ショートストーリィ(フォレストシンガーズ)

FSショート(100話)「1/100の純情な感情」

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フォレストシンガーズ

ショートストーリィ100話記念号です。
BLもどきですので、ご注意下さいませ(^^♪


「1/100の純情な感情」



 中二病と言われるくらいなのだから、十四歳くらいのころにかかる病気なのだろう。悪ぶりたい年頃というのも、同時期だと思われる。十四の僕、真行寺哲司は純朴な島の少年で……ってのは大嘘だが、悪ぶりたいわけではなかった。

 ぶりたいのではなくて、正味、悪い子だったかもしれない。悪い奴である自分に酔っていたというか、そんな僕が好き、みたいなところはあったから、やっぱり中二病だったのかな。

 そのまんま成長して二十歳になった僕は、今でも中二病をひきずっているのかもしれない。決して悪い子になりたいわけではないのだが、結果的に悪いことをしているから同じなのか。いい歳してイタイ奴、に近づきつつあるのかもしれない。

 その中二病、真っ只中の女がいる。彼女は僕よりもひとつ年下の十九歳。十九にもなって悪い子ぶりたいって、本物の痛い女だ。

 出会いはどこかの酒場、フォレストシンガーズの乾さんに連れられていた千鶴と、ひとりで飲みにいっていた僕が顔を合わせたはず。細かい部分は記憶にないが、僕は乾さんに恋をしているから、にも関わらず同性愛のケはない乾さんは、僕を年下の男としか扱ってくれないから、女の子はいいなぁ、という目で千鶴を見ていた。

 佐田千鶴と乾隆也は、同じ映画に出たのだそうだ。ともにちょい役で、ふたりのからみはなかった。なのに、このふたりをエロっぽいポスターにして、街角に映画の宣伝のために貼ろうとの企画が持ち上がった。無関係な僕は当然、なにがどうしてそうなったのかは知らないが、推測してみると。

 美少女から美女に変わろうとしている、あやうい年頃の女。彼女は小柄なほうだが、女としてあらまほしきパーツには色っぽく肉がついている。乳房も豊かで尻はかなり大きく丸くむちむちしている。僕はこの目で見て触れたのだからまちがいない。

 グラマラスなくせに清楚さもあり、セクシーでいながらガキっぽさもある、男心をそそりまくりそうな千鶴。売れない女優。

 かたや、三十五歳の中年オヤジ、フォレストシンガーズの乾隆也。脂ぎったおっさんにいたいけな美少女が食われるって図は、変態すれすれ男の心を妖しくいやらしくかきたてる。ってのも大嘘。乾さんは三十五歳なのは事実だが、脂っこい中年オヤジではない。そんなタイプだったら僕だって恋はしない。

 惚れた欲目を省いてみても、乾さんはさらりと清潔そうな男だ。細身で背は高いほう。髭や体毛は人並みにはあるようだが、肌も綺麗で色白のしょうゆ顔、日本の大方の女の支持を受けそうな中年オヤジなのだ。

 女になりかけている美少女が、おずおず、怖々、年上の男に心を開いていく。彼の手に服を脱がされ、ベッドに運ばれ、苛められたり嬲られたり可愛がられたりして、とろっとろっととろけていく。精神的にも甘やかされたり叱られたり、ちょっとだけ叩かれたりなんかもして、彼のとりこになっていく。

 という構図のポスターなのだろうと僕には思える。
 街角に貼られたポスターは、人心を焦らすためなのかすぐに撤去された。数種類あったのだそうだから僕はちらっとしか見られなかったが、そんな感じだったのだろう。それを見た女たちはどう考えたのか。昔を思い出してノスタルジーに浸ったり、まっ、いやらしい、と眉をひそめたり、さまざまな反応を示したのだろうか。

 素敵、色っぽい、私もこんなふうにされてみたい、と思った女もいたのだろうか。僕も女だったとしたら、そんなこと、されてみたいな。男のままでも乾さんにそんなことをされたいけど、彼は絶対にしてくれないから。

 そうやって関係のできた乾さんに、愚かな千鶴は本当に心を奪われた。身体のほうは奪ってもらえなかったようだから、悶々としていたのだろう。

 そんな千鶴を僕はいつだってからかったり苛めたりしてやった。愛を込めたイジメではなくて、憎たらしいから、乾さんに可愛がられている千鶴に妬けたから、その意味で言葉で苛めてやったのだ。そのたび、乾さんに叱られたのは僕。乾さんだけではなく、女には優しい男たちに殴られたり叱り飛ばされたりした。

 憎らしくてうらやましくて大嫌いだった千鶴なのに、どうしてだろう。これが情にほだされるってやつなのだろうか。僕は男のほうが好きだが、女とだって寝られる。女と寝るときにも受け身のほうが好きだが、未経験の女だったら抱いてもやれる。

 そうして、千鶴と僕はおかしな関係になった。十九歳の中二病女と、二十歳の小悪魔少年と。僕は永遠の少年のつもりだし、僕は未成年だから、と言えば信じる奴がほとんどだから、少年でもいいのだ。小悪魔って自分で言うなって? だって、小悪魔なんだもの。

「あ、哲司、ここにいたの?」
「いたよぉ。千鶴、今夜はどう? 暇なんだよ。寝る?」
「……そうだなぁ」

 いつもだったら間髪を入れず即答で、いやっ!! だ。一度は寝たってのに、二度目はいやだってのはおかしな話だが、相手がこの僕だからなのだったら納得できなくもない。
 しかし、ためらっているそぶりをするのはなにかたくらんでる? 酒場のボックス席にひとりでいる僕のむかいに千鶴がすわったので、そっちに移って腰を抱いた。

「あいかわらずでかいケツだね」
「さわらないでよ」
「気持ちいいんだもん。さわったっていいだろ」
「哲司ってマザコンだよね」
「時々言われるよ」

 綺麗な女は見ていて心地よいから好きだ。特に好きなのは母性的な体型の女。胸と尻の大きな女が好きなのは単なる趣味なのに、マザコンに結びつけたがる女はよくいる。僕は実の母とは縁が薄かったから母親は好きでも嫌いでもない。精神分析をしたがる輩に言わせれば、母の愛に飢えている、となるのだろうが。

「母の愛には飢えてないよ。ケイさんの愛に飢えてるんだ」
「今夜はケイさんは?」
「知らない。仕事が終わったら帰ってくるだろ。ケイさんと顔を合わせたくないんだったら、おまえのマンションに行こうか。どうでもいい女だったらここで脱がしてやってもいいんだけど、おまえはどうでもよくはないもんな」

「ここで脱がせるの? よその女のひとにやったら、警察を呼ばれるよ」
「スカートをめくったり、胸に手を入れたりはしたことあるな。警察なんか呼ばれない。だって、そうされたら女は喜んでるもん」

 まったく、もう、最低、とか言ってはいるが、本気にしていないようにも見える。ぎゅっと抱き寄せて僕の胸に千鶴の顔を伏せさせ、ふわっとしたスカートをまくってやろうとしたら、身体が浮いた。

「うわっち……ケイさん? 千鶴と一緒に来たの? このぉ、僕をからかってたな? 僕はおまえをからかうのは好きだけど、からかわれるのは嫌いだよ。覚えてろ。今度会ったら百人くらいの人間が見てる前でスカートを……ケイさん、ちょっと……うっ」

 ケイさんが近くにいると知っていたから、千鶴は僕をからかっていたのか。だから即答拒否ではなかったんだ。ケイさんに腰を持ち上げられて肩にかつがれて、ケイさんはなにやらごそごそやっている。千鶴のスカートをまくろうとしていたのも見られていたのだろうから、ケイさんが僕に仕返ししようとしているのだろうか。

「……いいよ。やって。あなたは自分の持ちものの下半身を裸にして、他人に見られても平気なんだね。僕はむしろ快感かもしれない。僕のお尻って千鶴みたいにでかくなくて、恰好いいだろ。だからケイさんも見せたいんだよね。この可愛い尻は俺のものだ、って誇示したいの? どうぞ、やって」
「……千鶴さん、ごめん。連れて帰るよ」
「はい、おやすみなさい」

 笑いをかみ殺しているような顔で、千鶴がケイさんに挨拶する。ケイさんは僕をかついで酒場から出ていく。いくらなんでも外を歩きながらジーンズを下ろされたことはないし、しないと信じてるけど……って、小悪魔なんだからそうされても平気なんだろ、哲司?

 自分で自分に問いかけてみても、平気だよ、との返事はない。なんだよなんだよ、半端な奴だな。やっぱいやなの? 僕にもまだ純情さのひとかけらぐらいは残ってるってことかな? ちがうのかな?

END






 
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~ Comment ~

NoTitle

こちらも読ませてもらいましたー。
えーーー!??ってなりましたΣ(゚Д゚)犬猿の仲かと思ったらやっちゃってたのか(笑)
考えてみれば美男美女で本命は別にいるけど愛に飢えてるってあたりも似たもの同士、お似合いですね。そうなってもおかしくないのかー。みんな奔放だなぁ…私ももっと奔放に生きようかしら(おい

たおるさんへ

これも読んで下さってありがとうございます。
男と女の不思議。
大嫌いだよ、べーっだっ!! とか言いながら、やはり男と女だと。
真次郎と美江子も喧嘩ばっかりしてましたので、私はそういうカップルがけっこう好きなのですよね。

千鶴と哲司が完全にそうなったいきさつは。
http://quianred.blog99.fc2.com/blog-entry-464.html
こちらです。

あー、でも、たおるさんは奔放になられるのはほどほどにね。
小説で奔放な人間を書かれる程度のほうがいいと思いますよ。
私も現実ではよーせん(とてもできない、とのニュアンスはたおるさんはおわかりですよね? 関西人でなかったら通じないかもしれませんので)、ですから、と、老婆心でした。
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