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FS2014・十一月「木枯らし一号」

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フォレストシンガーズ

「木枯らし一号」

 身を切るような風……ありふれた形容しかできないのは、俺は乾隆也ではなく本橋真次郎だからだ。こうしてじきに乾を引き合いに出して比較してひがみたくなるのは、相当意識している証拠だな。しようがない、奴は俺の一のライバルなのだから。

 春一番ってのがあるのだから、木枯らし一番もあるのか。木枯らし一号か。
 十一月は霜月。霜月の風はショパンのエチュードOp.25 第11番「木枯らし」の曲調に似て、俺の全身に吹きつけてくる。俺は風にさからって歩く。思えば俺の人生、けっこうこうして真っ向からの風や流れとは逆の方向に進んできたものだ。

 なーんてさ、かっこつけんなよ、シンちゃん。おまえは乾隆也じゃないんだろ。かっこつけは乾にまかせておけばいい。そんなことを思いながらスタジオに入ると、どんなときにも意識しまくってしまう乾隆也がいた。

「おはよう」
「おう、早いな。あ、そうだ、乾、木枯らしって英語でなんて言うんだ?」
「Cold wintry wind」

 英語なんて得意じゃないよ、と常々言っているくせして、乾は英語で詞も書く。発音だっていい。英語で小説が書けるという女が、乾と俺の英語の歌を聴き、乾さんのほうが達者だと言ったものだ。
 悔しいけれど、流暢な発音で即答した乾のほうが、俺よりは英語力は格段に上なのはまちがいない。へん、俺ら日本人だ、英語よりも国語が大事だろ。いや、国語力となるとさらに数倍、乾が上なのだが。

 それに、俺たちは日本人だとはいえ、レパートリーには英語の歌も入れているシンガーズ。英語なんか嫌いだと言っていてはいけないのだった。

「英語って意外と語彙が少ないんだよな。お湯って単語もないだろ」
「湯はHot waterだよな」
「木漏れ日はSunbeams shining through branches of treesという長いフレーズになる」
「五月雨は?」
「Early summer rainかな」
「初夏の雨か」

 そのかわり、動物をあらわす単語は豊富だな、だとか、中近東ではラクダの仔から年を経ていくにつれて名前が変化していく、出世魚みたいだな、だとか、草原の国には緑を表現する単語がたくさんあるだとか、乾が薀蓄を披露した。

 ひとりで考えていると、乾の雑学の豊富さを悔しく感じるのだが、こうして話を聞いていると引き込まれていく。話術も巧みで臨機応変の切り返しや打てば響く明晰さや、俺にはかなわないよ、気分にさせられて、乾と話しているのはたいへんに楽しいと認めざるを得ないのだ。

「で、木枯らし一号ってヒーローでもいるのか」
「一号ってのはださいだろ。ウルトラマンタロウとか、仮面ライダーなんとかとか、ユニークなネーミングをしなくちゃ。しかし、それ、いいかもな」
「November shinってヒーロー、いいんじゃないか?」

 十一月の風の中で生まれたヒーローに変身して、木枯らしとともに飛んでいく。そんなイメージを思い起こせば、木枯らしだって寒くはない気がする。さすが乾隆也、俺のツボをよく知っていやがる。

END





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寒くなりましたな~~。
・・とふと思う。
もうコートが必要になってきたぜ。。。
寒くなってきたので、お体ご自愛くださいませ。
(*^-^*)

LandMさんへ

いつもありがとうございます。

LandMさんもお風邪など召しておられませんか?
暑がりの私はいまだ、早足で歩くと汗をかきまして、暑がっています。じきにかーっと暑くなる体質ですから、寒いのは平気なんですけどね。

なのに家族にうつされて風邪をひき、喉が痛い。咳が出る。
つらいですね。
LandMさんもご自愛のほどを。
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