ショートストーリィ(フォレストシンガーズ)

FS「ハートブレイカー」

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フォレストシンガーズ

「ハートブレイカー」


「How can I love you where you ain't around ?

 Feeling no pain, when will we meet again?

 Suddenly everything I ever wanted has passed me by

 This world may end, not you and I」

 ラジオから流れる歌を聴いていると、僕もハートブレイクしそうだ。女性の歌なのだけど、今の僕は全身がどっぷり浸って、この歌と同化しそうだった。

「この胸が張り裂けそうな想いをさせる人
 あなたがいないこの場所で、どうしたらあなたを愛せるの
 あなたにまた会えたら、この胸の痛みが無くなるのに
 突然望んでいたこと全てが消えてしまった
 あなたがいない世の中なんて……」

 あなたの愛するひとは亡くなったの? 僕が好きだったひとは生きているけど、僕を捨てたんだ。
 最初から、あのひとは軽い気持ちで僕とつきあったんだよね。頭がよくて芯が強くて凛々しくて、かっこよかった三つ年上のひと、美江子さん。

「好きです、僕とつきあって下さい」
 小さな花束を持って告白したら、目を丸くした美江子さんは、笑いたいのかな? ちがうのかな? と勘ぐらせるような顔をして、それでもうなずいてくれた。

 大学に近い繁華街でデートしましたね。僕は最初から最後まで、先輩の美江子さんには敬語だった。おごらせてほしくても絶対に割り勘で、時には、アルバイトの給料が入ったからと、美江子さんがごちそうしてくれた。プレゼントだってくれた。

 ソックスやキャンディや、本やCD。ソックスはプレゼントとしてもらったのだし、キャンディは、はい、どうぞ、と言われてもらって、食べるのがもったいなくてポケットにしまった分だけど、本やCDは貸してもらったのかな。返すべきなんだろうか。

 だけど、さよならを告げられたんだから、返しにもいけやしない。
 一緒にショッピングをしたり、公園を歩いたり、本屋さんに行ったり、そんなデートばかりだったから、美江子さんの部屋に行ったことはない。彼女が僕の部屋に来たこともない。なのに、僕の部屋には美江子さんを思い出させる小さなものが、ひとつ、ふたつ、三つ、四つ。

「こんなところにつゆ草が咲いてる。可愛い花でしょ」
「深い青なんですね」
「これは摘んでもいいよね」

 公園の芝生に咲いていたつゆ草を摘み取って、美江子さんが僕にくれた。僕は大事に持って帰って押し花にした。僕のほうは小学生みたいな恋だったから、美江子さんの彼氏としては幼すぎたから、捨てられたんだね。

「だけど……」

 こうやってハートブレイクの哀しみに浸かってばかりいたら、美江子さんに軽蔑されてしまう。
 ディオンヌ・ワーウィックはこんなふうに続きを歌っているじゃないか。

「Get to the morning and you never call
 Love should be everything or not at all
 And it don't matter what ever you do
 I made a life out of lovin' you」

 そう、新しい朝は来るんだ。今日は哀しくても、明日になれば哀しみがすこし薄れ、やがて哀しみは消えてしまう。
 忘れるのも哀しいけれど、いつまでもめそめそしはていたら進歩がないもの。

 こんなときには強がりだって必要さ。
 来年には美江子さんは大学を卒業して、立派な社会人女性になる。そうしたら僕は美江子さんとは会えなくなるけれど、そのほうが忘れるためにはいいのだろう。

 春になれば僕だって大学二年生。来年には二十歳になるんだから、こわれたハートは再生するんだから、そうと信じて……。

「Oh, why do you have to be a heartbreaker
 Is it a lesson that I never knew
 Suddenly everything I ever wanted
 My love for you, oh

 Why do you have to be a heartbreaker
 When I was bein' what you want me to be
 Suddenly everything I ever wanted
 Has passed me by」

END





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~ Comment ~

NoTitle

壊れたハートを再生させるのは歌ではなくて自分ですが。
それでも歌がきっかけになる再生もよいものです。

LandMさんへ

いつもありがとうございます。

歌がきっかけになってハートの再生。
それもみな、心の持ちようひとつってことですね。
すべては「心」からはじまる、のかな。

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