リクエスト小説

「プラスワン」(けいさんより)

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11112HIT
だったのだそうで、11111の前後賞ということで、けいさんからリクエストをいただきました。
1にからめたストーリィをということです。

「賞」としてプレゼントさせてもらうのもおこがましいようなものですが、けいさん、受け取って下さいませ。
リクエストありがとうございました。

11112hit記念
「プラスワン」

「友達とやってたんじゃなかった?」
「そうなんだけど……」
「シュウも卒業はしたんだろ」
「したよ」

「ああ、卒業すると学生時代の友達と疎遠になったとか?」
「そうなんだよね」
「……元気出せよ」
「元気の出る話、聞かせて」

 外国には行ったこともない僕から見れば、彼は国際派だ。大学を卒業して就職はせずに、世界中を旅して帰国したばかり。世界中でもないよ、と彼は言うけれど、そんな余裕もない僕には彼は眩しい。

 アメリカでは……ヨーロッパでは……こんなことがあったんだよ、彼が話してくれているのを聞いて笑っていても、僕がちょっぴり上の空なのは彼も気づいているかもしれない。

 大学のグリークラブで親しくなったミノルとノリと僕、シュウの三人でGNMSという名の男声ヴォーカルグループを結成した。卒業するまでにはプロになろうと決めていたのだが、望みがたやすくかなうほどに甘い世界ではない。時ばかりが流れて僕たちは三人とも大学を卒業し、ノリとミノルは就職してしまった。

 GNMSをやめるわけじゃないさ、プロを目指そうと言ってたのを諦めてはいないよ。
 だけど、現実問題としては無理かな。俺たちにだって生活があるんだから、歌は趣味でいいじゃないか。
 シュウは仕事は? いつまでもフリーターってわけにはいかないだろ。

 そんなふうに言っていたミノルやノリとは、近頃は会う機会も少なくなった。

「……でさ、まだ早すぎるっていうのか、俺の気持ちは固まってないから、一旦は保留にしてもらったんだよ」
「保留?」
「シュウ、聞いてなかっただろ?」
「ごめん。なにが保留なのかは聞いてなかったよ」

 うちの大学の学園祭で、グリークラブもコンサートをやった。歌がメインのコンサートではあるが、曲によっては伴奏もほしい。ギターやピアノのうまい学生の心当たりはないかな? そんな提案が出されて、僕らは手分けして友人や知人に声をかけた。

 その中にいたのが彼、田島祥吾だった。
 彼はものすごくギターがうまいと言う。高校時代に組んでいたバンドでプロになると決まっていたそうだが、アクシデントがあってかなわなかった。このごろは音楽はあまりやっていないらしいけど、ギターの腕は最高だ。そう聞いて、僕が彼に会いにいった。

「葉山秀一です。よろしく」
「田島です。よろしく。だけど、せっかく来てくれたのに悪いんだけど、俺はギターを弾く気はないから」
「……絶対にいや?」
「いやってんじゃないんだけど、人前で弾きたくはないんだよ」
「事情があるんだよね?」
「……うん、まあ、それはいいじゃないか。きみたちは男声合唱やってるんでしょ。学園祭でのコンサートは聴きにいきたいな」

 伴奏は断られ、事情を話してももらえなかったが、祥吾は約束通りにコンサートを聴きにきてくれた。GNMSの歌は最高だよ、伴奏なんかないほうがいいかもな、なんて言って、彼は笑っていた。

 それから親しくなって、徐々に彼の境遇も聞かせてもらえるようになった。高校時代のバンド仲間が亡くなってしまったから、ギターを弾きたくなくなった。それだけでもないのだろうが、大きな理由はそれだったらしい。

 
「保留ってなにが?」
「メジャーデビューの話だよ」
「デビュー? あれ?」
「……外国を旅してて、いろいろと考えた。考えすぎて頭が痛くもなったんだけど、ちょっと前からぼちぼちギターを弾くようになってるんだよ」
「そうなんだ」

 もう一生、祥吾はギターを弾かないつもりじゃなかったのか? なのに復活した? 復活したら簡単にメジャーデビューできる? きみのギターの腕前はそれほどだから? 僕たちは長くやっていてもデビューしろって声は一度もかかったこともないのに。

 妬ましさとしか名づけようのない感情が湧き上がる。僕たちが実力不足で、運にも恵まれてなかったってだけなのに。運も実力のうちっていうんだから、祥吾と比較すれば僕の実力はちっぽけすぎるものだったと、それだけのことなのに。

「そっかぁ、僕もソロでデビューって道を探そうかな」
「ひとりでやるってのも決して悪くはないけど、仲間がいるとさらにいいよ」
「祥吾はバンドでデビューするの?」
「すべてが固まったら、もう一度よぉく考えるよ」

 デビューの話が来たからってすぐさまは飛びつかない。のんびりしていてチャンスが逃げたらどうするんだよ? だったらかわりに僕がデビューしたいよ、なんて考えてみても、そんなことはできるはずもない。
 嫉妬に苛まれている自分が惨めになってきたのもあって、僕は話題を変えた。

「フォレストシンガーズって知ってる?」
「ああ、知ってるよ」
「紹介してもらったんだ。フォレストシンガーズと知り合いになったからって、僕らがプロになるための力を貸してもらえたわけじゃないよ。でも、アドバイスはしてもらった。僕は本橋さんに……」
「俺は三沢さんに会ったよ」
「え?」

 ベトナムはサイゴン川のほとりで、祥吾はギターを弾いて歌っていた。そこに偶然通りがかったのが、フォレストシンガーズの三沢幸生だったのだそうだ。

「ビートルズの曲をリクエストしてくれて、きみ、ギターも歌もうまいねって言ってもらった。プロのシンガーに褒めてもらって単純に嬉しかったよ。シュウはどんな感じ?」

 一生懸命手を尽くして、ようやくフォレストシンガーズのリーダーに紹介してもらった僕と較べて、祥吾は偶然に三沢さんと知り合って褒めてもらった? おまえはなんだってそんなにラッキーなんだよ、ずるいよ、と叫びたくなったのをこらえた。

「僕はね……たいしたことはないんだ。知り合いにお願いして本橋さんと会わせてもらって、三人では歌のグループとしては少ないな、四人いたほうがいいな、みたいなアドバイスをもらっただけ」

 そして……そのあとは祥吾には言えない。
 僕が女の子だったらよかったのか。いや、もしも僕が女だったとしても、本橋さんは結婚している。本橋さんが独身で僕が女だったとしても、プロの歌手とアマチュアの歌い手ではつりあいも取れない。
 所詮、最初からかなわぬ恋。まして僕は男で、本橋さんは普通に女性に恋をする男。そんな片想いをしているなんて、祥吾に言っても意味もないのだから。

 学生時代には、僕はゲイだよとわりに気軽に言えたのだが、大人になってくると言いにくい。祥吾は僕の家に遊びにきてくれているのだから、ゲイとふたりっきりでいたくないよ、とでも言われて帰ってしまわれて、二度と会ってもくれないようになるかも、と思ってしまう。

 恋愛感情ではないけれど、僕は祥吾が好きなのだから、友達として好きなのだから、ゲイだなどとは言わないでこのまんまで友達を続けていたかった。

「けど、三人でさえなくなっちゃったよ」
「そっかぁ。でも、シュウたちの歌のハーモニーは素晴らしいんだから、他の奴らともう一度やってみるって手もあるだろ。ひとりでやるのを否定はしないけど、ひとりとひとりが手をつないで、そこにもうひとり、もうひとりってプラスしていくと、人数以上のなにかが産まれたりすることもあるんだよ」

「マイナスになることもあるんじゃない?」
「そういう場合もあるけど、そこは相乗効果を狙った人選で決まるんじゃないか?」
「かもね」

 恵まれてる人間は、プラス思考でいいよね、などと、皮肉を言いたくなる。けれど、祥吾をいやな気分にさせるような発言をしたら、僕自身がよけいに惨めになるだけだ。

「そうだね。祥吾のアドバイスもためになるよ。僕も前向きに考え直す。ところで祥吾、きみは恋愛方面は?」
「いやぁ、そっちはさっぱりだよ」
「愛し合える女の子とのひとりとひとりって、男同士では考えられない相乗効果を生むんじゃないの?」
「そうなんだろうけど、恋愛なんてそうたやすくは行かないだろ。俺って惚れっぽいほうでもないしさ」
「惚れられるばっかり?」
「そんなこともないけど……その話はもういいじゃないかぁ」
「僕はもっとしたいな」

 勘弁してくれよ、と情けない顔をする祥吾が可愛く見える。そうさ、人間、なにもかもがうまく行くはずがないんだ。だけど、僕も祥吾と話していて元気が出てきたよ。だから言ってみた。

「今度こそ、僕の歌の伴奏してくれるだろ」
「あ、ああ、機会があれば」
「やった」

 僕は祥吾に恋はしていないけど、友達としてのひとりとひとりとして、きみのギターと僕の歌がなにかを生み出したら、それはそれで素晴らしいプラスワン。とりあえずはそれを楽しみにして、もうちょっとがんばってみよう。

END

追記

田島祥吾くんはけいさんのキャラクターです。
私はもちろん、祥吾くんの性格をきちんと把握しているわけではありませんので、こうして出てきてもらうのはたいへんにこころもとないのですが。。。
祥吾くんの登場をお許し下さったけいさん、重ねてありがとうございました。

けいさんのブログはこちらです。
私のこの記事についても、ご紹介下さっています。
重ねて重ねて、ありがとうございました。



















 

 
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~ Comment ~

NoTitle

うわあい!^^
へへ。ニアピン賞でプラスワンですか。粋です。

田島を登場させてくださり、ありがとうございます^^
よぉく考えている時期の田島なのですね。ふむふむ。

うん、同じ年頃の友だちがたくさんいるのは良いことです。
けど、以前には策ばかりでなく、シュウさんのことも振っていたのか。

それなのに、友だちでいてくれてありがとう。
ついでに、苦手の恋愛についても突っ込んでくれてありがとう。
いつかプラスワンになって、同じステージに立てると良いね。

あかねさん、リクエストにお答えくださり、素敵なお話をありがとうございました^^

NoTitle

あ!田島君だあ。
田島君を語らせるのって、なかなか難しそうですもんね。あかねさん、チャレンジャー。
でも田島君の雰囲気が随所に出てるような気がします。
ギターや恋愛の話。
突っ込んで聞くと、するっと交わされてしまうようなところ^^
この葉山君って、何度か出てきたのかな?
彼もなかなか、悩み多き青年みたいですね。

彼の場合とは違うんだろうけど、
男が別の男の才能に憧れるとき、ほんの少しだけ恋愛感情に似たものがあるんじゃないかな、なんて思いますね。
田島君、きっと男にも惚れられる男なんだなあ。
男に惚れられるキャラ、描いてみたいなあ。

けいさんへ

こちらこそ、田島くんに出てきてもらって感謝しています。
コメントも、ありがとうございます。

最初は幸生が「今度デビューした田島祥吾くんって知ってるよ」と言うという方向で考えていたのですが、シュウが出てきまして。
シュウはかわいそうな子ですので、田島くんに元気づけてもらうことにしました。

田島くんはやっぱり、恋愛は苦手なほうですよね。
可愛い女の子に迫られても、自分が好きではなかったら断固拒否!! ですものね。

けいさんのキャラを勝手に使わせてもらいましたが、読者のひとりの目には田島くんはこんなふうに写っているということで。
寛大に受け止めていただいてほっとしました。
田島くん、また遊んでね。

limeさんへ

コメントありがとうございます。
けいさんのキャラにもいろんな人がいますが、私は田島くんがもっとも印象深いのです。
やはり、ミュージシャン好きだからなんですよね。

深く入っていこうとすると、するりと身をかわされる。
そうですよね。田島くんってそんなところがありそう。
いい意味で頑固なひとなのでしょうね。

葉山秀一はある日突然、学生ヴォーカルグループの一員として出てきまして、けっこうあっけらかんと、僕はゲイでーす、と言っていたのですが、だんだんだんだん暗くなってきたみたいです。
恋した相手が悪かったし、夢はかなわないし。

そんな彼を田島くんが勇気づけてくれて、すこしは前向きになれるかな。

男が男に惚れるというのは、シュウの場合は恋愛感情ですが、フォレストシンガーズのメンバー間でもそんな感じ、描いているつもりです。
人が人に惚れるって、自分にないものを求めて……っていうのもあるんじゃないかなと思ってます。
だからこそ異性同士で恋に落ちる。
でも、ちょっとちがった感じで「男が男に惚れる」。

limeさんが描かれるとどんな感じになるのでしょ。
ぜひ読ませていただきたいです。

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鍵コメSさんへ

コメントありがとうございます。
はーい、けいさんが宣伝して下さっていたのはこれです。

よそさまのキャラを使わせていただいて、トラブルになったこともありますので、たしかに冷や汗ものですね。
やはり不快に思われてはいけませんから、あれかこれかと悩み、なのに書きたがるのは、こういうのが好きなんですよね。

友人が私のオリジナルキャラを使って小説を書いてくれたことはありまして、やはり私が書くのとは微妙にちがっていて、くすぐったくも興味深かったものです。

サッカーは対外試合だとたまに見ますよ。
私はひねくれていますので、マスコミが悪く言い出すと、そのほうがむしろ気持ちが寄っていったりして。
飛鳥にしたって、あんなの不倫と同じ程度の「罪」じゃないの、なんて思っています。

旅行は行かないとなると別に行かなくても平気なんですけど、たまに出かけるとまた行きたくなりますね。
今年は泊まりではまだ一度だけ。
夏には北海道に行きたいですね。
函館に住みたいな。
暑がりの私は大阪の夏は大嫌いですので、その分、寒いのは平気です。

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鍵コメSさんへ

いつもありがとうございます。

そうなんですよね。津々井茜っていう、体格的には私に似てなくもないかなぁ、と思えなくもない女性が、けいさんの物語の中に出てくるのですね。
本人としましては、嬉し恥ずかしでした。

ブラジルが七対一で負けたのが、「阪神と同じ」なんですか。
いろんな解釈の仕方がうりますから、どう受け止めたらいいものか。

一昨日まで阪神は八連勝していまして、そんなときでも私は半分以上は、ネガティヴなんですよね。
因果な体質です。

あまり連勝すると反動で連敗するよぉ、とか。
打ちすぎて点を取りすぎると、明日は打てないとか。
どうせ今だけは勝っていても、肝心な時期になると負けるし、とか。

そして、われらが阪神タイガースは、そういうネガティヴなお約束はきっちり守ってくれるのです。
そんなところが大好きです|д゚)
↑自棄です。

そういえば、一時期、ソフトバンクがシーズンで優勝して、クライマックスシリーズで負けて日本シリーズに出られなかったことが何度かありましたね。
ソフトバンクのファンは穏やかだなぁ、阪神ファンだったら暴動が起きるんじゃない?
と思ってはいましたが、甲子園の駅で騒ぐ程度でしょう、たぶん。
サッカーのフーリガンってすごいですよね。

麻薬と不倫……。
どっちも他人に迷惑かけなかったら(身近な人間は大迷惑ですが)、たいした罪でもないと思っている私は、道徳観念がやや薄いようです。
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