよ」
「おー、行こうぜ」
 男たちはライヴハウスに入っていき、スーが肩をすくめて言った。
「はじめっからこうすりゃよかったのかもね。ブルがあたしたちを見て、小ばかにしたようなことばっかり言うから頭に来ちゃって。あいつらもあんなのを野放しにするなっての」
「そうだな」
「それにしてもアキラって……ううん、ま、いっか」
 しばらくしてから控え室に戻ってみると、ブルは仲間たちに怒られていて、女の子たちは集まってひそひそやっていた。俺は女の子たちに声をかけることもできずに突っ立っていたのだが、スーは彼女たちの輪に加わった。
「スー、なんともない?」
 尋ねたのはローザで、ミミも言った。
「あんなでかいのに引っ張られて、脚は平気?」
「あたしは平気。ミミこそ大丈夫?」
 どうやら誰も怪我をするほどでもなかった様子で、俺が胸を撫で下ろしていると、チカがぐさっと胸に刺さる台詞を口にした。
「うちのドルフは男だよ。ドルフも変な奴ではあるけど、もめごとを女に押しつけっぱなしで逃げたりはしない。けど、アキラは男じゃないんだね。ジギーは完璧女の子バンドなんだ。そのくせアキラって女といろいろと……ま、いっか」
 ま、いっか、と台詞は同じでも、ミミの発した、ま、いっか、とは調子がちがいすぎる。他の女たちは俺をシカトしていて、スーだけが同情のまなざしで俺を見て、くすっと笑った。同情なんかされたくないぞ、と言うには俺のハートは傷ついていたから、スーのまなざしがじわりとしみた。
 仕事は仕事でこなしはしたけど、その後も仲間たちにつめたくあしらわれて、とぼとぼとひとりで帰ろうとしていたら、ドルフが声をかけてきた。首が痛くなるほどに見上げないと話せない、真っ赤な髪のたくましい男だ。アメリカ人ではあるのだが日本語は俺以上にうまいので、言葉の心配はない。
「アキラ、大変だったみたいだな」
「別に大変じゃなかったよ。俺は逃げてばっかりだったもん」
「うん、まあな。ブルって奴は狂犬みたいなところがあるから、おまえだったら逃げて正解だったかもしれないぞ」
「おまえだったら、ね。ドルフだったら逃げないよな。だって、しようがないだろ。俺はドルフみたいにでかくて強い男じゃないんだよ。気も弱いし力も弱いんだ。生まれつきこんななんだからどうしようもないじゃないか。なのに、男のくせに男のくせにって言われて……」
「彼女たちはそうは言ってなかったただろ」
「アキラなんかに頼らない、ってミミは言ったよ」
 つまりそういう意味だ。男のくせにだらしないアキラなんかには頼らない、と言いたかったのだ。
「俺だって強くなりたいよ。だらしなくない男になりたいよ。さすがにアキラは男だね、って女の子たちに言われたいよ。頼りにされたいよ。あそこにいたのがドルフだったら、女の子たちはドルフの背中に隠れて、ブルなんかやっつけちゃってよ、って頼るんだろ」
「さあな。気が強いってことにかけちゃ、チカあたりは人後に落ちないから、俺なんかには頼らないんじゃないのか。男に頼るなんて恥だと思ってる奴らだもんな」
 アメリカ人のくせに人後に落ちない、だって。言葉の知識ならあっても、俺には正確には使えない気がする。
「鍛えりゃちっとは強くなるぜ。腕力が強くなったらそれに伴って、精神的にも強くなる。おまえはひょろひょろしすぎてるんだよ。背丈は今さら伸びないかもしれないけど、筋力は鍛えられるんだ」
「あんたに言われると落ち込むよ。ほっといてくれ」
「……そうか」
 俺には関係ないんだもんな、勝手にしろ、とでも言いたかったのを口にはしなかったのか。じゃあな、と言い残してドルフは背を向けた。俺はひたすらひがみっぽくなって、たったひとりで家路をたどりはじめた。


3

プロになれるあてもなくて腐りかけていたころに、きらっと光るできごとがあった。ロッカーたちの集団のひとりとしてだが、ジギーがテレビに出演したのだ。なにを話したわけでもなく、名前すら出ない出演だった。演奏もさせてはもらえず、世間にはこんな若者たちがいるんだと、不遇な日々でもがんばっているんだと、それだけだったけど、もしかしたらジギーがどこかのプロデューサーの目にでも留まって、デビューの話しが来ないかな、だなんて、甘い考えをチラッと抱いた。
「だけどさ、演奏もさせてもらえなかったんだから、意味ないんじゃない?」
 テレビ局からの帰り道、ミミが言った。
「うちらってルックスは悪くないよね。アキラはちびだけど顔はいいし、あたしを筆頭にみんな美人でしょ?」
「まあな」
「美人ったってさ、特別製でもないんだからやっぱ駄目か」
「かもな」
 きらっと光ったのは一瞬にすぎなくて、あれではなんの意味もないのか。結局俺は落ち込んで、とぼとぼ歩いていた。深夜番組、生放送を終えての帰り道だったから、街は真夜中だ。ミミと歩いていると、路地裏からふらっとあらわれた奴がいた。幽鬼みたいに痩せた女だった。
「……いいものあげようか」
「いいものって?」
 警戒した風情でミミが訊き返し、女はミミの手になにかを押し込んだ。
「ただでくれるの?」
「うん、いいんだ」
「だって、こんなのって高いんじゃ……」
「いいんだ。あげる」
 ふらふらっと女は歩み去っていき、ミミは当惑顔で手の中のなにかを見ていた。
「……ジャンキーみたいな女だな。ミミ、なにをもらったんだ?」
「これ。マリファナかな」
「マリファナ? やべえだろ」
「やばいね。ただってのがよけいにやばいよ。けどけど、やってみたかったんだ、あたし。イチかバチかだ。アキラ、いっしょにやろう」
 好奇心はある。マリファナなどは麻薬のうちにも入らないとも言う。習慣性もないのだから、煙草以上に安全だとも言う。が、バッドトリップだのフラッシュバックだのという噂も耳にした覚えがある。まして、あんな女がただでくれたものだ。巻きタバコふうに仕上げた大麻の中に、きつい麻薬を巻き込んであったりしないだろうか。
 やってみたい、けれど、危険はないのか。俺はミミの手の中のブツを見やって激しく悩んでいた。ミミもためらってはいたのだろうが、ひとりっきりでやるのではないから、どうにかなるよ、と言った。
「やろう、アキラ」
「……ええ? 俺は……怖い。正直言って怖いよ。捨てたほうがよくないか?」
「勇気がないね、あんたは」
「勇気ってのか? たとえばだな、あの女は囮捜査をやってるとも考えられる。警察のイヌなんだよ。俺たちみたいのは警察に目の仇にされてるだろ。ただでくれるとか言って俺たちをだまして、俺たちがほんとにやったら、どこかに隠れてる警察が出てきて逮捕される。あり得るぞ」
「……うーん、ないとは言い切れないか」
 激しく悩みはじめたのはミミも同様で、そしたらこうしよう、と言った。
「売る」
「売る? もっともっとやばいよ。捨てよう」
「……やだ、惜しい」
 否定しようとしても頭に浮かぶ心配ごとと、やってみたいという誘惑と、ミミも俺もふたつの気持ちの間を行ったり来たりして結論が出せず、捨てるには惜しくて、マリファナを見つめて長時間、ああでもないこうでもないと言い合っていた。
「じゃあね、明日、みんなに見せて相談しようよ。マリもスーもローザも、やってみたいと言う気がするんだけど、やばいからやめたほうがいいと言う気もするんだよね。勝手に捨てたら怒るかもしれない。相談してみよう」
「持ってるだけでもやばいだろ」
「そんならアキラ、あんたが持ってて」
 ってわけで押しつけられて、ミミは走っていってしまった。こんな危険物を持っているのが恐ろしくて、ミミと別れた俺は破裂しそうな心臓を抱えて歩き続けた。ジャケットの内ポケットにしまった包みが、今にも爆発しそうに思える。ついに耐え切れなくなってごみ箱に放り込み、一目散に逃げ出した。
「捨てた?」
 翌日、夕刻になって仕事場のライヴハウスに行き、打ち明けると、ミミの目がとんがった。
「あんたってほんっとに臆病だね。ただ、持ってもいられないのか」
「おっかなくて持ってられなかったんだよ。おまえが俺に押しつけていくからだろ。そんなに大事なんだったらおまえが持って帰れ。あんなもん持ってて警察に見つかったら、逮捕されるのは俺だぞ。おまえらはどうせ、あたしたちは知らないもん、アキラが勝手にやったんだもん、とか言うんだろ。俺はいやだよ」
「ふーん、アキラってあたしらをそういう目で見てたんだ。仲間意識もなんにもないって? そうだろうね。あんたこそ、あたしらを仲間だとも思ってないんだもんね」
「どういう意味だよ」
「わかってるくせに」
 仲間の女の子が男に乱暴されても、止めもできずに見ていたからか。臆病者、卑怯者と言われても、俺には弁解の余地はない。どうせそうだよ、と力なく言い返してミミに背を向けた。
 テレビに出てもどこからもなんのオファーもなく、ミミとはそんないきさつでぎくしゃくしはじめた。マリファナなんて捨てるのが当然だ。あんな女がくれたものをためして、生命に関わったりしたらどうする? と開き直ることもできず、過去のあれこれも思い出して、俺は暗くなっていた。
 マリファナの件はミミと俺だけの秘密にしていたのだが、ぎくしゃくしはじめると他のメンバーたちとも溝ができる。もともと俺はたったひとりの男だし、だらしないの頼りないの男らしくないのと彼女たちには思われていて、浮いた存在ではあったのだ。ミミはため息まじりに、ヴォーカリストの選択をあやまった、などと言い、俺は爆発した。
「そうかよっ。いいよ。俺なんか……俺なんかなぁ……どうせこんなことをやってても、どうせどうせ……おまえらは好きにしろ。俺はやめるから」
「アキラ? なにを言い出すの?」
 止めてくれたのはスーだけだった。他の三人はつめたくそっぽを向いていて、俺はライヴハウスを飛び出した。追っかけてきてくれたのもスーひとりだった。
「アキラ、やめるなんていつでもできるよ。ミミとなにかあったの?」
「なんにもないよ」
「……ミミとつきあってるとか?」
「誰があんな女と」
「そう? だったらよかった。ね、店に戻ろう。アキラがいないとジギーはどうしようもないんだよ。女が演奏してて、男のアキラが歌ってる。そんなバンドはめったにないから希少価値でしょ? それがあたしたちの売り。俺がいてこそのジギーだろ、っていばってたらいいの。帰ろう」
 優しいのはおまえだけだな、ってうなずいて、スーがそう言うんだったら戻ってやるよ、って恩着せがましく言って、その場はそれでおさまった。だが、一旦噛み合わせが狂ったバンドは、ころがり落ちるのも早かったのだ。
 そもそもロックバンドは金がかかる。アルバイトで賄うにも限度を超えている。生活費だって必要だし、バイトに精を出すにもライヴハウスでの仕事が邪魔をして、そうそうは稼げない。ロックが生活の邪魔をする、などと考えるようになったらおしまいだ。ロックは俺の生きるすべてだったはずなのに。
 このままでは早番、終わりがやってくる。やめると言って飛び出していったくせに、俺はその日が訪れるのが怖かった。誰かがやめようと言い出して、おしまいになる日を想像して怯えていた。
「やめようか」
 とうとう恐れていた日がやってきた。リーダー格のミミがそう言い出して、みんなも元気なくうなずいて、そこでジギーは解散となった。決まってしまえばあっけなく、なにもかもが終わりを告げた。
 ロックスターになるんだ、って夢はかなうのか。不遇な毎日すぎて、かなわないほうに賭ける、と言いたくなってくる。咲かないままにしぼんでしまう蕾。いずれはぽとりと地面に落ちて、それっきり消えてしまう俺の夢。そんな気がしてならなかった。その予感は当たって、俺の心も折れてしまった。
 また別のバンドを組めばいいじゃないか。ジギーでなくてもバンドは星の数ほどあるのだし、新しいバンドを結成するって手もあるじゃないか、とも思えずに、俺は奈落の果てまで落ち込んでいた。
 

 女の子バンドには女の子の追っかけがいて、彼女たちはそれぞれにミミだのローザだのスーだのマリだのの熱狂的ファンなのだが、少数ながら俺のファンもいた。ロックファンの女の子たちはファッションもひいきのロッカーたちの模倣をしていて、髪をとりどりに染めて奇抜な型にして、奇抜な服装、奇抜な化粧で決めている。俺はもうちょっと清楚な女の子がいいんだけどなぁ、と言ってみても、俺もロッカーなのだから、そんなのは通らない。
 アマチュアバンドにだってファンがいて、俺を取り合ってもめてる女の子もいたりして、ジギーにいた一年足らずの間に、俺は女の子には恵まれていた。たいして好きにはなれなくても、ま、こんなもんだし、と考えて女の子をとっかえひっかえしていた。
 ジギーを解散してロッカーでもなくなって、それでも昔のファンってやつはいて、女の子はとぎれずにいたけれど、その分、ふられるのも早い。意志薄弱で優柔不断で勇気も決断力もない俺は、いくら女の子とつきあっても、アキラってそんな奴だったんだ、最低、と罵られて捨てられる運命にあった。いつだって恋の結末は、捨てられて終わるのだ。
 どうにかこうにか生きてはいたけれど、そのころの俺は抜け殻だった。たいして好きでもない、こんなのは恋でもない、と虚無的に考えてはいても、女の子にふられるとへこむ。生きてる張りもなんにもないなぁ、と靄のかかったような頭で考えながら街を歩いていると、声をかけられた。
「アキラ、久し振り」
「……スー?」
 金もないから安い飲み屋に入り、スーと旧交をあたためた。
「スーは新しいバンドをやってんの?」
「やってないよ。なんだか気が抜けちゃった。今はバイト暮らし」
「俺も」
 話していても自然に暗くなって、話題を変えようと、俺は訊いてみた。
「スーの本名はなんての? す、のつく名前?」
「そう」
 女の子たちは愛称をステージネームにしていたから、俺は彼女たちの本名を知らないままだった。
「すみれ、すずか、すまこ、すみか……すのつく名前ってあんまりないなぁ」
「やめてよ。本名なんか言いたくない」
「なんで?」
「ダサイんだもん」
「ダサイのか。末子だったりして……」
「……アキラ、大嫌い!」
「ええ? どうして? 当たり? 嘘」
「ほんとだもん。笑ってる。あたしの名前は末子っていうの。親を恨みたい」
「末っ子?」
「そうだよ。こんな名前つけられてさ、どれだけみんなに笑われたか。今どきこんな名前、あり得ない」
「そうでもないよ。可愛いじゃん」
「可愛くないっ」
 四人姉妹の末っ子で、女の子はもういらない、と末子という名前をつけられた、最低の名前だと力説して涙ぐんでまでいるスーを見ていると、可愛くてたまらなくなってきて、頭を抱き寄せてキスをした。
「アキラ……」
「俺とつきあってよ。つきあうようになったら末ちゃんって呼んでいい?」
「駄目」
「どっちが駄目?」
「あたしね、前からアキラが好きだった。つきあうのはOKだけど、末ちゃんは駄目。昔と同じにスーって呼んで」
 前からアキラが好きだった、か。そういえば、スーにしたって俺をだらしないとは言ったけど、他の女の子たちよりはずっと優しかった。俺を好きだったからか。最高の気分だった。
「アキラ、前はいろいろとやってたよね。女は整理できてんの?」
「整理ってなんだよ。いろいろとなんかやってないって」
「あたしは知ってるんだよ。嘘をついても無駄。今はつきあってる子はいないんだね?」
「いない。誓う」
「よし、そんならいいよ」
 初体験は十八歳だったのだが、女にレイプされたようなものだ。それから何人もの女とつきあったけれど、恋だと感じたことはない。むこうが俺を好きだと言うから、女がいないと寂しいから、誘惑されてほだされたから、そんな理由でしか女とは関わってこなかった。それでいいと思っていた。
 あるいはスーは、俺の初恋なのかもしれない。はじめて女の子とつきあったのは中学一年生のときで、稚内の中学、高校時代にも女の子とくっついたり別れたりを繰り返していたけれど、あんなのは幼すぎて問題外だろう。二十歳にもなって初恋もないもんだが、スーが俺の日常に光と彩りを与えてくれたのはまぎれもない事実だった。
「こら、章、起きろ」
 ロッカー時代の俺は「アキラ」だった。ロッカーではなくなった俺は「章」。発音は同じでも微妙にちがう。スーは意識もしていなかったのかもしれないが、俺は意識していた。
 鍵を持っているスーは、俺が寝ている間に部屋にやってきて鼻をつまむ。熟睡しているとちっとやそっとでは起きない俺は、うーん、うるせえよぉ、とスーの手を払いのける。スーは苛立って俺の身体に馬乗りになる。首を絞めたりもして、耳元で甘い声を出したり、絞め殺すぞ、と脅したりもする。
「……人殺しぃ……んん、いい気持ち……スー、愛してるよっ」
 愛してるよ、なんて女に言うのも、生まれてはじめてだった。
「スーも俺を愛してる?」
「起きたら愛してあげる」
「愛してくれるってこうすんの?」
「こらこら、ああん、章ったら……」
 馬乗りになっているスーの腰をつかんで持ち上げようとしたら、ぐにゅっと潰れて折り重なって、そのまま俺が上になって……じゃれているのが楽しかった。
「章は思い切り女に慣れてるね。あたしで何人目?」
「はじめてだよ」
「嘘ばーっか。そんな嘘をつく口はこうしてあげる」
「……俺は弱いだろうけど、おまえには力ででも勝てる」
「そう? そうかな。やってみな」
「……やってもいいんだな?」
「なにすんの? きゃ、きゃ、きゃあ」
 たわむれているのはいいのだが、じきに喧嘩になるのが玉に瑕。スーは小柄で可憐な外見の持ち主なのだが、気性はきわめて荒いのだ。口喧嘩があっという間に暴力沙汰に発展して、つかみ合い、殴り合い、取っ組み合い、ものの投げ合いになるのも毎度だった。
「痛いだろっ、なにすんだよっ」
「……あんたこそなにすんのっ、あったま来るっ!!」
「頭に来るのは俺だよっ!!」
 ばっちーん、ばっしーん、と派手な音が響き渡って、アパートの隣室から怒鳴られたりもした。喧嘩ばっかりして、だけど、何度喧嘩をしても仲直りできて、俺の気持ちの中に、自分でも不思議な感情が芽生えつつあった。
 ロッカーなんて綺麗さっぱり捨ててもいい。歌で生きたいという野望も夢も捨ててもいい。平凡な一生でもいい。正式に就職しようか。大学中退ではまともなサラリーマンにもなれないかもしれないけど、贅沢を言わなかったら仕事はあるだろう。なんでもいいから就職して、スーと結婚して、ちっぽけな幸せってやつを手に入れるのも、それはそれでひとつの生き方なんじゃないだろうか。
 ただ、スーはもう一度ロックバンドをやりたいと望んでいる。俺がそんなことを口にしたら、軽蔑されてしまうかもしれない。あたしはロッカーの章が好きなのに、サラリーマンの章なんかと結婚したくない、スーの気持ちが読める気がして。
 だから言えなかった。すこしでも長く、モラトリアムな恋人たちでいたいと、捨てられたくない、ふられたくないから、スーをずっと抱きしめていたいから、俺もまたロックをやりたいな、って、ふたりして見果てぬ夢を語り合っていたいから。いつまでこうしていられるんだろう、心に忍び込む不安を見ないふりをしていた。
 スーといっしょにいられたら、夢を捨ててもいいと考える反面、やっぱり音楽は捨てられない、とも考える。歌いたい、ステージで歌いたい。俺は歌うために生まれてきたんだ。できることならスーとふたりで生きたい。できることなら音楽で生きていきたい。両方の夢がかなったら……そこまで考えて思考がストップする。そんなの、俺にはきっとあり得ない。そしたらせめてスーだけは……せめてそれだけでも……

「Love me tender, love me sweet,
 Never let me go.
 You have made my life complete,
 And I love you so.

 Love me tender, love me true, all my dreams fulfilled.
 For my darlin' I love you, and I always will.

 Love me tender, love me long,
 Take me to your heart.
 For it's there that I belong,
 And we'll never part.

 love me tender, love me dear,
Tell me you are mine.
I'll be yours through all the years,
Till the end of time.

Love me tender, love me true, all my dreams fulfilled.
For my darlin' I love you, and I always will. 」

 ラヴ・ミー・テンダー……ひどくなつかしい歌が、なぜだか俺の口からこぼれ、スーが気に食わない顔をして尋ねた。
「なに、その歌?」
「え? プレスリーだよ。「Love me tender」。日本語では「優しく愛して」。知らない?」
「そんなのロックじゃないでしょ? プレスリーなんて古い。章のロックを歌って」
 遠い遠い昔、いいや、そんなに昔ではないけれど、はるかに遠い昔に思えるころに聴いた歌だ。合唱部の先輩がふたりで歌っていたのを、俺は友達とふたりで聴いていた。美しいハーモニーに引き込まれていく反面、俺にはこんな歌は合わないんだ、とも考えていた。なのになぜ今? 
 先輩たちって誰と誰だっけ? かたわらにいた友達は誰だっけ? あのころは近くにいたけど、今ではあまりにも隔たってしまって、名前も思い出せない彼と彼と彼。思い出せば思い出せるはずなのに、俺は強いて頭を振った。
 それから数日後、俺はその彼と再会した。思い出したくもない? 思い出せば思い出せる。思い出してしまう。あのころの俺は大学生だった。ロッカーではない友達が周囲にいた。不満や焦燥感はあったものの、気楽でなんの苦労も知らなかったあの日に、俺はその瞬間、舞い戻った。幸生だ。俺が東京に出てきてはじめて、遠慮もなく話せて喧嘩もできた幸生だった。
「よっ、章、おっす」
「おまえ、誰だ?」
「なに言ってんだよ。章、なんかやつれてないか。何年ぶりだっけ? 三年になるかな。疾風怒濤の日々だったって感じ? 聞いてやるから。この幸生くんが聞いてやるからね」
「聞いてなんかいらねえよ。あいかわらずよく喋る奴だな」
「俺はなんにも変わってないよ。章、飲みにいこう」
「ああ、いいけど……俺、金ないぞ」
 再会したら奴のペースに巻き込まれて、俺は幸生についてった。
「心配するな。俺もない」
「そんなら心配するよ」
「割り勘だったらなんとかなる。大船に乗ったつもりで……とはいかないかもしれないけど、なんとかなると信じて行こう」
「あいかわらずおまえって馬鹿だね」
「そうだ。安心しただろ。おまえも俺も馬鹿」
 疾風怒濤は幸生の喋りだ。たったの一年のつきあいだったのに、会った途端にあのころに逆戻りして、俺は幸生と酒を飲んで話した。そのひとときが俺の運命を激変させるとは、そのときの俺には知る由もなかったのだが

END

 

 
  
  



 
 
 


 
スポンサーサイト


  • 【小説5(いつか俺にも)】へ
  • 【小説7(君がいた夏)】へ
  • Tag List 
  •  * |

~ Comment ~

次第に内容が濃くなっていく感じ…

人物が大人になっていくからなのか、物語が佳境に入って行くからなのか…
大学生ではない、生の、本当にリアルな人々の声が聞こえてきそうです。
歌に限らず『夢』を抱き、それがなければ死んでしまう!という世界に憧れて、それだけのためにガムシャラに突き進む時期があって、現実に打ちのめされて何もかもを失う時期がある。
季節が巡るように、夏から秋へ、そして停滞の冬へと流れる渦に巻き込まれ、抗う術もなく辿り着き、だけど、厳しさに耐えたら、目の前には‘春’の息吹。
そして、その春風を運ぶモノが、かつて関わった‘人’った。
仲間だったかけがえのない友達だった。
そこに、『ヒトはヒトと関わって変わっていく』という現象を華麗に乗せて、ただ読み進むだけでそれを表現してくれる。
ただ、素晴らしいと思いました。
美しいことを美しいという言葉を使わずに、悲しいことを悲しいという言葉を使わずにその情感を伝えること。
それが、文学だとどっかの編集者が言ってたそうですが、それは、fateもたまに思い出し、肝に銘じます。
いや、浸りました。
どんどん物語が加速しておきますね。
流れに置いていかれないように心せねば!

並んでました

fc2のオリジナル小説ランキングを見にいったら、fateさんのサイトと私のサイトが並んでまして、なんだか嬉しかったのでした。

それはまあいいとしまして、「美しいことを美しいという言葉を使わずに、悲しいことを悲しいという言葉を使わずにその情感を伝えること。」
そうですねぇ。それができたら素晴らしいですよね。

章って奴はけっこう私に似ているのもあり、キャラクターの中では一番最初に湧いて出てきたのもあり、初期設定では主役だったのもありまして、思い入れは激しいのです。

激しいゆえにいぢめてしまう。
のではなくて、いぢめられっ子キャラなんですよね。

こんなに素敵な感想をいただいて嬉しいです。
毎度言ってますが、今後ともよろしくお願いします。

章くん。
今までのキャラので一番激しくて、自分の欲望に正直で。
夢を追う事に夢中過ぎて、ちゃんとした大人になりきれずにいる、危うさが、ムンムンと匂ってきますね。
でも、どこか臆病でもある。その臆病さのおかげで、救われましたね^^
彼の中にある、ちゃんとした家族に育てられた、育ちの良さが、こんな時ににじみ出ています。

いまどきの若者の、リアルな倦怠感も伝わって来るし。

イイキャラですね~。
型にはまってなくて、これからいろいろ変化しそうです。

三沢くんとのやり取り、最高に楽しかったです^^
三沢くん、章君が居なくなって、寂しかったろうなぁ。

再び出会えたのは、やっぱり運命ですね。
少しずつメンバー集結。かっこいい~~^^

最後に必ず歌で終わる演出が、ニクイです!

limeさん、早いですねー。

読書のスピードがとっても早くていらっしゃるのですね。
こうして読んでいただいて嬉しいです。ありがとうございます。

先回いただいたコメントの返事に、「フォレストシンガーズ結成」って書きましたが「フォレストシンガーズデビュー」でした。
すみません、もうちょっとですからね。

他のところにも書いていますが、章は私の中にフォレストシンガーズのキャラとしては真っ先に生まれ出てきたのです。

ですから、これでもえこひいきしてるんですよね。
「嘘つけ、苛めてるじゃないかよ」
「可愛すぎて苛めてるのよ。わかってないね」
と、章と会話しつつ。

章は男性キャラの中ではいちばん、私に似てるんですよ。
それゆえに愛しさと憎たらしさがないまぜになってます。

NoTitle

はじめは、大学をやめたことで何か遠回りをしたような感じがしたのですが、とんでもない。

個性的なバンドのボーカリストとして過ごした日々の経験が章の中にしっかり積まれました。

そして再会。大学生だったのはたったの一年であったかもしれないけれど、そこでの出会いと出来事は一生もの。

大学では得られない経験を持った章が大学時代の仲間に加わる。なんだかワクワクします^^

けいさんへ

いつも本当にありがとうございます。
章はこれから、フォレストシンガーズの中で葛藤を続けて、自棄になったりみんなに迷惑かけたりなんですけど、性格的にもっとも私に似ているだけに、「アホな子ほど可愛い」ってわけで、著者としてもお気に入りキャラなんです。

書いてる本人の力量がはなはだ不足しておりますので、上手に書けなくてもどかしいのですけど、これからもフォレストシンガーズを可愛がってやって下さいねー。

NoTitle

あかねさん、ご無沙汰しております。西幻響子です。
久しぶりにフォレスト・シンガーズを読ませていただきました。
やっぱりいいですね、この独特な雰囲気。
それにアキラ君も相変わらず魅力的です。
スーとのたわむれがとても微笑ましく、刹那的で、ロマンチックでした。
ラストで幸生君(「幸せに生きる」という意味にとれるこの名前、とてもいい名前ですね)と再開できてよかった。
この二人はほんとにいいコンビ。
なんだかんだいってアキラ君は幸生君といると癒されてるんじゃないかな。

西幻響子さんへ

おー、響子さん、お久し振りです。
どなたかのブログでお名前を見かけて、戻ってらしたのかな? と嬉しく思っていました。

章と幸生は(サチ(幸)多き人生を送るように、と両親が長男につけた名前です。私の設定も響子さんのおっしゃる通り)喧嘩ばっかりしてますけど、喧嘩するほど仲がいい、ってわけでしてね。


章が魅力的だと言って下さるのは、響子さんだけかも?
それでもまあ、困った子だなぁと思われながらも、読者さまには章もあたたかく見守っていただいて、幸せ者です。

響子さんもブログ再開、あるのでしょうか。
もしも再開されたら、ぜひ教えて下さいね。
銀ちゃんに会いたいです。

NoTitle

大学を辞めたあたりから胸に・・・ほろり。。
絵が浮かんでリアルに感じられたー。
この切なさはなに?!

でも三沢くんが来たからにはきっと素敵なことがw

直太朗とは森山直太朗のことです。
息子と知らずに聞いてました(インディーズのときは直太朗で活動していたので
LUVandSOULはR&B系のボーカルグループです。

ハルさんへ

いつもありがとうございます。
章にほろりとして下さるなんて、嬉しいです。
章はこれからもしばらくは苦悩のときをすごすのですが、将来にはいいことも待っている……はずです。

直太朗さんは「独唱、さくら」ぐらいしか知りませんが、あの歌はじっくり聴くといいですよねぇ。
私はほんと、メジャーなミュージシャンとか曲とかしか知りませんので、またハルさんのオススメ、教えて下さいね。

あけましておめでとうございます。
いつもいっぱい書き込みありがとうございます。
今年もよろしくお願いします!

ハルさんへ

こちらこそ、いつもありがとうございます。
ハルさんの繊細な世界、楽しみにしています。

今年もよろしくお願いしますね~

感想

これには鳥肌が立つほど、ぐっときました。ツボでした。
こういっては失礼ですが、三沢の章にしてもアキラの章にしても、文章といい、物語といい、どんどん上手になっていきますね!! ノッてきたということでしょうか?

ワタシもバンドをやっていてインディLPを出し、専門誌にもちょこっと掲載されて、メンバーの中には東京(ワタシは東京人でしたが)へ行ってプロになろう!! という者もおりましたが、それで食えるかいっ!! とばかりに帰京して家業を継ぎました。

先輩にはメジャーからアルバムだしているプロもいましたが、しょせんはローカル・ヒーロー、いつの間にかいなくなりました。

休みで帰った時にはライブハウスに行きまくって、実力があってもひのめをみないミュージシャン達を数多く知り、デビューしてからさえ悲惨な目にあっている人達も知っていましたから。

後輩の中にはアキラと同じ夢を抱いて、東京に出て来た者もいます。
でもねえ。。。やっぱり、無理でした。
「東京に行く」というと栄光を約束された、みたいなイメージが地方にはありますが、世の中そんな甘いものではありません。アキラの姿を彼らと重ねていたのかもしれません。

ひとついえば、現実には「ライブのためにバイトに支障をきたす」ほど、オファーがあるバンドは幸せなくらいですよ。普通のバンドなら、1、2ヶ月に1回、ライブできればラッキーな方です。

それにしても、バックが美女ばかり!! ヴォーカルだけオトコ!!
というのはワタシの妄想でもありましたね~~~。いいなあ、アキラ。
まだまだ物語は続くみたいですが、この章だけでもじ==んと来てしまいました。

ちなみに「ラブ・ミー・テンダー」はカラオケで、ワタシの18番でもあります。

慚さんへ

こちらにもご感想いただきまして、ありがとうございます。

フォレストシンガーズストーリィの当初の主役は章でした。
私は自分では歌もろくに歌えませんが、ROCK少女のなれの果てですから、章にはやはり思い入れが強いのですよね。
彼、私といちばん性格が似てますし。

アキラの姿をお知り合いのロッカーさんたちと重ねる。
そういうのって光栄ですし、やはりご自分もその世界に身を置いておられたゆえのご感想なのでしょうね。

このブログにあります、連載小説の「We are joker」は売れないロックバンドの物語(第一話は完結しています)ですので、よろしかったらまた、読んでやって下さいね。

>それにしても、バックが美女ばかり!! ヴォーカルだけオトコ!!
というのはワタシの妄想でもありましたね~~~。いいなあ、アキラ。

あはは。ここ、笑いました。
男性ならではのご感想でしょうか。こんなふうにおっしゃった方ははじめてですので、ああ、そういう見方もあるんだな、と感慨深いものがありました。

アマチュアロックバンドの仕事……そうですよね。演奏する仕事をもらえるのは幸せですよね。アマチュアもの書きとしましては、たいへんに腑に落ちる一文でした。
管理者のみ表示。 | 非公開コメン卜投稿可能です。

~ Trackback ~

卜ラックバックURL


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

  • 【小説5(いつか俺にも)】へ
  • 【小説7(君がいた夏)】へ