ショートストーリィ

limeさんのイラストに寄せてPART2

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20140409201055002半にゃ

「ハンニャ」

 
 夜中に校内に入るのは当然、禁止されているのだが、あまりにも美しい桜に誘われて、マコとふたりして校庭に足を踏み入れた。

「夜の桜って妖しいほどに綺麗だね」
「……ん、だけど、ミコも綺麗だよ」
「今、なんて言ったの?」
「なんにも言ってないよ」
「マコのほうが綺麗」
「……俺は綺麗だなんて言われても嬉しくないから」

 じゃれているような口喧嘩をしていると、彼が鞄からお面を取り出した。
 こんな時間に学校にいるのは、遅くまで部活をしていたからだ。私たちの部はメンバーが少なくてマイナーな、「能楽研究会」。私は能というよりも和楽器が好きで入部したのだが、マイナーな分、コアというかレアというか、おたくな部員がそろっていた。

 一年生は彼とふたりだけで、いつしか、マコ、ミコと呼び合うようになった。うちの祖母が「愛と死を見つめてだね」と言っていたが、私の子どものころにそんなドラマがあったような。

 今日はマコが家から般若の面を持ってきたものだから、先輩たちが盛り上がって遅くなった。マコと私は別々に帰るふりをして落ち合って、校庭の夜桜を見に再び忍び込んだってわけ。

「そのお面をつけて踊ってよ」
「俺は踊りなんかできないよ」
「だって、そういうおうちに生まれたんでしょ」
「じいさんが能面の細工師だとかってだけだろ。俺がちっちゃいときにじいさんは死んじゃったけど、面はあるから、そのうちの一枚を持ってきたんだって」

 そんな話をしながらも、マコが面を顔に当てる。一重瞼の優しい面差しが一変して、面の目の部分から覗くマコの眼が、妖しくつめたい光を放っているように錯覚してしまった。

「踊ってよ」
「……あ……ミコ……あ、あっ!!」
「え? どうしたの?」
「面が……面が……取れないんだ」

 まーた、そんなホラー漫画みたいな脅しをやる。私をだまそうったってそうはいかないんだからね、と思って無視しようとしたのだが、やっぱり気になる。半分は怖々でマコに近づいていって、面に手をかけた。

「なによっ、取れるじゃないよっ」
「ああ、よかった。取れたよ。あ、あれ?」
「どうしたの? まだなんかあるの?」

 顔からはずれた面を見たり、自分の頭をこつこつやってみたり、周りを見回したりしていたマコが私をじーっと見た。

「な、なんなのよっ」
「……にゃお」
「は?」
「にゃっ。あ、あ、なんか変だにゃ。変にゃんだな。俺、言葉が半分、にゃ、にゃにゃにゃ、にゃってなっちゃうんだにゃ」
「ふざけないでよ」

 こんな夜中にこんなところにいて、こんなに妖しくも美しい夜桜に囲まれていると、マコの馬鹿なおふざけが真に迫って感じられる。怖いのも腹立たしいのもあり、かといってマコをほっぽってひとりで帰るのも心細くて、どうしようかと悩んでいたらはっと気づいた。

「にゃ?」
「マコ、それってオヤジギャグだよね」
「あ、わかった?」
「般若、半にゃ」

 にゃははっと笑うマコと一緒に、私もにゃはっと笑う。

 面をはずして笑っているマコは、いつもの普通の男の子。笑い声がやんだら……やんだら……?

 静かになったら、マコが私にキスかなんかするんだろうか。いつまでもこうして笑っていたいような。その後の沈黙が怖いような、期待もしてしまうような、そんな夜だった。

おわり


limeさんのイラストを見せていただき、それから大海彩洋さんのショートストーリィを読ませていただき、そのときに出てきた「半にゃ」というフレーズからこんな話ができました。

大海さんの影響もあるかもしれなくて、お二方、すみません。。。。脱力系ストーリィだと思って、気が抜けた感を味わっていただければ幸いです(^^ゞ








 
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~ Comment ~

ふふふ

いやいや、とっても素敵で、妙にツボに来るお話でした。
おやじギャグじゃなくて、可愛らしい若者ギャグにしか思えない^^
なんか甘酸っぱいものを感じました。
能面細工師の祖父の面かあ。掘り下げたらまた面白いですよね。
皆さんちゃんと能楽に絡めて書いてくださるのがまたうれしいです。

すっごく軽く読めて、くすぐったい笑いがあって、そして最後にちょっとキュン。

笑いがおさまったあとの二人を想像したら、なんだか甘い匂いに包まれますね。
いいなあ~ちきしょう恋がしてえ・・・・・・・って。いま叫んだのは誰?

今回も楽しいSS、ありがとうございました^^

limeさんへ

早速お読み下さってありがとうございます。
大海さんのショートストーリィを読ませてもらって、ハンニャを変換しようとしたら「半にゃ」と出てきて、そのおかげで書けたようなものでした。

この前のはかなりウェットでセンチメンタルで、ちょっとおふざけバージョンも書きかけたんですけどちゃんと形にならなくて。
というわけで今回は軽く、コメディタッチにしてみたつもりです。あくまでも、つもり、ですが。

あー、ちきしょー、恋がしたい!!
え? どなたが叫んだのですか? (^-^;

私はもう現実の恋は勘弁ですが、恋愛小説だったら書きたいです。
上手にまとめるのはいつだってむずかしくて、四苦八苦してますけど、現実の恋よりは楽なんじゃないかなぁ、書くほうが。

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続いてみました

半にゃ、やっぱり私も気に入って、第二弾で続いてみましたよ。
あかねさんから頂いたコメントで、すっかり、これが気に入ってしまって^^;
般若と半にゃ、しばらく使えそうな誤変換です。
しかも、どうやらあかねさんとうちのPCが変?
limeさんところはそうではないということのようですし……
何はともあれ、こちらのお話、いいですね!
ちょっと妖艶な世界、だけど、すっかり淡い恋の物語になって、ほっとしちゃいました。マコとミコ、確かにドラマが……でもさすがにこれはリアルでは見ていないなぁ……なのに懐かしい。
ふたりの恋、ほのぼの、楽しませていただきましたにゃ。

鍵コメSさんへ

コメントありがとうございます。
そうなんです、そう来ました(^o^)

Sさんのお作もマイキャラ愛にあふれていて、いいんじゃありません?
私も実は、「にゃ」だから幸生……なんて考えたのですけど、前は章だったので、今回は自重しておきました。

あるとき急に「にゃ」の神が降りてきて……いや、神じゃなくて「にゃ」の……? なんだか知りませんが、なにかが降りてきて書かせてくれたのでした。


大海彩洋さんへ

いつもありがとうございます。
半人前のにゃんですね。そういう解釈もできますね。
うふふ。
ちらっと大海さんの二作目も読ませてもらいましたので、今度はしっかり読んで、またコメントしにいかせてもらいます。

「半にゃ」
はい、ハンニャは真っ先にこう変換されましたよ。
大海さんもけっこう、にゃ、にゃにゃ、って書いておられるんじゃありません?

たとえば、ヨムにしても、私のPCは「読む」より「詠む」が先に出るんですよね。書いているひとの癖っていうのがあるんじゃないかと思っています。

「愛と死を見つめて」は大昔に映画なんかでやってまして、わりと最近、テレビドラマでもやったような気がするんですけど……最近とはいっても私の場合、十年前でも最近だったりしますから、記憶があやふやですが。

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