企画もの

11111HIT御礼!!!!!

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ベストショットも撮れました(^o^)
みなさま、ありがとうございました。
ということで、特別企画です。


「オンリーワンよりナンバーワン!」

 ただ東京に行きたくて、勉強はしたくないけど大学生になろうとした。兄貴の章は頭が悪くても受け入れてくれる大学があったってのに、俺にはなかった。受験した東京の大学すべての門戸を閉ざされてしまった。

 それでも東京に行って兄貴を頼って、結果的には兄貴よりも兄貴の先輩たち、フォレストシンガーズの乾さんや本橋さんの世話になって、一浪の末に大学生にもなれた。兄貴は一年で中退したのだが、兄貴の仲間たちの母校の、おまけに合唱部の後輩にもなったわけだ。

「一年生のときに、兄ちゃんたちが学園祭で歌った曲があるんだってね。合唱部に伝わる歌で、テナーの男子がメインになるやつ。クラシック系の合唱組曲だって」
「ああ、「森の静寂と喧騒」だろ」

 ガキのころには可愛い声だった俺が変声期を迎えたころに、母が言った。

「兄ちゃんは男のくせに甲高い変な声で、誰に似たのかって不思議だったんだよ。息子はお父さんに似た声になるんだものね。龍はお父さんに似た低いいい声で、よかったよかった」

 そう言われていた兄貴はテナー中のテナーだ。ハイテナー、カウンターテナー、ともいえると乾さんが教えてくれた。

 現在では作曲家になっている、俺の親父世代の大先輩、真鍋草太さんが卒業にあたって合唱部のために書いた曲であるらしき「森の静寂と喧騒」はハイクォリティのテナーヴォイスが必要なのだそうだ。なのだから、兄貴と三沢さんというテナーの一年生がいた年の前後には、合唱部のステージに乗せられることはなかった。

「毎年、キャプテンや副キャプテンの申し渡しみたいな感じで、いいテナーが入ってきたらコンサートでやりたいって言われ続けてたんだって」
「今年はやるわけ? 主役はおまえじゃないよな」
「俺はバリトンだから脇役のはずだよ」

 小鳥の歌声がメインになる合唱曲なのだから、高くて綺麗な澄んだ声が重要だ。木村章と三沢幸生が主役をつとめた年の「森の静寂と喧騒」は、いまだに語り継がれていて、真鍋さんも音楽雑誌で取り上げていたらしい。

「キャプテンは張り切ってやりたいって言ってるんだけど、主役をやれって言われたミツルがさ」
「ミツルって奴か。俺みたいな声?」

 金属質の高い高い声、三沢さんにはヘヴィメタシャウトだと言われる声で絶叫する兄貴の声と、ミツルの声はどこかしら似ているかもしれない。俺と同い年の錦戸ミツル、男なのになぜか「ミツル」とカタカナ名前のそいつが白羽の矢をたてられた。

「けど、やなんだって。そんなことをやらされるぐらいだったら合唱部をやめるって言ってるよ」
「自信がないからか?」
「それもあるんだろうけど、なんてぇのかな、突出した存在にはなりたくないっての?」
「うん、まあ、わからなくもないけど、幸生とは真逆の奴だな」

 受験に失敗したにも関わらず、東京に出てきてから一年余りになる。その間に兄貴の仲間たちとはかなり触れ合ったので、性格も一応は把握した。自己顕示欲のかたまり、目立ちたがりの権化。三沢さんは俺と同じ合唱部の一年生だったころから、ナンバーワンになりたくてたまらなかったのだそうだ。

「俺もミツルの気持ちはわかるよ。俺だって飛び抜けたくはないもん。みんなの中に埋もれてるほうがいいよ」
「俺たちの仕事柄、そんなふうに言ってちゃやっていけないんだけど、今どきの学生はそうかもな」
「だけど、乾さんはさ……」

 人間は皆、オンリーワンだ。ナンバーワンにならなくていいという歌もある。だが、兄貴の同業者たちは目立ちたがりが当然なのか、徳永渉さんもオンリーワンがいいと言うと怒り、乾さんも言った。

「オンリーワンなんて当然じゃないか。たとえばこの煙草」
「煙草?」
「この煙草にしてみたところで、この煙草というものはたったの一本しかない。ここにも煙草はあるけど、この煙草とこの煙草は別のものだ。ゆえにこの煙草も一本一本がオンリーワンだ」
「……乾さん、よけいにわけわかんないよ」
「人間も同じ。オンリーワンで満足するな。たとえかなわぬ望みでも、人はナンバーワンを、はるかなる高みを目指して飛翔し続けてこそだ。でないと人類には進歩も発展もないんだ。個々人がそうやって努力しないと、人類は退化していくんだよ」
「……頭が痛くなってきたよぉ」
「とまあ、徳永もそういうことを言いたかったんだろ」

 ふむふむ、乾さんらしいセリフだ、と兄貴は笑い、俺は歌った。

 「花屋の店先に並んだ
 いろんな花を見ていた
 ひとそれぞれ好みはあるけど
 どれもみんなきれいだね
 この中で誰が一番だなんて
 争う事もしないで
 バケツの中誇らしげに
 しゃんと胸を張っている

 それなのに僕ら人間は
 どうしてこうも比べたがる?
 一人一人違うのにその中で
 一番になりたがる?

 そうさ 僕らは
 世界に一つだけの花
 一人一人違う種を持つ
 その花を笑かせることだけに
 一生懸命になればいい」

 うんうん、やっぱおまえ、下手だな、と兄貴はまたまた笑う。歌詞ではなくて俺の歌唱力に耳を集中させていたらしい。

「その歌、高校野球開会式の行進曲に決まったこともあったろ」
「だいぶ前にあったっけね」
「あんときも乾さんは言ってたな」

 スポーツマンはナンバーワンになりたくて努力してるんだ、おのれとも他者とも闘うのは一番になりたいからだ、そんな高校球児の行進曲にはこの歌はそぐわない、だった。乾さんはこの歌が好きではないと見える。

「俺だって……」
「兄貴はナンバーワンになりたいの?」
「……なりたいさ!!」

 小声ではあったが、兄貴は目をきらっとさせて叫んだ。
 職業柄ってのもあるのかもしれない。負けず嫌いの権化みたいなリーダーのいるフォレストシンガーズの一員だからこそ、兄貴はこんな思想になったのかもしれない。

 まぁ、俺はミツルに賛成だけど、兄貴たちの考え方も悪くはないかな。
 俺が六つの年に故郷の稚内から出ていってしまい、一度だけは帰郷したものの、兄貴はそれ以来うちには寄りつかなかった。大学を中退して親父に勘当されたのだから仕方なかったのだろうが。

 そんな兄貴なのだから、去年会ったのは十年以上ぶりだ。三十をすぎた木村章は俺の記憶の中の兄貴よりはおっさんになっていたが、フォレストシンガーズの他のひと、三沢さん以外の年上の男たちと較べるとガキっぽい。あいかわらずアホな奴だと俺は兄貴をそう思っていた。

 でも、やっぱ……やっぱ、なんなんだろ。こんな目をしている兄貴はかっこ悪くはないな。ちょっとだけ見直したっていえばいいのかな。
 だけどやっぱ、俺はナンバーワンじゃなくてオンリーワンでいいけどね。

END






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~ Comment ~

NoTitle

ぞろめの11111、おめでとうございます!

やはり続けるということは大切で、それがこんな素敵なお祝いもくれるんですよね、と改めて^^
これからも、もっとたくさんの人があかねさんのお話を読みに来られますように。

私なんと、11112! 前後賞ゲット! 
ってことでリクエストは・・・ちゃうっ。すみません。

章と龍もいろいろあって今があるのですね。
すごくドラマチックです。

オンリーワンかナンバーワンか・・・
心情が絡んで微妙に複雑ですよね。
めんどうくさがりの私は両方のいいとこ取りをしたがる(><)

けいさんへ

コメントありがとうございます。

11112でしたか。
11111はどなたなのか、気になります。

前後賞リクエスト、リクエストというか、ネタはいつでも大歓迎ですので、よろしかったらどう~ぞ~。お待ちしております。

人は誰でもオンリーワン。そんなの当たり前でしょ、と思ってしまう私は(タカちゃんの言う通りで、煙草だってボールペンだって、その一本はオンリーワンですよね)ナンバーワンになりたい願望もありません。

若いころはまあ、特別な存在になりたいと思わなくもなかったのですが、もういいです。ひっそり埋もれていたいです。

おめでとうございます!

ポッキーがいっぱい並んでいる!って俗っぽ事を考えちゃいましたが、すごく目出度い感じのぞろ目、おめでとうございます!
でも、もう11129……全然来るの遅いよって感じですみません!
そうそう、ある人が言ってました。「今の子どもは大変だなぁ。ナンバーワンにはならなくてもいいけれど、今度はオンリーワンにならなきゃならないんだ」って。オンリーワンになるのもなかなか大変、なんですね。「もともと特別なオンリーワン」で納得できていたらいいと思うんだけれど……「もっと特別なオンリーワン」になりたくなって。あるいはオンリーワンであるほうがナンバーワンになるよりも大変な事だってあるよなぁと、私も思ってしまいます。
何だか、どこまでも欲は姿かたちを変えて襲ってくるのですね…・・
なんてことはさておき。
これからも『1』ずつ積み重ねていく、そんな節目の目出度いHit、おめでとうございます(*^_^*)

大海彩洋さんへ

コメントありがとうございます。
ポッキー、どうぞ召し上がれ。うふふ(^o^)

特別なオンリーワンですか。
ナンバーワンとは微妙にちがうのでしょうね。
人間、やっぱり特別になりたい願望があるんですよね。

メンタルがどうとかいうひとの中にも、私はそういう意味で特別だ、とか思っている場合があるのだとか?
とかとか、ばっかりですが、うーむ、すべてのことがらは奥が深いのですね。

まったくもってアクセス数が微々、びびびびっっなブログですけど、びびっと来て訪問して下さる方がおひとりでもいらっしゃるといいなぁと夢見て、とにもかくにも続けて参ります。
私にとってはブログのために書き、ブログを更新するのはいまや一番の楽しみですから。

NoTitle

それでは言葉尻をとっちゃいまして、11111の前後賞リクエスト、良いですかね。勝手にふふ。

私、1500コメ&500拍手のときの、5に絡んだお話がとても好きなのです。
なので、今回は1に絡んだお話をお願いしても良いですかね。

お時間のあるときに^^

けいさんへ

リクエストありがとうございます。
5にちなんだお話といいますと、「鱒」ですよね。
あんな感じで「1」ですか。

あれはクラシックだったから、別ジャンルの音楽ストーリィがいいかなあ。
○○くんと××のセッションとか?

漠然とした夢が広がりますが、ふとした拍子にまとまるかどうか……なんとかまとまったら書きます。
アップできるようになりましたら、お知らせに行きますね♪
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