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小説5(いつか俺にも)

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フォレストシンガーズストーリィ・5

「いつか俺にも」

1

妹たちは恐らく成長は止まったのだろうから、俺の背がこれ以上はいっこうに伸びないままだとしても、雅美と輝美に追い抜かれる心配はないだろうと胸を撫で下ろしてはいたのだが、高校三年の初詣のおりに、念のために横須賀の神社の神さまにお願いした。
「高校生活はあとわずかだから、その間にあとせめて十センチってのは無理ですよね。俺、一生百六十センチほどしかないちびで生きてくの? 神も仏もないものか……ってこれ? 神さまはいるんでしょ? そしたら最小限のお祈りをしますよ。せめて雅美と輝美は俺の背丈を追い抜かしませんように。それくらいかなえてくれるでしょ? それでなくても俺を小ばかにしてる奴らなのに、あいつらのほうが高くなったら兄貴の面目丸つぶれじゃん? 雅美と輝美も一生ちびで生きていかせて下さいね。雅美は諦めてるみたいだけど、輝美は、女だって背が高いほうがかっこいい、兄ちゃんよりも姉ちゃんよりも高くなってみせる、って言ってるんですよ。そんなのないよね? ないって言って。言ってくれてる?」
 そのお願いに百円、さらにお願いがあるので百円のお賽銭を追加して、俺は手を合わせた。
「東京の大学を受験します。俺の学力では少々レベルの高い学校だから、合格ラインぎりぎりだって先生は言うんですよ。大学の学部なんてややこしくてよくわかんないから、無難なところで経済学部を受験することにしました。受かったらひとり暮らししてもいいって、両親も約束してくれてます。神さま、どうかお願い。背も伸びたいけど、現役で大学に入学させて下さい」
 今年も長々と失礼しました、と神さまにお辞儀をして、俺は神社から出た。
 他にもお願いをいくつもしたかったけれど、先決問題は大学合格だろう。細かいことは合格してから考えよう。春には燦燦と光きらめく大学生活が待っていると信じよう。信じる者は救われる。神さま、信じてますからね、合格させてね。ってさ、他力本願ばかりじゃよくないよね。帰ったら受験勉強のラストスパートだ。
 神さまの霊験と俺らしくもない猛勉強のおかげとの相乗効果はあらわれた。めでたくも志望校に合格し、十八の春に念願のひとり暮らしをスタートさせた。これでようやく、猫も含めての我が家のいかれた女たちからおさらばできる。
 各サークルの勧誘がかまびすしいキャンパスを歩きつつ、俺は考えていた。大学って学問のために入学するものなのだろうけど、もうひとつ重要事がある。サークルに入って趣味の合う仲間をつくらなくては、学生生活の楽しさが半減するではないか。どれにしようかな。女の子がたくさんいるサークルがいいな。
 かといって、彼女づくりが目的でサークルに入部するってのも不純にすぎるだろう。俺の趣味……俺の趣味。そうだ。歌だ。妹たちには散々っぱら笑われたけど、俺は一応は作詞作曲もできるつもりでいる。小学生のころには少年合唱団に所属していたのだから、基礎はできている。合唱部だったら女の子も大勢いるだろうし、一石二鳥ではないか。合唱部ならば、俺の嫌いな運動部みたいな封建的体質もないだろうし、よし、決めた。
 そう決めて入部した我が大学の合唱部は、ところが……であった。なぜだかは知らないけど、合唱部は男子と女子に分かれている。俺が入ったのは当然男子合唱部で、男子部は特に体育会系だとつとに名高く、運動部並みの封建的体質に満ち満ちていたのだった。なんでこうなるの? だったのだが、入部してしまった以上はあとには引けない。
 最初のうちはうさんくさい気分で眺めていた男子合唱部に、しかし、俺は間もなく溶け込んでしまった。別々の部である女子部との交流も頻繁で、女の子とも親しくなれる。男子の先輩たちはかなりおっかないけど、女子の先輩たちにはとってもとっても素敵な方がそろっていて、俺を可愛がってくれた。
 俺が一年生のみぎりの男子部キャプテンは、渡辺さんというインテリタイプのお方だった。法学部法律学科、末は弁護士か検事か? 法学部だなんて、俺の頭では発想外の学部だ。封建体質の運動部型合唱部のわりには、キャプテンは柔和なひとなので安心して、そろそろと視線を女の子に向けていたら、あの子がいいなぁ、と思える子がいた。
「ねえねえ、アイちゃん、俺たち、同級生じゃん。なんでそう他人行儀な口のききようすんの?」
「だって、他人ですもん」
「他人じゃなくなろうよ、って言ってんのに」
「間に合ってまーす」
「彼氏がいるの? 誰? 先輩? 一年生? 合唱部じゃない奴? よその学校の奴? 社会人? 誰だっていいから、俺にそいつと勝負させて。俺のこの赫々たる闘志は、誰にだって負けないぞー」
「あのねぇ、三沢さん、合唱部の四年生だったりしても?」
「……弱いところを突きますね」
 春の一日、キャンパスで俺が迫っていた相手は、愛しのアイちゃんだった。
「三沢さんなんて呼ばないで。俺の名前は三沢幸生、ユキちゃんって呼んでよ」
 聞こえていないはずもないのに、アイちゃんは反応せずに言った。
「私には彼なんかいません」
「なんだ、がっくし、じゃないや。そんならいいじゃん。俺が嫌い?」
「嫌いじゃないけど……」
「好きでもない? 今は好きじゃないかもしれないけど、好きになるよ、つきあったら。生理的嫌悪感なんかはないんでしょ?」
「ないけど」
「だったら大丈夫。俺は誠意のかたまりだから、きみのためにこの身すべてを捧げます。受け取ってちょうだい」
「……ね、三沢さん、友達でいましょ」
「……それはいやだ」
「ごめんなさい」
 くそー、突撃大失敗か。友達でいましょ、ごめんなさい、だもんな。本当にがっくりした俺を微笑んで見て、アイちゃんは言った。
「三沢さんって面白いひとだし、女子部では先輩たちにも評判いいんですよ。私なんかじゃなくて、きっと素敵な彼女がすぐにできますよ」
「アイちゃんじゃない彼女なんていらない」
「誰にでもそう言ってるんじゃないんですか」
「ああ、ああ、俺はそんなふうに思われていたんだ。好きなのはアイちゃんだけなのに」
「ごめんなさい。じゃあね」
 ものやわらかな口はきくものの、決意は硬いらしい。とりあえずは諦めたのだが、俺はその後もアイちゃんを見かけると声をかけた。夏休みまでになんとか、と思っていたのだが、そうは問屋がおろさない、って古っ。
「なあ、三沢?」
 その日もただがっくりと女子部の部室から出てきた俺に、先輩が話しかけてきた。
「はい、本庄さん、俺のこと知ってるんですか?」
「知ってるよ」
「なにかご用ですか」
「悪いけど、こないだ聞こえちまったんだよな」
「なにをでしょうか?」
「おまえ、アイちゃん口説いてただろ。あんまりおまえの口がべらべらよく回るんで、呆れ半分で聞いてたんだけど、ふられたんだよな」
「はっきり言わないで下さい」
「はっきり言ってそうなんだろ?」
 そうですよーだ、と俺は空を見て答えた。
「なのにまた性懲りもなく女子部に出没しては、あわよくばアイちゃんを口説こうとしてるな。懲りない奴だね。ふられた女の子と顔を合わせるのは気まずくないか?」
「ぜーんぜん。そんなもん、気まずがってたら恋人なんかできません」
「そういうもんか」
「そうです。女の子には、いやよいやよもいいのうち、って場合があるんです。押して押して押しまくれば、なびいてくれることもある。俺はアイちゃんの髪をそよがせる風になって彼女に突撃し、たとえ何度玉砕しようとも、めげずたゆまず倦まず押し続ける。いつかはきっと、を信じて……」
「よく回る口だなぁ」
「もっともっと回りますよ」
 では、俺の得意技をお聞かせ致しましょう。
「オブラディオブラダアブラカタブララミパスラミパスルルルル
 サラガドゥラメンティカブラビビデバビデヴゥ
 青パジャマ赤パジャマ黄パジャマ茶パジャマ青パジャマ赤パジャマ黄パジャマ茶パジャマ
 生麦生米生卵生麦生米生卵生麦生米生卵
 東京特許許可局東京特許許可局東京特許許可局」
「……もういいよ」
「東京特許……もういいんですか。まだまだできるんだけどな」
「わかったからもういい」
 はあ、疲れたって顔で本庄さんが言うので、俺は話を変えた。
「俺は口にだけは自信があります。喋りにしても歌にしても口でしょ? 俺は口で勝負が身上なんです」
「誰かみたい」
 女子部室から出てきた女性が、唐突に口をはさんだ。
「ああ、失礼。三沢くんでしょ? 私は山田美江子。女子部の三年生だよ」
「おー、これはこれは山田先輩、三沢幸生と申します。以後よろしくお願い申し上げます」
「はじめまして、じゃありませんけど、こんにちは」
「はーい、本庄くん」
 我が合唱部は男子部と女子部に分かれているので、女子と口をきく機会はそう多くはない。俺は始終女子部にも顔を出して、人気者になっていたらしいのだが、山田さんとも話すのは初だった。山田さんを知ってはいたが、彼女も当時はあまり目立たないタイプだったのだ。
「山田先輩も俺を知ってる? 感激ですっ」
「そりゃ知ってるよ」
 なんともかんともよく喋る、その一点だけで目立ってるし、女子の間でも有名なんだからね、と山田さんは言った。
「立ち聞きする気はなかったんだけど、三沢くんのその高い声でオブラディオブラダァ……なんてやってると、いやでも聞こえちゃう。女子部での噂の意味がよくわかったよ」
「いやいや、光栄です」
「そう出るわけね」
 女子部で噂になってるなんて、これ以上光栄なことがあろうか。俺は山田さんにとびきりの微笑を見せてから、ところで、と質問した。
「誰かって誰ですか?」
「男子部にいるのよ。私は一年のときから彼とは友達なんだけど、三沢くんみたいに言うひとがいるの。俺は口で勝負が身上だ、シンちゃんみたいに腕力で勝負だなんて野蛮なのは愚の骨頂だ、ってね」
「シンちゃん?」
「本庄くんは知ってるよね 三沢くんだって知ってるはずだよ」
 うーん、俺の目はかなり女子部に向いてるからなぁ。そりゃあ男子部員は全員顔と名前を一致させてはいるけど、姓は知っていても名前までは知らなかったりする、シンちゃんって誰だ? 首をひねっていると、本庄さんが言った。
「もちろん知ってますよ」
 はじめまして、じゃありませんけど、と本庄さんは山田さんに言っていた。つまりこのふたりはそれなりに親しいと。誰か、だとかシンちゃんだとかいうのも、本庄さんは知っているのだろう。あとから問い詰めようと俺は決めた。山田さんはミステリアスな笑みを浮かべて言った。
「三沢くんとその誰かは気が合うか、もしくは思い切り牙を剥き合うかのどっちかだね。どうなるかなぁ」
「?」
「それとね、いやよいやよもいいのうち、なんてのはまちがいよ。三沢くん、若いね」
「??」
 謎の言葉を残し、山田美江子さんは立ち去った。
「山田さんは若くないのかな。えーと、本庄さんは本橋さんや乾さんとは親しいんですか」
「それほどでもないけどな」
「一年ちがいでも先輩面されるのに、二年もちがうと近づくのもむずかしいなぁ。いや、本庄さんが先輩面してるってわけではないんですよ。本庄さんはバイトはしてます?」
「してるけど」
「金、持ってますよね」
「なんだよ、強請りか」
「人聞きの悪い。俺、先輩を立てるってのはおごってもらうしか知らないから」
「……ふられたから自棄酒でも飲みたいってのか。俺は未成年だ、おまえもだろ」
「自棄コーラでいいです」
「コーラだったらおごってやるよ」
 きっちりと俺のペースに巻き込んだ本庄さんとは、その日以来親しくなった。シンちゃんとは本橋真次郎さん、山田さんの言った誰かとは乾隆也さんだと本庄さんが教えてくれ、俺は、おおおーっ!! と叫んだ。
「……三沢、なんという声を出すんだ。おまえの声ってのはこう……なんていうのか……」
「声なんかどうでもいいですよ。そっか、本橋さんと乾さんですね。あの、本橋さんと乾さん」
「そうだよ。あの、って言われるほどの先輩たちだよな」
 最初から興味は持っていたのだが、その日以来、本橋さんと乾さんにはいっそうの興味が湧いた。このおふたりは一年生のとき、ちょうど今の俺くらいのころに、当時の男子部キャプテンだった高倉大先輩に目をつけられ、先輩たちを差し置いてコンサートでデォオを組めと命令された。
 可愛がられ蹴飛ばされ殴られ……なのかどうかは知らないけど散々にしごかれ、あっちこっち連れ回されてもみくちゃにされ、そのしごきと愛に応えて生来の歌唱力を磨き、現在に至っていると聞いた。今はまだもうひとつ上がいるけれど、本橋さんと乾さんが四年になったあかつきには、彼らを抑えられる者は皆無になる、と、伝説だか実話だか怪しくなくもない話が、合唱部には流布していたのである。
「本庄さん、紹介して下さいよ」
「紹介ったってなぁ……俺もそんなに親しいわけでもないし」
 なにやら遠い目をして、本庄さんは追憶にふけっているようにも見えたが、そのうちにな、とか言ってはぐらかした。
 友達は合唱部以外にも大勢いた。単なるガールフレンドだったら、女友達も大勢いた。けれどやっぱり、やっぱりなのかどうか知らないけど、合唱部の仲間たちともっとも深くつきあった。アイちゃんにふられてがっくりはしていたけれど、俺の熱意が向かうべき新鮮なイベントに向かって、合唱部が始動しようとしていたあの夏、女の子は一時忘れて、俺は歌に生きるぞ、と決意していた。
 夏休みには合唱部のイベントが開催される。実力者の先輩たちがソロやデュエットで出演し、合唱もある。一年生は全員で混声合唱をやるというのが例年の決まりごとなのだが、新入生男子の中に素晴らしく高い声を出す奴がいて、俺ははじめて彼を意識したのだった。
「……ふひゃあ、木村? おまえの声ってけたたましいほど高いんだな」
「けたたましいのはおまえの声だろ。なんつう声だ。おまえは声だけ女か」
「のっけから喧嘩腰になって、どうしたの? 俺の声って女? そんなら女子部に行こうかなぁ。ソプラノは無理だろうけど、アルトパートだったらやれるよな。うんうん、ありがとう、木村くん、女子部に行ってくるよ」
「待て。冗談だ」
 か細い腕を伸ばして、木村章は俺の行く手を阻んだ。
「冗談にまぎらわせなくてもいいじゃーん。俺はマジだよ。女子部に入ったら俺の声はさらにきわだつ」
「男子部にいても際立ってるよ。おまえの名前は三沢幸生だよな。俺は最初からおまえがさ……いいけど」
「なに? 俺が気になってしようがなかった? 高い声のライバル? ふーむ、顔もライバルになりそうだな」
 小柄で細いところは俺と似ている。が、改めてよく見ると、彼はなかなかに綺麗な顔をしていた。悔しいから顔は意識からシャットアウトして、俺は言った。
「木村はなんとなく他の奴らと雰囲気がちがうね。その雰囲気はなんだ? おまえの音楽のルーツはなに?」
「おまえは?」
「少年合唱団」
「……俺はロック」
 道理でっ!! と同時に叫び、なんだよ、おまえの声は、おまえの声こそ、とこづき合って、じきに章、幸生、と呼び合うようになってほどなく、俺は章をキャンパスで本庄さんと小笠原さんに引き合わせた。小笠原さんは本庄さんと同年で、本庄さんの親友だったのだ。
「実はさ」
 小笠原さんが話してくれた。
「ちょっとしたことがあって、一年のときに、シゲと俺は乾さんのアパートに招いてもらったんだ」
「ちょっとしたことって? 乾さんのアパート? いいないいな。だったら本庄さん、乾さんと親しいんじゃないんですか。ずるい、嘘ついた」
 ふくれてみると、本庄さんは苦笑いした。ちょっとしたこと、についての話はしてくれず、本庄さんは言った。
「それっきりだよ。だけど、あの日は楽しかったなぁ。な、ヒデ、本橋さんと乾さんのデュエットは最高だったよな」
「うん、感動的だったよ」
「デュエットも聴かせてもらったんですか。ずるいよぉ。俺も生で聴きたい。章も聴きたいだろ」
「別に」
 斜にかまえた部分があるのもロッカーの特質なのか。章は気のないそぶりで答え、小笠原さんが言った。本庄さんはバス、あとの三人はテナーだ。
「本橋さんと乾さんは、声がまるきりちがうだろ」
 章と俺は小笠原さんの言葉に耳をかたむけた。本庄さんも無言で聞いていた。
「歌うと本橋さんは低くて甘い声だ。乾さんは独特の高い声だよな。乾さんは綺麗な高い声も出せれば、迫力のある低い声も出せる。本橋さんにはファルセットで高い声も出せる。幾種類もの声がからみ合う、あのふたりのデュエットは絶品だよ。聴いてて感動しちまった。聴かせてもらったときになにか言った覚えはあるけど、言葉なんてあの歌の前では褪せる。上っすべりするばかりだ。三沢だったら上手になにか言えるか?」
「俺は女の子にならいくらでも喋れるけど、三年生は怖いです」
「俺たちは怖くないんだな」
「そのようだな」
 二年生のふたりが言い、いや、あのその、と俺が言葉を探していると、ふと、章が言った。
「上手すぎるのかな。本橋さんや乾さんって、同じ合唱部だってのに、二年先輩だからってのもあるけど、別世界の住人みたいに思えません?」
「木村はなかなかうまいこと言うな」
 小笠原さんは笑い、俺は応じた。
「こいつも口は俺に負けてませんよ。顔は俺が勝つけど」
「いやぁ、三沢、おまえ、顔は木村に負けてる」
「本庄さんは言いにくいことをずばっと言いますね」
「顔なんかどうでもいいよ」
 顔のいい奴がそんなこと言うと、顔のよくない奴には反論のしようがなくなるんだよ、と章に言ってやりたかったのだが、章はこころなしか元気がなかった。あとになって知ったのだが、当時、章はロックバンドと大学の板挟みで悩んでいたのだ。
「なあなあ、章、本橋さんと乾さんに紹介してくれる気は、本庄さんにも小笠原さんにもないみたいだろ。俺たちに紹介するほどの仲でもないみたいだよな。そんなら、俺たちふたりで果敢にアタックしようぜ」
 先輩ふたりと別れて章とふたりになると、俺は言った。
「別に、なんて言ってたけど、ほんとは聴きたいんだろ? アタックしよう。お近づきになろう」
「……男にアタックしてなんになるんだ」
「男ったって、男だけど……男であってただの男ではない……ただの男か。でも、歌はそんじょそこらの男じゃないんだ、あの先輩たちは。俺もすこしは聴いたことがあるけど、発声練習だけでも只者ではなかった」
「発声練習なんかでなにがわかるんだよ」
「わからないから、生で聴きたいんだよ。おまえもいてもいいけど、俺だけのために、あの本橋真次郎とあの乾隆也が歌ってくれる。想像しただけで……ああん、素敵。ユキちゃん……気絶しそう」
「バカじゃねえのか。それじゃ熱烈ファンだな」
 白けたふりはしているものの、章の心もまぎれもなく動いていると見えた。章は変な目で俺を見て言った。
「おまえってハートも一部女か? そんなはずはないな。ハートの一部が女だって奴が、こんなに女好きなわけないもんな」
「そうだ。俺は女の子が好きだって点は、ごく普通の男だ」
「勝手に開き直ってろ。で、どうやってアタックするんだよ?」
「どうやろうか」
 具体的にはなにも考えていなかったので、いい知恵を出そうと努力していると、章が俺の袖を引いた。
「本橋さんと乾さんがいる」
「おー、俺たちは本橋さんと乾さんに縁があるんだ。運命のお導きだよ。章、尾行しよう」
「……オーバーな奴」
 ぼやきながらも、章は俺についてきた。あとをつけていくと、本橋さんと乾さんは合唱部室の裏手の芝生に腰を下ろし、乾さんがため息をついた。
「東京の夏は暑いな。金沢も暑いけど、暑さの質がちがうよ。夏休みになったら合宿で海に行くけど、遊びにいくわけじゃないし、そのあとのイベントのための特訓漬けだろ。今年は俺たち、後輩の指導もしないといけないんだよな」
「内容とは裏腹に、おまえ、嬉しそうだな」
「そう聞こえる? なんだっていいから歌えるのは嬉しいけど、金が……」
「金欠か。いくらかだったら貸せるぞ」
「いらないよ。借金は俺の主義に反する。自力で稼ぐ」
「そんな時間、あるのか」
 時間が足りない、引いてはバイトが満足にできない、引いては金がない、そこが乾さんの悩みの種であるらしい。章も俺もこっそりうなずき合った。地方出身者は誰しも、親元を離れて金のない苦労を味わっているものである。章が小声で言った。
「おまえなんか横須賀なんだから、家から通えばいいだろ」
「稚内から通うよりは現実的だけど、やーだよ。妹たちがうるさくて勉強できないんだもんね」
「おまえ以上にうるさいって、どんな妹だ」
「俺は寡黙な男じゃん」
「……勉強? おまえは勉強しに大学に入ったんじゃないだろ。ナンパのために……」
「歌と勉強のためだよ。章、おまえこそうるさい。おまえが騒いでるから……ほら、なんかもめてる」
「おまえにだけは、うるさいとは言われたくないんだよ」
 こちらはもめるのを中断したのだが、本橋さんと乾さんはもめはじめていた。
「いやだと言ってるだろ。親父にもおふくろにも頼りたくないんだ。学費を出してもらうのもいやだけど、それだけは致し方ないから目をつぶるとしても、生活費や合宿の費用は自力で稼ぐよ」
「俺に借金するよりは、親に借りるほうがいいだろ。乾、意地を張りすぎると身体をこわすぞ」
「そんなにやわじゃねえよ。肉体労働をやる。道路工夫のバイトを募集してたな。あれをやるよ」
「やめとけ。そんなお嬢さんみたいな身体して、おまえになんかやれるもんか」
「ほお、言ってくれますな」
「なんだよ、やんのか」
 お嬢さんとは言いすぎだが、本橋さんと比較すれば、乾さんはすんなりスレンダーな身体つきをしている。本橋さんにしてもごついというほどではないのだが、乾さんよりはひと回りたくましい。本橋さんは腕をまげて力瘤を誇示してみせた。
「おまえもやってみろ。この筋肉がおまえにあるのか」
「あるよ」
 しかし、乾さんの力瘤は、本橋さんの半分ほどだった。
「見比べてみろよ。その腕で肉体労働なんかやれるか」
「やってやれないことはないんだよ。やると言ったらやる。ほっとけ」
「この野郎、俺がこれだけ……」
「これだけ言ってやってるのに、ひとの親切がわからない奴だと言いたいのか。ひ弱な俺を心配して言ってくれてるんだな。ありがたくて涙が出そうだよ。親切もあるんだろうけど、おまえはてめえの筋肉をひけらかしたいだけじゃないか。男性誇示ばっかりやってると、女の子にもてないぞ。そんなに筋肉が好きだったら、ボディビルダーにでもなったらいいんだ。力自慢の筋肉バカになっちまえ」
 うっ、と本橋さんは言葉に詰まり、俺は山田さんの台詞を思い出した。口で勝負が身上の乾さん。まさしく俺に似ている。乾さんは無言になった本橋さんを尻目になおも早口でまくし立て、本橋さんの表情がどんどん険悪になっていった。本橋さんの手がげんこつの形になって、ぐぐぐーっと握りしめられていくのを、章と俺は固唾を呑んで見守っていた。
「やろうっての? 殴っていいよ」
「……そっちからかかってこい」
「やだね」
「腕力でだったら、おまえは俺に必ず負けるもんな。この口先男」
「喧嘩が強いなんて、現代ではなんの価値もない。口のほうがはるかに役立つ」
「この野郎、黙れ」
「そのこぶしを引っ込めろ」
 しばし睨み合っていたふたりだったのだが、先に目をそらしたのは本橋さんだった。オス猫同士の喧嘩は弱いほうが先に目をそらす。すると、今のは乾さんの勝ちなのだろう。人間も同様なのかどうかは、腕力を使っての喧嘩経験が限りなくゼロに近い俺にはよくわからないのだが、やはりこの現代では、乾さんの戦法が勝つのだ。俺も口に磨きをかけよう。
 そのためにも乾さんと仲良くなりたいなぁ、と思っていたのだが、こんな状況で出ていったら、立ち聞きしてたのか、この野郎、とばかりに、一旦はおさめた本橋さんのこぶしが、俺の顔で炸裂するかもしれない。出ていかないほうがいい。何分かの沈黙のあとで、本橋さんが言った。
「だったらよぉ、俺もいっしょにやってやるよ。道路工事のバイト」
「いらないよ。俺はひとりでやる」
「……この頑固者。そんなら俺はなにをすればいいんだ」
「歌おう」
 口笛が聞こえてきた。乾さんの口が奏でている。乾さんの目が本橋さんを促している。記憶にあるメロディだ。拍子抜けしたような顔で乾さんを見ていた本橋さんの口も動き出し、章が言った。
「ラヴ・ミー・テンダー」
「邦題は「優しく愛して」だよな」
「……評判以上だな。本橋さんって……こんなに甘い声……してるのか」
「ソロははじめて聴くよ、俺。うわあ……章、黙れ」
「黙るのはおまえだ」
 適当な言葉が口から出てこないだなんて、俺らしくもない。らしくなさすぎる。けれども、俺はまだ十八なんだ。感動しすぎると、感情が言葉にならないものなのだ。それほどにこの歌は……なんと言えばいいのかなんて、なんにもわからない。なんにも言えない。
 胸のうちでなにかが揺れていた。俺の心にある湖のおもてがさざめいてざわめいて、湖底からなにかが浮かび上がってきそうで、つかまえられそうでつかまえられなくて、じれったくてもどかしくて……
 口笛がやむと、乾さんも本橋さんの歌声を追って歌い出した。輪唱も見事に決まっていて、感動が百倍になった。本橋さんの甘く低い声、抑え気味に歌う乾さんの優しく細く高い声。こんなにもすごいシンガーが、うちの大学にいるんだ。俺もいつかきっと……いつかはきっと……追いつきたい。それから追い越せるか? 追い越せないまでも並びたい。章、おまえもそう思うだろ? そんなつもりで章の肩を抱こうとしたら、邪険に振り払われた。
 
 
2

果敢にアタックするなんて言ったくせに、その日は念願がかなっただけで満足してしまった。夏休みの合宿では本橋さんと乾さん、小笠原さんや本庄さんや山田さんの様子を観察していたりもしたから、実は五人そろって親しいのだろうと感づいていたのだが、なぜだか本庄さんたちは本橋さんたちに俺を改めて紹介してくれない。
 なぜ? なぜ? 俺がうるさすぎるから? 悩んではいたのだが、あのころの俺には先輩たちに対する遠慮がありすぎた。ちょっとした会話はかわしていたものの、三年生の本橋さんたちとはそうは親しくなれないままに時がすぎ、冬になったころ、俺はアイちゃんと仲良しだったサエちゃんに尋ねてみた。
「章もこのごろよく合唱部をさぼってるけど、アイちゃんはどうしたの? さぼり?」
「アイちゃん、病気なの」
「病気?」
「若年性の癌だとか……」
「嘘だろぉ」
「嘘でこんなこと言うわけないじゃない」
 嘘だと言ってしまった俺に気を悪くしたのか、彼女は走り去ってしまい、詳しい話を聞けなかった。ふられたときとは比べものにもならないショックに打ちのめされて、この口ではどうしようもない事実に直面して、俺はなんの行動も起こせなかった。
「アイちゃん、明日お葬式」
 最上級生になった本橋さんが男子部キャプテンに就任し、乾さんが副キャプテンとなり、ロックバンドに専念すると章が大学を中退してしまって、それから間もなくだった。サエちゃんが俺に告げて泣いた。
「若いから……病気の進行が早かったんだよね。お見舞いになんか来てほしくない、ってアイちゃんは言ってたから、私、一度もお見舞いにいかなかった。どこかでたかをくくってたのかもしれない。アイちゃんが死ぬわけないじゃない、私たち、二十歳にもなってないんだよ、って。会いにいけばよかった。薬の副作用で髪が抜けちゃったりして、友達にそんな姿を見せたくないの、ってアイちゃんは電話で言ってた。そんなの……」
「サエちゃん……」
「三沢くん、アイちゃんが好きだった?」
「昔ね」
 ふられたショックからかと思ってたんだけど、あれから俺は恋をしてない。
「かわいそうだよぉ、アイちゃん。三沢くんもかわいそうだね」
「サエちゃんもね」
 自然にサエちゃんと抱き合って泣いた。
 もしかしたらもしかして、アイちゃんは身体の変調に気がついていたのかもしれない。だからこそ俺に、友達でいましょうと言ったのかもしれない。友達にもなれずじまいだったじゃないか。俺も恋人でなきゃいやだなんて我を張らずに、友達づきあいすればよかった。
 アイちゃんの葬儀には先輩たちは参列したのだが、俺は行かなかった。俺はアイちゃんの友達ですらなかったんだ。なのに、お葬式なんかに行ったら泣いてしまいそうで、行こうかどうか迷ったけど踏ん切りがつかなかった。数日後、活動のない日なので誰もいない男子部部室でぼんやりしていたら、ドアが開いて乾さんが入ってきた。
「よ、三沢」
「あ、は、俺の名前、知ってらっしゃるんですか」
「知ってるに決まってるよ。おまえは有名だもんな。どうした、間抜け面して」
 なんとかして近づきたい、なんて野望があったのだが、そんなことはどうでもよくなり、気がつくと俺は言っていた。大好きだったアイちゃんがいなくなっちゃった、この世のどこにもいなくなっちゃった、と。
「アイちゃんとつきあってたのか。ご葬儀には来てなかっただろ」
「乾さんは参列なさったんですね」
「合唱部代表のひとりとして、弔問に行ったよ」
「俺、俺は行けませんでした」
 だって、こんなだったんだもん、ここ数日頭を占めていた想い、病気に気づいていたアイちゃんが、俺がつきあってくれと言ったのを断った理由は……と、俺は乾さんに話した。
「妄想だ、そりゃ」
 つめたく、乾さんは言い捨てた。
「てめえに都合のいいことばかり考えてる」
「そうですかね」
「そうだよ。おまえの気持ちはわかるけど、そんなのはドラマの中だけの話だ」
「乾さんはアイちゃんと親しかったわけでもないんでしょ? まさか、乾さんがアイちゃんの彼氏だったとか?」
 だったら許さない、って、なにを許さないのかわからないけど、俺は乾さんを睨み上げた。乾さんが俺よりだいぶ背が高いのも悔しかった。
「ちがうよ。アイちゃんはただの後輩だ」
「ただの後輩だなんて言わないで下さい」
「大事な後輩だ。これでいいか? 遺影のアイちゃんは可愛かったよ。おまえが好きになったのも無理はない、純情可憐ななでしこみたいな女の子だったな」
「なでしこってどんな花だか知らないけど、乾さんもアイちゃんを好きだったんですか」
「後輩はみんな好きだ。おまえもな」
「あんたなんかに好きになってほしくないよ」
「それはそれはご無礼をば」
「……可愛い後輩が死んだってのに、笑うな」
 八つ当たりなのは承知の上で、俺は言った。
「口では大事なとか言ってるけど、あんたにとったらアイちゃんなんかどうでもいい存在だったんだろ。俺にはそうじゃなかったよ。ふられてとりあえずは諦めて、なんとなく遠ざかって、聞いてみたら病気だっていわれて、どうにもこうにもしようがなくて……なんだよっ、ふざけんなよっ」
 にっちもさっちもどうにもブルドッグ? こんなときにそんな歌、うたうか、普通?
「妄想だっていいじゃないかよ。俺はそうやって、アイちゃんを綺麗に……そんな言い方しなくても……」
「どんな言い方をしようと、事実は事実だよ。アイちゃんはいなくなってしまったんだ」
 わかってるけど……だからこそ……時として想いが言葉にならないと知るのは、成長の過程なのだろうか。頭の片隅に冷静な俺もいたのだが、そいつを押しのけて俺は叫んだ。
「ばっか野郎っ!!」
「すげえ声だな。耳がキーンとなった。耳鳴りが……」
「どこまでもふざけやがってっ!!!」
 なんだ、今の声は? とドアが開いた。本橋さんだった。
「……三沢か。乾、こいつと喧嘩してたのか?」
「喧嘩を売られてたところだよ」
「原因はなんだ?」
「三沢、話すか?」
「喧嘩なんかしませんよ。副部長殴ったら退部でしょ」
「退部させるか、キャプテン?」
「退部させるにゃもったいない人材だよな。乾が悪くておまえが殴りたいんだったらいいぜ。俺が許す。存分にやれ」
「俺が悪いんだよ、なぁ、三沢?」
 ことここに至ってやや読めてきた。まさか本橋さんとぐるではないだろうが、乾さんは俺に鬱憤晴らしをさせてくれようとしているのではなかろうか。
「……山田先輩に聞きましたけど、乾さんって口で勝負の男なんですってね。俺も同類だから、腕力にはからっきし自信がありません。殴り合いでは鬱憤は晴れません。そういうことは大人になってからはしたことないし」
「大人? 誰が?」
「あのねぇ、乾さん、からかうのもいい加減に……」
 そこで大きく息を吸い込み、俺は再び叫んだ。
「しろーっ!! ……ちょっとだけすっきりした」
 目を見開いて俺を見、お互いを見、してから、ふたりの先輩は豪快に笑い出した。笑いはしたもののじきに真顔になって、乾さんが言った。
「おまえが有名だってのにはいろいろあるんだけど……」
「よく喋る奴だからでしょ」
「それだけじゃない。な、キャプテン?」
「おまえのその声、その歌だ」
 そんなに真面目くさって見つめられると、どぎまぎしてしまう。俺もふたりを見つめ返した。
「本橋さんも乾さんも、俺をひと目見て、三沢って名前を呼んでくれた。退部させるにゃもったいない人材? 本気にしますよ」
「しろよ」
「木村ももったいなかったよ。この上おまえにまでやめられたら、我が合唱部の重大なる損失だよ。なぁ、シンちゃん?」
「その通り」
「褒め殺しですか」
「そう聞こえるか」
 怒っていたので意識の隅に押しやられていたアイちゃんが、褒め殺し……死ぬ、と連想したら戻ってきた。俺はたまらなくなって泣き出した。どうにも我慢できなくて、ガキみたいに泣く俺を、なんにも言わずに先輩たちは見守っていてくれた。
 そのあとでサエちゃんとつきあったりもしたけれど、俺にはサエちゃんよりも本橋さんと乾さんが関心の的になって、サエちゃんにはやがてあえなくふられた。女の子とは喧嘩しない主義だったのに、気持ちがちぐはぐにばかりなって、サエちゃんとはよく喧嘩した。青春を謳歌していたはずが、暗黒面も忍び込む、そんな時期だった。


「ナンバースリーは徳永さんなんだよな」
「徳永さんも三年だろ。四年にはいないのか」
「去年の四年の金子さんってたいしたひとだったらしいけど、今の四年生はなぁ……渡辺さんも溝部さんも……だし……」
 合唱部の部室で、一年生男子たちが集まってわいわい話していた。一年生のナンバーワンは? と俺が言うと、みんなして首をかしげた。
「いるじゃん、ここにいるじゃん」
「……おまえか?」
「三沢がナンバーワン? 声の高さじゃ木村がナンバーワンだろうけど、おまえが一番なのはガキっぽさだけだよ」
「言ってなさい。ああ、そう言ってなさい。いずれは俺がナンバーワンになってみせるんだから」
「ばっかじゃねえの」
 みんなしてげらげら笑う。俺は立ち上がって言った。
「なんであろうともだね、俺はそのポジションでのナンバーワンになりたいんだよ。でないとやってる意味ないじゃん? ナンバーツーだってやだね。やる以上はトップを目指す。エースを狙う。サーブ、スマッシュ、ボレー、ベストを尽くせ、エースエースエース、エースを狙え~~」
「なんだ、その歌?」
「だから、エースを狙うの。俺たちはテニスやってるんじゃないけどさ、合唱部のトップ、エースの座を目指すんだ」
「キャプテンになりたいのか、おまえが?」
「甘いね、きみは。キャプテンなんて低い低い。俺は本橋さんと乾さんをも越えてみせる。ナンバースリーの徳永さんなんてのはさらに低い。ちょちょいのちょいで徳永さんは飛び越えて……」
「三沢、まずい」
 突如として全員が黙り込み、なにが起きたのかと思ったら、噂の主のナンバースリーが部室に入ってきたのだった。
「徳永先輩、こんにちはーっ」
「……俺がなんだって?」
「へ? 僕、なにか言いました?」
「表に出ろ」
 うっきゃあっ、やばやばやばっ、聞かれてた。殴られるのかな、と半分以上びびっていたのだが、一年生たちはそっぽを向いていて援護射撃もしてくれない。覚悟を決めて徳永さんについて外に出た。
「一年の奴らにも言われてるのか。俺はナンバースリーか」
「すみません、口がすぎました」
「そう思ってるから口に出すんだろ。三沢だな」
「僕の名前をごぞんじで?」
「知ってるよ。ガキみたいな高い声でぴいちくぱあちくさえずりっ放しの軽い奴だって、おまえが入部してきたときからみんなが言ってる。深い考えもなく、頭で考えた台詞をぽんっと口に出すんだろ」
「頭で考えるより前に出てるっつうか……」
「そこが乾とおまえの差だな」
「乾さん?」
 おまえなんかに言ってもしようがない、と徳永さんは言い捨てた。
「俺のいないところで言っても、遠吠えにもなりゃしない。吼えてみろ。さっき言った台詞を俺の前で繰り返してみろ」
「はい。僕は徳永さんも本橋さんも乾さんも越えられるような、合唱部のエースを目指します」
「合唱部なんてちっちゃな世界のエースでいいのか」
「まずはそこですよ。その後は……まだそこまで考えてないんですけど……すみません。ほんと、深い考えはないんですよね。俺、大学に入学して間もないんですもん。将来よりも目先で手一杯です。将来についてはもうすこししてから徐々に考えます。徳永さんは三年生なんだから、卒業後の進路についても考えてらっしゃる?」
「おまえに言う必要はないだろ」
「ありませんね。すみません。だけどさ……」
「だけど?」
 剣呑な目つきで睨まれて、あとずさりしそうになりながら言った。
「徳永さんがナンバースリーだってのは、俺もはじめのころに聞きました。聞いて見てたら、たしかにそうかもな、って思えてきました。そんなの潔しとはしてないんでしょ? 徳永さんはトップを目指さないんですか」
 目の光がものすごく強くて、正視するのがつらかったのだが、さらに言った。
「本橋さんと乾さんがいるから運が悪かった? 運が悪いですむ問題なんですか。合唱部なんてちっちゃな世界なんでしょう? そんな世界でナンバースリーに甘んじてるだなんて、俺には耐えられない。俺は先輩たちをも越えてみせます。同学年に俺よりも上だって奴がいたら、今はまだわからないし、いないと信じてるけど、いたとしたらそいつも越えます。そのつもりでやらなくちゃ」
「おまえの口は乾よりは幼いけど、いっぱしのもんだよ」
「褒めてもらってます?」
「褒めてねえよ、馬鹿野郎。おまえみたいな奴は大嫌いだ」
「……嫌われるってのは、黙殺されるよりはいいのかも」
「……こりない奴だな」
「ありがとうございます」
 やってらんねえよ、と吐き捨てて、徳永さんは歩み去った。
「嫌われちゃったかぁ」
 部室に戻る気になれなくて、俺は歩き出した。歩き出したら乾さんに出会った。
「どうした? 浮かない顔してるな。なにか悩みがあるのか」
「……嫌われるってのは、おまえなんかなんとも思っちゃいない、って言われるよりはいいんでしょ?」
「んん? 誰かに嫌われた? 女の子にか」
「女の子に嫌われたら地の底まで落ち込みますけど、相手は男だからいっか。ああー、でも、僕、この口を悔やんだのってはじめてかも」
「口? ああ、……口は災いのもととも言うけど、口は世渡りの武器にもなるんだよ。自分の口から出す言葉には細心の注意を払うべきだけど、ぽっと飛び出した言葉に真意があらわれる場合もある。なんてむずかしいんだろうな」
「乾さんでも?」
「俺をなんだと思ってるんだよ。たかが二十歳の若造だぜ。悩め。悩んで悩んで生きるのが若者だ。俺も悩もう」
 それだけの会話だったから、後に尋ねてみたところによると、乾さんは覚えていないらしかった。合唱部の三年生ともなると、後輩と立ち話をしたのをいちいち記憶にとどめてはいないのか、忘れたふりをしているのか。俺には読めなかったのだけど。
 たったの一年間でさまざまなできごとがあった。好きだった女の子は空の上に行ってしまい、親友になれたのかな、と思っていた友達も中退して消えてしまい、そうして二年生になったある日、いつしか尊敬する先輩だと心に決めるようになっていた、乾さんと部室で話していた。
「高校時代の初詣では毎年、神さまにお祈りしてたんですよ。乾さんも金沢の神社に行ったんでしょ?」
「高校までは行ってたよ」
「彼女と?」
「おまえのお祈りってなんだ?」
 高校二年の初詣には、混雑にまぎれて麗子さんと手をつないでお参りしたっけ。俺にもたった一度、彼女と呼んでもかまわないかもしれない、ひとときの相手との初詣経験があるけれど、乾さんはきっと何度もあるのだろう。けれど答えてはくれないので、諦めて言った。
「背が高くなりたーい」
「ああ、それね」
「それってね。乾さんは俺より十センチ以上高いんだから、高校のときだってちびじゃなかったんでしょ?」
「小さくはなかったな」
「ふんだ。そんなひとには理解できなくていいんです。高校時代は俺の切実なる願いだったんだからぁ。思い出すと泣けてきますよ。あれだけ毎年お願いしたのに、俺は今でもちびだもん。もう伸びないもん。いいんだもん。横須賀の神社の神さまは、最後のお願いだけは聞いてくれるかな。輝美も高校生になったから、あいつももう伸びないかな」
「輝美ちゃんがおまえより大きくならないようにってか? おまえんちはご両親も小柄なんだろ。遺伝ってのはあるみたいだよ」
「乾さんのご両親は?」
「親父は俺よりやや低い。おふくろはだいぶ低い。おふくろは小柄なほうだな」
「俺の親父は俺より背が高いです」
「まあ、そういう場合もあるかな」
 せめて本庄さんくらいにはなりたかったなぁ、と、今でも俺は思う。目標身長は乾さん程度だったのだが、本庄さん程度も今さら無理だろうから、これも諦めるしかないのだろう。ちびなのは俺の宿命なのだから、受け入れるしかない。
「泣けてくるっていえばね……古い話だからしてもいいかな。俺の初体験の話し、聞いてくれます?」
「したいんだったらしろよ」
 こんな話には他の男は興味津々になる。乾さんはクールなのは、我が身でいやというほど体験しているからではないのだろうか。小笠原さんも言っていた。本橋さんも乾さんももてもてなんだぜ、って。
「俺だって高校時代には、ナンパに成功したこともあるし、女の子に告白されたこともあるし、バレンタインにチョコもらったことも何度もあるし、三沢くんって可愛い、なんてのはいっぱい言われたし、もてなくもなかったんですけどね。いっぷう変わってるんだろか。ありがちなんだろか。そういう経験をしたもので、ごく健全な高校生の男女交際はしたことがないんです。もったいなかったかなぁ、今になって惜しくなってきた。高校生の健全なる異性交遊なんてのは、もう二度とできないじゃん」
「そりゃそうだ。高校時代は二度と戻らない。いっぷう変わってる? ありがち? 人妻と恋でもしたのか」
「まさかそこまでは……やってみたいけど……」
「馬鹿、やめとけ」
「なんでなんで? 経験あるんですか」
「ないよ」
 なにやらいやそうな顔をする乾さんに、俺は十六歳後半のできごとを語った。
「妹の雅美の家庭教師をしてくれていた女子大生。麗子さんっていう長身美人だったんです。長身ったって、そのころの俺は今よりちっちゃかったから、女性としては中背よりちょっと高いくらいかな。おー、そんなら俺は背は伸びたんだ。三年間で五センチほど? 翔太は半年で五センチ伸びたって言ってたのに、成長ホルモンが足りないんですね、俺」
「そうかもな。で?」
「そうかもなって……他人ごとだと思って……他人ごとですけどね。で、話しを戻しますと、その麗子さんは俺が高一のときに、雅美の家庭教師として我が家に通ってきてくれてました。それから数ヶ月後に街角で再会して、俺はおねだりしたんです。下心なんかなかったんですよ。純粋に勉強を教えてほしいって頼んだんですよ」
 こんな美人に勉強を教えてもらえるなんて、雅美はいいなぁ、とは当時から思っていた。そんな麗子さんと再会して、ますます美人、とぽーっとなったのだから、幼い下心はあったのかもしれない。だってしようがないじゃん、そういう年頃だったんだから。内心でいいわけしつつ、俺は続けた。
「そしたら麗子さんは気軽に数学を教えてくれて、理数系は苦手の俺に他の勉強も教えてくれるって言ってくれて、ひとり暮らしの部屋に招いてくれました。それで仲良くなって、葉山へ泳ぎにいったりしてデートして……今でもわからないな。俺はデートだと思ってたけど、麗子さんは子供と遊んでやってるつもりだったのかもしれない。けど、そんなある日……ついにね。ありがちですか」
「ありがちなのかもしれないよ。おまえは楽しかったんだろ。いい思い出なんだろ」
「……複雑ですけどね。いい思い出と言ってもさしつかえはないかな。少なくともアイちゃんよりはね……」
「だったらいいじゃないか。今さら悩まなくてもいいよ」
「そうですよね。身長も過去の恋も、今さらも今さらだもんね」
 乾さんはたいしたことを言ったわけでもないのに、それで俺は吹っ切れた気分になった。乾さんに話してよかった、と息をついて、だから乾さんは俺にとっては今は……なんて考えて、これからも乾さんについていけたらいいなぁ、と漠然と考えていた。

 
3

合唱部でいちばん好きだった女の子は永遠にいなくなってしまい、いちばん好きだったわけではないけれど、いちばん仲のよかった男もいなくなってしまった。本橋さんや乾さんには名前を覚えてもらったけど、それがなにになる? 無常感なんて奴に浸っていた大学二年の俺だったのだが、夏休みなんだもの、ぱーっと遊びにいこうぜ、とゼミ仲間に誘われてやってきた海岸の夜だった。
 すぎてしまったことにばかり固執していてもしようがないじゃないか。章はどこかで元気にやってるさ。アイちゃんとは二度と会えないけど、章にはきっとまたいつか会えるさ。そんなふうに考えている俺は、はしゃいでいる友人たちから浮いていた。
 お決まりの花火の夕べだ。砂浜に打ち上げ花火を半分埋めて、男どもが火をつける。女の子たちはきゃあきゃあ騒ぐのを楽しんでいる。やだ、怖い、熱い、こっちに向けないでよっ、大丈夫だよ、わっ、爆発するぞーっ、なんだのかんだの、男女入り混じった大騒ぎに参加せず、俺はいくらか離れたあたりでぼんやり眺めていた。そうしていると、びっくりするほど高い女の子の声が耳に入ってきた。
「私にもやらせてよ」
「えー? 大丈夫? 怖くないの?」
「怖くなんかないよ」
 遊びにいこうと俺を誘ったくせに、女の子とばかり仲良くしている中西が、ほらほら、怖くないのぉ? と言って、その子に火をつけた花火を手渡した。
「こんなもののなにが怖いの?」
「気をつけないと火傷するよ」
「平気。きみこそ危ないよ。どいてどいて」
 悠然と花火を受け取った女の子は、怖くなんかないでしょ? みんなもこっちにおいでよ、と遠巻きに見ている女の子たちを手招きした。女の子たちはそれでもやっぱり、怖いよね、こっちに火花が飛んできたら怖いもん、と言い合っている。女の子たちを怖がらせて面白がっていた男たちも白けた表情になり、彼女も友人たちから浮いている様子に見えた。そこで俺は彼女に近づいていった。
「ねえねえ、きみの声ってすっげえ高いね」
「そう言うきみの声も高いね」
「俺、経済学部二年の三沢幸生。きみも経済? 俺を知ってる?」
「経済学部だけど、うちは人数多いから、いちいち覚えてないな」
 マンモス大学の経済学部といえば、中でもとりわけ学生数が多いのではないだろうか。俺も彼女に見覚えはなかった。
「ごめんね。俺もきみを知らないよ。なんて名前?」
「古久保和音、和音って書いて「かずね」って読むの」
 砂の上に名前を綴ってみせてくれた。ふるくぼかずね、古久保和音。ひらがなと漢字が並んでいた。
「和音ちゃんか。ワオンちゃん、なんて呼んでもいい? いい声だなぁ、ワオンちゃん。もっと喋ってよ」
「私の声がいい声? 三沢くんって耳がおかしくない? けたたましいきんきら声だのアニメ声だの、落ち着いて話しなさいだの、散々言われるんだよ。女の子だっていくらかは声変わりして大人の声になるっていうのに、私はぜーんぜん大人の声にならないんだから。三沢くん、どうかした?」
「……同志!!」
「どうし?」
「動詞じゃないよ。仲間って意味。ワオンちゃん、花火なんかどうでもいいからこっちこっち」
 合唱部に入り浸ってばかりいる俺は、ゼミ友達とのつきあいはそう深くない。よって彼らは俺の気性をよく知らないのだが、中西は多少は知っている。三沢がその気になっちまったよぉ、と中西がぼやき、その気ってなんの気? とあちこちから質問されているのをほっぽって、俺はワオンちゃんと勝手に決めた呼び名の彼女の手を取った。花火をしていた場所から遠ざかり、岩陰でワオンちゃんと向き合うと、俺は言った。
「俺もまったくその通りなんだよ。ワオンちゃんとおんなじ。男は女より顕著な声変わりをするだろ。俺もしたはずなんだけど、してないって言われる。けたたましいとかアニメ声だとかも言われる。だけど、きみのその女の子にしかあり得ない高い声と会話をしてると、俺の声が男らしく聞こえない?」
「聞こえない」
「……そおお? 俺の声はきみよりは低いよ。ワオンちゃんはなにかサークルに入ってる? 入っててもいいんだけど、合唱部にも入りなよ。きみの声ならコロラチュラソプラノだろ」
 話し声と歌う声は一致するとは限らない。高い声が出るからソプラノだ、テナーだと決められるわけではない。その程度の知識は俺にもあるが、歌声がテナーの俺は話し声も高い。話し声の高いワオンちゃんは歌声も高いはずだ。ここまで高い声は女の子といえども貴重だと思えた。
「ケイト・ブッシュってイギリスの女性シンガーがいるじゃん? 彼女の声がワオンちゃんみたいな感じなんだよね。惜しいなぁ、俺よりもっと高い声の男が、前は合唱部にいたんだよ。そいつは大学もやめちまったんだけど、章がいたらな。ワオンちゃんと章がデュエットしたらさぞかし……」
「私、歌ってあんまり興味ないんだよね」
「聴くのも?」
「うん。ケイト・ブッシュなんか知らない」
「知らなくても無理はないよ。昔のひとだから。だけどさ、きみの名前はワオンちゃんだろ。音楽に関わるにはぴったりすぎる名前じゃないか。その特殊な声を活用しない法はないよ。ワオンちゃん、合唱部に入って。夏休みが終わったら、俺といっしょに見にいくだけでも……ね?」
「考えとく」
 きっぱり拒否されなかっただけでもよしとしよう。勧誘に熱意を込めていたので、声にばかり興味があって姿かたちをよく見ていなかった。改めてしっかり見ると、けっこう好みのタイプだった。
「三沢がその気になっちまった……ってさ、なに言ってんだよ、中西は。俺は真面目にきみを合唱部に誘ってたんだよね。ワオンちゃんは考えておいてくれるんだよね」
「うん」
「それでは、その話は一旦ここで打ち切り。別の話をしていい?」
「別の話って?」
「きみと俺とは似てるんだよね。声もだけど、ルックスもどことなく似てない? やがて二十歳になろうとする人間の雛形がある。その雛形を一方は女、一方は男、として完成させたら、女はワオンちゃんになって、男は俺になった。そういうのって運命的相似形っての?」
 なに言ってんの? とワオンちゃんは怪訝そうな顔をしていたが、俺はかまわず言った。
「きっとぴったりしっくり合うよ。手はじめにいっしょになにか歌わない?」
「私は歌には興味ないんだってば」
「……そうだったっけ。俺の歌を聴いてくれる気もないの?」
「三沢くんは合唱部なんだよね。だからあんなに熱心に誘ったんだよね。そしたら歌はうまいの?」
「歌には自信がある」
「ふーん、だったら聴いてあげてもいいよ」
 第一歩は踏み出せた。彼女が合唱部入部を決意してくれたら、次の一歩も確実となる。そこから先は俺の口がものを言う。ただ今ものを言わせる口は、歌だ。まずはそこからはじめよう。
「そのケイト・ブッシュの「バブーシュカ」、ロシア語で「おばあちゃん」だよ。では、三沢幸生、歌います」
 歌詞は相当怪しいのだけど、俺が歌いはじめると、ワオンちゃんは目を丸くした。男の子の声だなんて思えなーい、と言っているのが聞こえたのだが、褒め言葉と受け取っておこう。
 歌っていると徐々に聴衆がふえてくる。中西がよけいなことでも言ったのか、友人たちが覗きにきていたらしい。友人たちのみならず、夜の浜辺にいたナンパ目的のお兄さんたちやら、ナンパされたくてそぞろ歩いていたのかもしれないお姉さんたちやら、とりあえずナンパは必要なくなった恋人たちやらも、俺の歌を聴いてくれていた。
 聴衆がふえるのは歓迎するけど、俺が聴いてほしいのは今はきみだけなんだよ、ワオンちゃん。俺の歌を聴いて音楽に興味が出てきた? 視線で質問してみたら、ワオンちゃんはほわーっとあくびをした。
 ワオンちゃんは合唱部には入ってくれなかったけど、親しくなった。友達にはなれた。友達と恋人の境目ってなに? それはもちろん、ベッドインだろう。大学に入学する以前に経験ずみだった俺は、女の子をベッドに誘うのも上手だとうぬぼれていたのだが、難攻不落の女ってのもいるものなのである。
「ワオンちゃんは俺が嫌いなの?」
 あの手この手で攻略しようとしても、ワオンちゃんは決してうなずいてくれない。超ハードにむずかしいゲームクリア以上にてこずった俺は、次の手段に訴えた。
「俺はワオンちゃんが好きだよ。友達のまんまなんて耐えられない。恋人になろうよ」
「私は恋人なんかいらないの」
「なんでだよ? 男性恐怖症? 俺だったら男らしくないから、ワオンちゃんの男嫌いを克服する手始めにはうってつけでしょ? 男らしくはなくても男だからね。男だけど荒々しくはないんだからね。ワオンちゃんを優しく導いてあげるよ。ね、ね、ためしてみようよ」
「いらない」
「なんだってきみはそうつめたいの。俺は……心がこわれてしまうよぉ」
「私、決めてるんだ」
 なにを決めてるのかと思ったら、ワオンちゃんは耳を疑う台詞を口にした。
「別に男嫌いでも男性恐怖症でもないんだよ。三沢くんは男らしくないのはたしかで、友達づきあいしてて気楽だっていうのはある。だから三沢くんが嫌いなわけでもない。友達としては好き」
 それはいい、その続きだ。
「でもね、私はまだ処女でいたいの」
「処女ってなに? そんな言葉は俺は生まれてこのかた聞いたこともないよ」
「……生娘、バージン、乙女」
「そんな言葉も初耳だね。今どきの女の子は早くそんなものを捨てたいんじゃないの? 俺なんか……いや、俺はいいんだけどさ、そんなことを言ってると花の盛りはあっという間にすぎちゃうよ。命短し恋せよ乙女っていうじゃん。ワオンちゃん、俺と恋をしよう」
「三沢くんと恋をするつもりはない。寝るつもりもない」
 なんなんだ、この子の発想は……友達でいましょうね、っていう、女の子のていのいい断り文句なのか。アイちゃんにもそう言われてふられたのを思い出した。
「やっぱ俺が嫌いって意味? 俺にはそうとしか聞こえないよ」
「嫌いじゃないって言ってるじゃない。恋人にはなりたくないだけ。私は本当の恋をするまでは処女でいたいの。心から好きになったひとと……でないといやなの」
「う、う、う」
 あんたは十九世紀の生まれか、と言ってやりたくなったのだが、そんな女の子もいてもいいのかもしれない。わりかしあっさりベッドインしてくれる女の子としかつきあったことのなかった俺には、ワオンちゃんは新鮮だった。会うたび口説いてそのたびに断られ、いつしかそれが楽しくさえなって、変な関係の友達のままつきあっていたそのころ、俺の大学二年生もやがて終わろうとしていたころに、本橋さんと乾さんに呼び出された。
「三沢、彼女は落ちたか」
 どうしても攻略できない彼女がいるんですよ、だけど、いつか必ず落としてみせる、と俺は本橋さんや乾さんに宣言していた。その話をしたときに、乾さんは言ったものだ。
「好きにすりゃあいいけど、そういうことを他人に話すものじゃないんだぞ。俺はあいつを落としてみせる、だなんて、つきあってる男が友達に言いふらしてる、そうと知った彼女はどんな気持ちになる? おまえの恋人以前って女の子は何人か知ってる。その中の誰なんだかは俺は知りたくないよ。名前は言うな」
「は、はい」
 たったふたつ年上なだけなのに、乾さんは老成していた。少なくとも俺から見れば、よく言えば大人、悪く言えば古臭かった。そんな考え方もあるんだな、と思っていた俺に、本橋さんは言った。
「乾みたいに固いこと言ってちゃ、男同士の友達づきあいはつまんないよな。三沢、がんばれよ」
「はいっ、がんばります」
 こっちはこういう思想か。では、中を取って名前は言わずに経過報告をしようと俺は決めていた。彼女は落ちたか、と尋ねたのは当然本橋さんで、乾さんはいやぁな顔をした。
「またその話か。本橋にだけ話してやれ。俺は本庄と小笠原を呼んでくるよ」
「本庄さんと小笠原さん? なにかあるんですか」
「あとでな」
 待ってろ、と言い残して乾さんは出ていき、本橋さんは言った。
「俺は聞いてやるから言ってもいいぞ」
「……進展なしなんで言いたくても言えません。ねえ、本橋さん、女ってのはわけのわからないものだけど、中でもあの子は特別製のわけわからん女なんですよね。あれって俺を翻弄して楽しんでるんだろか。そうでもないような気もして、そうでもあるような気もして、それゆえにいっそう心をそそられて、俺は彼女にのめり込んでいくんです」
「ふむふむ。まあ、女にも恋の手練手管とかいうのがあるみたいだから、そうなのかもしれない。そうではないのかもしれない。俺はその子を知らないんだからなんとも言えない。しかし、三沢。女なんてのはわけがわからないからこそ女なんだ。だからこそ男は燃えるんだ」
「ふーむ。そうなのか」
 三月にはやっと二十歳になる俺と、やっと二十二歳になる本橋さんは、幼稚な女性観を振りかざして悦に入っていたのであろう。それも楽しかったからいいんだけど、乾さんは恐らく俺たちを高みから見下ろして、ガキだね、と嘲笑っていたにちがいない。いや、そうでもないのだろうか。乾さんは謎めいていたので、俺ごときに彼の心が読める道理もなかったのだった。
「乾も俺も正式に就職はしない」
 本庄さんと小笠原さんを連れて乾さんが戻ってくると、本橋さんがおもむろに言い出した。
「なぜなら」
 あとを引き取ったのは乾さんだった。
「本橋と俺はプロのシンガーを目ざす。絶対にプロになってみせる」
「ヴォーカルグループを結成するんだ」
 ヴォーカルグループ……グループだった。小笠原英彦、本庄繁之、三沢幸生の後輩三人を、じきに卒業する先輩ふたりが選んでくれた。俺たちと? 俺たちが……プロを目指す? 俺が呆然としていると、乾さんがにこやかに言った。
「そうだ。いっしょにやろう」
「ついてこい。乾と俺が見込んだおまえたちだ。五人でやろう。絶対にやれる」
「いやだと言うなら無理強いはしないよ。小笠原、どうだ?」
「……やります」
「本庄は?」
「ついていきます、本橋さんと乾さんについていきます」
「ありがとう。で、おまえは?」
 もちろん俺も、と答える前に、それじゃあ面白くないじゃん、となってしまうのが俺である。
「うーん、俺はどっかの金持ちの娘をつかまえて、逆玉ってやつに乗って、左団扇で暮らすのが夢だったんですけどね」
「あっそ、そんならお好きにどうぞ」
 冷酷にも乾さんは言い捨て、本橋さんも言った。
「そっか、おまえはそういう奴だったんだな。勝手にしろ」
「だったらおまえは帰れ」
 これは小笠原さんで、本庄さんも言った。
「そうじゃないかと思ってはいたけど、やっぱりそうだったんだな」
「……ひでえよぉ。俺だけのけものにするんですか」
 最初に言い出したのは誰だ、どうするんだよ、おまえは、こら、三沢、真面目に返答しろ、などなどの声に攻め立てられ、最後に乾さんが言った。
「ジョークを言うにも時と場合を選ばなくちゃいけないよ、幸生。わかったか?」
「……先輩たちのもジョーク?」
「さあ、どうだろ」
「俺も、俺も俺も俺も……末席でいいから仲間にして下さいっ」
「末席なのは当たり前だろ」
 本橋さんに言われて気がついた。やばっ、俺、こん中でいちばん年下だ。ってことは、永遠の下っ端? 
「それでもいいや。俺も歌いたい。プロのシンガーになって、それで生きていけるんだったら、下っ端でも走り使いでも小間使いでも、小姓の雪之丞でもなんでもいい。俺もまぜて下さいっ」
「よーし、その言葉、忘れるな」
「え? 乾さん、俺、なにかまずいことを……」
「まずくはないだろ。下っ端で使い走りで小間使いで小姓の雪之丞くん」
「……うげげ」
「下っ端、肩もめ」
 本橋さんったらぁ。
「そのあとは俺な、小間使いの幸生」
 乾さんも。
「俺も頼むぜ、走り使いの幸生」
 小笠原さんも言う。
「似合ってるなぁ、小姓ってのも」
 これは本庄さん。みんなそろってひどいんだから。
「ええーん、先輩たちが苛める」
 泣き真似すんな、って四方八方からこづかれて、それでも俺は嬉しかった。
「小笠原さん、本庄さん、知ってたんでしょ? プロになろうって話もされてた? 本当は本橋さんや乾さんと前からかなり親しくて、俺だけのけものにしてたんだ。でも、いいんだもん。俺も仲間に入れてもらったんだ。これからもユキちゃんをよろしくお願いしまーすっ!!」
「ユキちゃんとなんか親しくしたくないよな、シゲ?」
「え? ヒデ……?」
「幸生にだったらよろしくお願いされてやるよ」
 ああ、そうか、と本庄さんはうなずき、笑い声がはじけた。


「薄暗い店の狭いステージが、俺たちのすべてだった
 あふれる若さと限りない夢がまばらな客たちのすきまを埋めてた」

 前後の歌詞は覚えてないけど、売れないロックバンドの歌だ。「いつか俺にも春は来るだろうか」と続くこの歌。「いつか売れると信じてた、客がふたりの演芸場で」と歌う、売れない芸人さんの歌もある。
 いつかきっと、いつかきっと、幾度そう思っただろう。俺もいつかきっと……いつかはきっと……追いつきたい。それから追い越せるか? 追い越せないまでも並びたい。切なる願いを抱いたのは、本橋さんと乾さんのデュエットをはじめて生で聴いたときだった。十八だった俺と章は、ふたりして先輩たちの歌声に聴き惚れていた。
「そんなことあったか。覚えてないな」
 章はそう言うのだが、俺は鮮烈なまでに覚えている。あるいはあの瞬間が、俺も歌で生きていきたい、と考えた最初だったのかもしれない。
 次第に遠くなっていく大学時代。なつかしい女の子たち。くるみちゃんっていうよくない思い出もあるし、他にも女の子はいたけれど、アイちゃんとワオンちゃんがとりわけ心に残っている。アイちゃんは俺の悲しい記憶、ワオンちゃんは変な記憶として。永遠の十九歳の姿で笑ってるアイちゃん、私は三沢くんとは寝ない、と言いながらも、大学時代を通してガールフレンドだったワオンちゃん。
「そんならいいの? 俺は他の女の子と恋をするよ」
「他の女の子と寝るって意味? うーん、私に止める権利はないかもね。でも、なんとなくむしゃくしゃする」
「それはやはり俺を好きだからでしょ?」
「好きだよ。嫌いじゃないって言ってるじゃん」
「好きだったら……なのに……なぜ……なんだってきみは俺の心をこんなにも狂おしくさせるんだぁ。実はすっげえ性悪女なんじゃないのか」
「性悪女? 狂おしい? 三沢くんってば芝居っ気ありすぎ。変な奴」
「変な奴なのはきみだよ」
 卒業して縁が切れて、ワオンちゃんとはそれっきりになった。好きだったのに抱けなかった女のほうが、強烈な思い出になるものであるらしい。

「いくつもいくつも時を重ねて
 いくつもいくつも恋をして
 いくつもいくつも別れをすぎて
 いくつもいくつも想い出だらけ
 
 だけどね、だけど
 そんな日々はもっと先に取り出すんだ
 それまでは胸にしまっておく

 俺には想い出よりも大切なものがある
 そうさ、明日だよ
 いつか俺にも……」

 春は来るのだろうか、と自作の歌をそのフレーズでしめくくり、これだと盗作だな、と肩をすくめた。俺の心にはお気楽で楽しかった学生時代の追憶という名の甘いキャンディがいくつもころがっていて、もっと先までしまっておく、とか言いながらも、時には取り出してなめてみる。さまざまな色、形、大きさ、中には苦いのもすっぱいのもあるけど、一生なくなってしまったりはしないのだろう。
 キャンディをなめてはもとに戻して、気を取り直して歩き出す。いつか俺にも春は来るのだろうか……いつかきっと春は来るさ、と信じて、俺はまた歩き出す。ってのはかっこよすぎか。言い直そう。売れない以前の問題で、デビューすらできていない日々には苦しさだってあるけれど、そんなものは笑い飛ばして歩き出すんだ。なんでもかんでも笑い飛ばせるのが三沢幸生の強みじゃないか、ってね。

END


 

 
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~ Comment ~

Happy Endって・・・

あかねさんが、Happy Endって・・・???と、悩むのがよく分かります。だって、あかねさんの作品って、終わりがない。終わりはきっと「死」を以てして。
そんな気がします。
今回、アイちゃんの‘死’と、抱けなかったガールフレンド、二人の女性は、三沢くんにとっては‘同じ’だったのかな、という気がしました。
「死」と「肉体的なつながりを持てなかった女性」。
象徴的に感じます。安易なHappy Endに甘んじられない悩める部分の。
幸せという概念自体が、本人の捉えようである限り、では、幸せではなかったの?不幸なの?という質問に対しても、同じ状況の二人が同じ答えを出すとは限らない。
すべてはその人の物語に過ぎなくて、流れがあって、通過点がある。その通過点がどんな状況なのか。たとえば、好きな人と結婚しました、だったり、失恋しました、だったりする。
だけど、すべて「死」に向かうまではまだ物語は続いていて、fateの場合なんて、死んでも物語が終わらなかったりする。
次の世でまた会いましょうになったり。

そうなると、Happy Endのエンドはどこじゃ???ということですよね。
あかねさんの作品の魅力は流れていること。続いていること。輝き続けていること。ここに、今、存在していること。
そんな気がします。
その、まるごとの空気が素敵で、煌めいていて、心地良いです(^^)
変ですが、執筆…fate流に言えば、世界を描くときは、おおいに悩んで悶えて、楽しんで、そして素敵なworldを描き続けて欲しい、と祈ります。

今日は久々に時間が取れたので、ゆっくり浸らせていただきました。
またお邪魔いたします~(^^)

たしかにそうですね

fateさん

深く読んで下さってありがとうございます。
本人はあんまり深く考えずに書いてますし、特にこのあたり、フォレストシンガーズストーリィとしては初期のころに書いていますので、なんだかぎくしゃくぎこちなくて、読み返すと赤面ものなのですけど。

けれど、もしも私が死んで書けなくなってしまったとしても、死にはしなくても書かなくなってしまったとしても、フォレストシンガーズはどこかで生きて歌ってる、このストーリィは終わらない。

そんなつもりで書いてます。

happyとは、自分が感じること。
「きみを幸せにするよ」ではなくて、
「幸せにしてね」でもなくて、
自分で幸せになろうと努力すること。

「私は幸せだ」と自分で思えば、他人にとやかく言われるものではない、とも思っています。
そう言える人はめったにいないでしょうから、むずかしいですよね。

すみません、また来ました(^^;

作者が死んでも、物語は続く。
その概念、fateによく似ています。
fateも、物語をfateが創作している訳ではないので。たま~に、初めから流れ、展開、結末、と決まったモノを描こうとすると、途中で大抵行き詰ります。fateの貧相な頭で考えたモノなんて所詮、限界があるのです。
そうではなくて、ぱっと掴んだあるシーン、ある台詞、そういうものを元に世界を描き始めると、fateにはまったく展開も人物も予想出来ていないのに、勝手に物語が進みます。
fate世界は、文章に乗せて始めてstoryが浮かび上がってきます。きっとどこか別の空間に存在しているその人物たちの物語を覗きこんで、文章に表しているだけ、という気がしているのです。
それをうまく捉えて形に出来るときとそうでない時があって、それは物語とfateとの相性の問題とか、fateの文章力、それから感性の問題かな、など。
素敵な物語を捕えるために、fateは自身をもっともっと磨かなければならない。そうしないときっと物語が扉を開けて、fateにその世界を見せてくれないから。fateがその物語に触れるに足る人間に成長・進化しない限り、物語の扉は閉ざされている。
そんな気がします。
今、ちょうど『地下牢』から始まったstoryを描いておりますが、地下牢なんで、まったく暗闇を手さぐりで進んでいる内に、不意に視界が開けた瞬間がありました。
その「ああ!そうか!」を求めて、fateはまた世界の扉を叩く準備をするのであった(^^)


似てますね

はじめに。

かつまさんのブログでお名前を混同してしまって、すみません。
書き直したいのに書き直せない。
fc2のコメントってそこは困ります。
本当にごめんなさい。

それから、
物語を誰かに書かされている感じ、私もよくわかります。
私はなにかのシーンとか台詞がぱっと浮かび、書き出しの一文が浮かび、そこからほぐれて一編のお話になる、といった書き方で、世界を構築したりするのは苦手です。

時には登場人物が勝手に暴走して、こらこら、止まれ、と言っても止まらない、なんてこともありますよね。
もちろん、誰かが私に書かせようとしているのに、ちっとも書けないときもありますが。

きちんとプロットを立てて整理して……といった書き方の方がうらやましくて、私もちゃんとしないといけないな、と反省したりもするのですけど、書き方も人それぞれでいい、んですよね?

とにかく私は行き当たりばったりで、ネタが降ってくるのを待ちつつ、半ばはフィクション世界に生きてます。

それでぼけてて、ああいうまちがいもするのです。
かつまさんとfateさんのお名前。
平にご容赦下さいませ。
言い訳でした。

さあ~、久々にグラブタブドリブから帰ってきました。
「魔法使いの島」もとても面白かったです ^^


私、背の低い男の人ってそんなにイヤじゃないんです。
たぶん、親近感がわくのかな。

私も背が低い(153センチ)から、低い人のほうが、お互いが立っている時に話しやすいし。あと、あまり背が高い人だと常に「見下ろされている」感じがあまり好きじゃないのかも。

だからユキちゃんにもたぶん親近感がわくと思う。
アキラくんもあんまし背は高くないみたいですね。

いいですね~、ユキちゃんとアキラくんのコンビ。
なかなか息があっている。

乾くんと本橋くんがいきなり歌いだした時(話してる最中に突然歌いだす、というのが笑える ^^)、ユキちゃんが感動したのって・・・とてもわかる気がするな~。凄くいい声とかその声が歌う歌とか、そういうのって胸に響くというか、胸を震わすというか、そういうじんわりとした暖かいものがこみあげてくるんですよね。乾くんと本橋くんのデュオが聴きたい~・・・ってこれ、以前のコメにも書いた気がする。

「そうだ。いっしょにやろう」と言った乾さんのにこやかで晴れやかな笑顔が頭にうかびました。「いっしょにやろう」っていいですね。なんかこう、凄く前向きというか明るいというか。

きゃー、響子さん、うれちぃ(幸生より)

響子さん、ありがとうございます。
今夜はママ(著者)になりかわりまして、俺がお返事させていただきますね。
そばにいらして……お手をどうぞ。

うちのママも背は低いんですけど、男は背が高いほうが好き、なんて言うんですよ。
彼女も見下ろされるのは嫌いなはずなんだけど、実は好きなのか? 今度、詰問しておきます。

背の低い俺に親近感を持ってくださるなんて、嬉しくてたまらないわぁ。
章はどうでもいいから、今度、デートしましょうね。

いきなり歌い出す……言われてみればそうですね。
そのへんってママの小説はミュージカルみたい。

俺たちってよく架空会話してるでしょ。あれもママは無意識で書いてたらしいんですけど、普通はしませんよね。

ママは自意識過剰のようでいて、抜けてるんですね。
これからもご指摘なさってやって下さいね。

>そんなものは笑い飛ばして歩き出すんだ。なんでもかんでも笑い飛ばせるのが三沢幸生の強みじゃないか、ってね。

うん、最後を締めくくるこの言葉。
これぞまさしく、三沢くんのイメージですね。
なんともパワフルで、個性的で、ちょっと無謀だけど、いろんなことを弾き飛ばして、前進して行く子ですね。

で、ちょっとたまに自分を振り返って、「やっぱり、間違ってねえ」と、確認する。
ちっちゃいけど、エネルギーに満ちてて、読んでいてすごく楽しかったです。

悲しい恋もありましたが・・・。それもしっかり、大人になる足掛かり、ですもんね。

フォレストシンガーズの結成を匂わせる乾君の言葉に、ワクワクしました。
もうすぐなんですね~~^^

limeさん、ありがとうございます

もうちょっとかかりますが、学生時代を書くのも好きですので、もうすこししたらフォレストシンガーズ結成です。

学生時代にもおつきあいいただきまして、ありがとうございます。

三沢幸生って奴はちょっとうざい、なんてことも、若い男性には思われたようですし、事実、その通りではあるのですが、私にとっては可愛い息子なのですよ。

limeさんのおっしゃる通り、幸生ってエネルギーのかたまりなんですね。
そういうところももっと上手に書けるようになりたいと思います。

これからも幸生も可愛がってやって下さいね。
ごろにゃーん(幸生より)

NoTitle

学生時代のいろいろが人間形成に大きく関わるのだなあ、という感じがしました。

大学に入って、いろんな出逢いがあって、別れも経験して、大きなものに向かっていく、ところですかね。

大きく目標と出来る存在がすぐそばにいて、影響を受けるって、良いですよね。

ユキちゃんにもその息がかかっているということで、また先が楽しみです。

けいさんへ

いつもありがとうございます。

なんと申しましょうか。
あとになって振り返ってみれば、いろんな意味で有意義な学生時代をすごせたひとは幸せですよね。
幸生もきっとそう思ってくれていると、著者は信じております。

そのあたりをもっと上手に書きたいと切望しながらも、なかなかうまく書けませんけど、これからもフォレストシンガーズを見守ってやって下さいね。

NoTitle

三沢くんは子犬っていうよりか、あとすこしで成犬ってぐらいの感じがします。
イラストがぴったり!

口が上手い人って乾くんみたいな人を想像するけど、確かに三沢くんのような人も面白い!

好きな声は・・・うーん・・・優しい声?
ほわっとした声が好きです。
ここ数年聞いてて「たまんねーっ」って思うのは秦基博ですかね。
インディーズ時代の直太朗は神・って思ってます(最近は違うのかよ・・

むかしLUVandSOULがすごくすきだったんですけど、メンバーが入れ替わってしまって、ほぼ違うグループに・・・うぅ。

ここ1ヶ月ぐらいはAimerという女性の歌をきいてマス。

ハルさんへ

いつもありがとうございます。

大人になりかけの仔犬、ユキ。
その通りですよねぇ。
彼は三十代になっても仔犬っぽいので、そこはちょっと問題かもしれませんが。

直太朗って森山さんですか?
あと、書かれているグループは知らないんですけど、優しい声、ほわっとした声がお好きとのこと。
癒し系の声かな?

私は声にもけっこう好き嫌いがありますが、歌がいいと歌ってるひとの声も好きになってしまう場合もあります。

たしかに、ヴォーカルの人が代わると別のグループになってしまいますよね。残念ですよねー。

意外に春はそのあたりに落ちているもので、幸せに案外その辺に落ちているものです。
私も小説の投稿を小学生の頃からやってましたけど、結局プロにはなれなかったですからね。社会人になってから、企業からゲームのシナリオを書いて欲しいなどのアルバイトをし始めましたからね。そのコネの関係で、自分の小説をゲーム化してみたりなど・・・意外に楽しくやっています。
音楽で食っていくのは大変でも、音楽を大衆に魅せることは結構できるんですよね。夢も春も努力していたら、その辺に落ちているものです。

LandMさんへ

いつもありがとうございます。

春、幸せ、仕事、成功。
見つかるひとには見つかるものなんですかねぇ。
やっぱり努力が大切ですね。

私のところにもゲームのもとになるような短編を書いてみませんか? というようなお誘いはありましたけど、信用していいいのだろうか、とか、お金をもらえるとなると大変だろうなぁ、だとか考えて、考えすぎて億劫になって……ということがありました。

今はもう、小説を書くことは趣味だと開き直ってますけどね。
フォレストシンガーズは今後も努力していきます(^^

NoTitle

幸生くんのお話読みにきましたー!
幸生くん(笑)欲望に素直で可愛いですね(笑)
私も背が低いので身長延びますようにって願い分かります(笑)男の子ならなおさらでしょうね。
これだけ積極的に言い寄られたら私ならそうなのかなぁと思って落ちてしまいそうです(危)まぁ私には言い寄ってきませんね…しょぼん(´・ω・`)
しかし、アイちゃん亡くなってしまったんですね…。はじめ何かの冗談だろうと思ったのでちょっとビックリです。
幸生くんと章くんの区別がまだ私のなかではっきりしてないのでもっと読み込もうと思います!

たおるさんへ2

こちらにもありがとうございます。
この間、とある男性が書いていたのですよ。
「くまもんに会いました。くまもんよりも僕のほうが背が高くて、嬉しかった」だそうで、やはり小柄な男性は身長を気にするんだなぁ、と改めて思ったのです。
ジャニーズ系の男の子も、顔は綺麗なのにやはり身長を気にしていたりしますものね。

私は平均よりはやや低い程度なのですが、背が高くて細い女性は洋服がかっこよく似合うし、うらやましく思います。

あ、たおるさんは幸生に口説かれたらなびいて下さいます? 幸生はいい加減な奴ですよぉ(^o^)いいですか、口説きにいかせても?

幸生と章のちがい、実はこれ、私もフォレストシンガーズを書きはじめたころにはちゃんと区別できていなかったのです。
一番大きな差は、幸生はポジティヴ、章はネガティヴ、ですね。女性に対するいい加減さはよく似てます。

もっと読んで下さるとのこと、とても嬉しいです。
またご感想など下さるのを、心からお待ちしています。
質問もどんどんなさって下さいね。
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