連載小説1

「I'm just a rock'n roller」18

 ←いろはの「ろ」 →バトン・最愛オリキャラ・番外2
「I'm just a rock'n roller」

18

 どうしてなんだろうなと、伸也が首をかしげている。練習のために四人で集まった貸しスタジオで、尚は伸也の顔を見た。

「どうしてって、なにが?」
「恵似子ちゃんだよ。この間、デートをドタキャンしたせいで怒ってるんだろうか。あやまったんだけどな」
「なんでドタキャンしたんだ?」
「……仕事だよ」

「だったら、そんなことで怒る恵似子ちゃんじゃないだろ」
「だよなぁ……うん、まさかなぁ……」
「まさかって?」
「いや、いいんだけど、あれからメールしても返事が来ないんだ」
「電話は?」
「しにくくってさ」

 メールに返事がないのは、いずれかのケータイの調子がおかしいからではないのか? 尚にはそうとしか考えられない。ならば電話をして確認するしかないではないか。
 練習の合間の小休止、飲み物を買いにいっていた冬紀と耕平も戻ってきて、なになに、どうした? と伸也に尋ねる。耕平から冷たい缶コーヒーを受け取って、伸也が言った。

「恵似子ちゃんがメールの返事をくれないんだ。なにか怒ってるのかもしれないから、電話もしにくくってさ、どうしようかな」
「怒らせたのか?」
「うーん……わかんね」
「嫌われたのか?」
「わかんねえよ」
 
 冬紀と伸也が会話していて、耕平は黙ってコーヒーを飲んでいる。尚も黙ってコーヒーを飲んでいると、冬紀が言った。

「おまえって勇気ないよな。電話しないとはじまらないじゃないか。できないってのは怒らせたとか嫌われたとかって心当たりがあるからだろ」
「なくもないんだけど、まさかなぁ」
「まさかってなんだよ」
「いやいや、いいんだ。それ以外には心当たりなんかないし、俺はやましいことはしてないんだよ」
「だったら電話しろよ」

 煮え切らない態度の伸也に、冬紀が言った。

「ま、別に無理に電話しなくてもいいよな。恵似子ちゃんがおまえに愛想をつかして、別れようとでも思ってるんだったらちょうどいいじゃないか。おまえ、あんな女に本気で惚れてたわけじゃないだろ」
「あんな女って……」
「あんな女じゃないか。おまえも実は恵似子とは別れたい。だから、そうやってむこうがメールもしてくれなくなったのをいいチャンスだと思ってるんだ」
「思ってねえよ」
「無意識で思ってるんだよ」
 
 決めつけられた伸也はうぐっと唸り、尚も首をかしげた。
 あんな女と言われるのはひどすぎるが、尚から見ても恵似子は、可愛いとかおしゃれだとかいい女だとか思えるタイプではない。冬紀だったらまちがいなく、むこうから好きになられて告白されたとしても無下に拒絶してのけるだろう。

 おそらくは伸也は冬紀ほどに面食いではないのだろうし、恵似子が俺を好いてくれているんだから、俺から告白しなくちゃとの感情のもと、つきあうようになったのだと尚は認識している。
 そのくせ、告白した途端に伸也は後悔したのだとも尚は知っている。友永冬紀の欠点が女に関するちゃらんぽらんさだとしたら、武井伸也は優柔不断だ。

 でも、俺みたいに女との恋愛話ひとつもないよりはいいのかな、なぁ、すでにそんなもんは超越してる赤石耕平、なんとか言えよ、と尚は耕平の顔を見つめた。既婚だからといって恋愛を超越しているわけではないのだろうが、尚には耕平はその域に達していると映っていた。

「いいじゃん、そんなら別れたらいいんだよ」
「それって寝覚めがよくないよ」
「むこうがメールをしてこなくなったんだから、いいチャンスなんだって。おまえは俺よりはかっこよくもないけど、それでもミュージシャンだぜ。俺ほどじゃなくったってちっとはもてるはずなんだから、あんなのとは別れたらいいんだよ。大槻に乗り換えるとかどう?」
「優子ちゃんとは関係ないだろ」
「恵似子よりは優子のほうがましだろ。なんだったらまるっきり別の女、紹介してやってもいいよ」
「いらねえよ」

 いくぶん揶揄している調子で冬紀に言われて、伸也の機嫌がどんどん悪くなっていく。尚が腰を浮かせようとした寸前、耕平が言った。

「俺ら、今はそれどころじゃなくないか? 友永は女と適当にやっててもそんなこととは無関係に仕事もこなせるみたいだけど、武井はそれほど器用でもないだろ」
「うん、まあな」
「そしたら、恵似子ちゃんが連絡してこないんだったらそっとしておけよ」
「そう、なのかな」
「練習、やろう」

 お、おう、と返事をして冬紀が立ち上がる。不満そうな顔をしていた伸也も続く。さすが、恋愛は超越している妻帯者だと尚は思う。
 そういうものなのだから、俺はもっともっと恋愛なんかしている場合ではない。ジョーカーの正念場かもしれない今は、伸也以上に不器用で女の子とのつきあいにもまるで慣れていない尚は、そんな話ひとつもない身の上で幸運なのだ。


つづく









スポンサーサイト



【いろはの「ろ」】へ  【バトン・最愛オリキャラ・番外2】へ
  • Tag List 
  •  * |

~ Comment ~

NoTitle

メールも結構な因子ですよね。
返事をくれないというのは。結構深読みするとあれだという。。。。
( 一一)。

私はあまり気にしない性格ですが。
まあ、一方通行な観点もありますからね。
メールは。その辺は図太くいくのも大切ですね。
・・・ということを学びます。
メールとかに依存するのは個人的にしたくないんですよね。

LandMさんへ

いつもありがとうございます。

メールといえば私の場合。
PCがこわれたときに復元したらデータがみんな消えてしまい、メールが使用不可になりました。
ケータイは最近ようやくスマホに変えたのですけど、キーボードが苦手でして、メールはあまりしません。

私の場合、なかなか返事をしないのは苦手だから、だったりします。
恋愛に於いてはある面、図太くあるのも大切かもしれませんね。

NoTitle

あかねさん、あっと言う間に4月になりました。
気付けば、桜も・・・大阪では満開に近いのでしょうか。

今朝はここまで読ませていただきました。
恵似子ちゃん、結構好きなので気になります。
今回は伸也くんの気持ちも・・・やっぱり気になっているんですよね。
彼女だし。優しいんだなあと思いました。

このシリーズの続きはどこから行けばいいですか。
いつでも結構ですので、行き方を教えていただければ嬉しいです。

美月さんへ

きゃああ~ごめんなさい、続き、まだアップしていません。
近いうちにはアップしますね。
追いつくところまで読んでいただいて、ありがとうございます。

ほんと、三ヶ月なんてあっという間にすぎてしまいましたね。
この調子だと一年が終わるのもまたたく間。ああ、いやだいやだ。

ジョーカーストーリィはいちばん最初は、彼らが三十歳近くになったときから書きはじめたのですね。
ですから、私にとってはこのあたりは彼らの「青春のひとこま」って感じでして、恵似子ちゃん、どうしてるのかなぁ。
彼女は田舎に帰って堅実な男性と結婚して、平凡に幸せに暮らしていると思っています。無責任ですみませんv-239

とんでもない(^-^)

あかねさん、こちらこそすみません。
なんか、彼らに愛着が湧き、このままどうなって
いくのかなあと続きがすごく読みたくなりました。
また、ぜひぜひ続きをお願いしますm(__)m
ゆっくり待っています。フォレストシンガーの方に
戻ります!

美月さんへ

愛着が湧いたと言っていただけてとても嬉しいです。
ありがとうございます。

とりあえずこの第二部は完結させているのですけど、最近は別のほうに頭が行ってしまって、フォレストシンガーズもあまり書いていないのです。
凝り性ですのでひとつ気に入るとそればっかり書いてるのですが、フォレストシンガーズもジョーカーもまた書きますので、お時間があれば立ち寄ってやって下さいね。
お待ちしております。
管理者のみ表示。 | 非公開コメン卜投稿可能です。

~ Trackback ~

卜ラックバックURL


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

  • 【いろはの「ろ」】へ
  • 【バトン・最愛オリキャラ・番外2】へ