キャラクターしりとり小説

キャラしりとり13「アンチコミュ」

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キャラクターしりとり小説13

「アンチコミュ」


 暇にまかせてコミュニティ検索をしていたら、こんなのを見つけた。
「アンチ変な芸名」

 たしかに、変な芸名は世にあふれている。私の両親なども、テレビを見てケチをつけている。このコミュははじめて見たが、私もネットの質問コーナーに回答のようなものを書いたことはある。興味が湧いてきてコミュを覗いてみた。

「芸能人ったって日本人だろ。ハーフだったらまだ仕方ないにしても、日本人なら日本人らしい名前をつけろ。まぎらわしい」

「一般人の名前だったら、その名前は年を取ったらどうよ? ってのがあるんだけど、芸能人はいいのかなぁ。麻里鈴ちゃんはおばあさんになっても可愛いだろうから、マリリンばあちゃん。いいよね」

「美人だったら許される名前ってあるよね。麻里鈴って一般人のブサイク女には許されないけど、歌手の麻里鈴ちゃんの顔だったら許せるよ」

「ブサイク女には許されない名前って、他にはどんなのがありますか? 私は美麗っていうんだけど、ブサイクだったら許されないの? 年を取ったら許されないの? 私は美人だからいいんだけど、年は取るよ。いくつになっても両親が愛情を持ってつけてくれた名前なんだから、美麗って大好き」

「素敵な名前ですね、美麗さん。つきあって下さい(笑)」

「自分で美人だなんて言う女は、ろくなもんじゃないだろ」

「オレ、美麗って奴の正体、知ってるよ。ネカマだぜ」

「こほん、トピに関係のない会話は雑談コーナーでやって下さい。
 ところで、このごろ人気の出てきている朱螺ちゃんの名前ってどう思いますか? 僕はこの名前をはじめて見たときは、サザエかと思ったよ」

「サザエは「栄螺」と書きます。「朱螺」は「シュラ」ですね。阿修羅みたいですね。
 一般人の名前にしたって、よくない意味を持つ漢字を使うのが流行っています。「羅」「汰」「憂」「愁」「涙」「殺」「傷」などなど、無数にあります。朱はいいけど、螺旋とか螺子とかの「螺」、どこがよくて使うんだろ」

「まぁ、朱螺ちゃんは芸名ですからね。
 一般人の名前といえば、僕は娘に幸恵って名前をつけました。今どきじゃないかもしれないけど、いい名前でしょ」

「幸せに恵まれるんですね、なんて素敵な名前でしょうか」

「ありがとう」

「ぱっと見たところはいいのでしょうけど、「幸」という字は絞首刑を受けた人間の姿がもとになっているようですから、あまりいい意味の漢字ではないんですよ。子どもの名前に「幸」を使うと不幸になるってジンクスもあります。ご参考までに」

「トピちがいの会話になってますよぉ」

「あ、それから、朱螺は本名です。佐々木朱螺っていうんだそうです。この漢字にはあまり意味はないのですけど、「シュラ」の響きはよくありませんね。彼女の親は無教養ですね」

「シュラってどういう意味ですか」

「修羅……語源仏教の八部衆の一人、阿修羅。仏教の六道の1つ、修羅道。 上記、阿修羅は戦闘神で、修羅道は争いの世界とされる。そのため、争うことを一般的に修羅と表現する(「修羅場」など)
 阿修羅……八部衆に属する仏教の守護神。修羅とも言う。
大乗仏教時代に、その闘争的な性格から五趣の人と畜生の間に追加され、六道の一つである阿修羅道(修羅道)の主となった」

「彦さんの上の分、さっぱりわかんね」

「あなたも教養がありませんね。あなたのお子さんのお名前は?」

「劉児。三国志好きです」

「劉の漢字のもとの意味、知ってる? 殺すって意味があるんですよ。教養のない親のもとに生まれた子は気の毒だね」

「このコミュは、芸能人の変な名前を馬鹿にするためにあるのです。よその子どもさんの名前を叩くのはやめましょう」

「教養のない親に教えてあげてるんだ。こんな親は叩きまくって教えてやらないと、気の毒な子どもが増えるだろ」

 際限もなくこんな書き込みが続いている。
 漢字についての薀蓄を延々と書いて、教えてあげているという人物のハンドルネームは「彦」。名前からして男性だろう。年配の小言居士であろうと思えた。

 今日と明日は会社は休みなので、ネットのあちこちを見て時間つぶしをしているうちに夕食の時間になった。我が家は六十代の両親と、三十代の娘の私の三人家族。姉は結婚してアメリカで暮らしている。父も母もパートタイマーで働いてはいるものの、多忙でもないのでのんびりした暮らしだ。

 テレビを見ながらの食事は、いつもと同じ。母の作った美味でも不味でもないおかずとごはんを食べ、美代は嫁に行かん……と父が言いかけ、しっ、もういいじゃないの、と母が止め、私はそんな声を聞き流してテレビに集中しているふりをする。

 こんな暮らしはのんびりしていていい。両親がもっと年を取るまでは、母のごはんを食べ、父の話し相手になり、テレビを見て暇つぶしをしていればいい。食事がすめば私が後片付けをするのだから、家事の手伝いをしていないわけでもなく、私も仕事だってしているのだから。

 結婚なんて面倒だわぁ、と心底思うこんな暮らしの中で、だらだらっと流されていけばいい。はっきりとは言わなくても、私はそう思っていて、それが悪いことだとは誰にも言われたくなかった。
 でも、暇っていえば暇だな、あのコミュ、面白そうだから入ろうかな、ぼーっと考えながら食事をしていたら、母が言った。

「この子の名前……なんて読むの?」
「ああ、ミミ・ぴょんぴょん、って読むんだよ」
「なんだ、それは、人の名前か」

 魅深・兎耳。こう書いて「ミミ・ぴょんぴょん」。まさに、芸名だから許される名前だろう。テレビに出ている可愛いカワイイの女の子を見て、母が文句を言う。父は何度聞いても、ミミ・ぴょい? だとか、ミミ・ぴよぴよか? などと問い返していた。

「魅深・兎耳、ミミ・ぴょんぴょんって超可愛い。ふたごの女の子が生まれたら、魅深と兎耳にするって決めました」

 後片付けをすませて、自室に入ってパソコンを起動する。ぴょんぴょんの名前が話題になっていないかなと、昼間に見たコミュを覗きにいくと、こんな書き込みをしている女性がいて、それにレスがついていた。

「ミミとぴょんびょんって読むの?」

「そうでーす。魅深はありそうだけど、兎耳って書いてぴょんぴょんって、目からうろこっていうの? そんなの、アリなんだーっ!!」

「アリかなぁ……美鼠って書いてミニーって名前も見たことあるから、いいのかなぁ。魅深は普通だしね、アリだと思うよ。ふたごを出産予定なんですか」

「いいや、よくないっ!!」

 そこに割り込んできたようなのは、彦、彼はネットの書き込みであるにも関わらず、憤怒が伝わっている様子で激昂していた。

「魅深だってよくはありません。魅という字には「鬼」が入っているでしょう? 人の名前に鬼だなんて、絶対によくありません。ぴょんぴょんは論外です。芸名だからいいって意見もありますが、こうしてわが子に馬鹿な名前をつける馬鹿な親を産むという明らかな弊害が出ているんです。やめなさい」

「ふたご、もうじき生まれるよ。決めたもんね。ミミとぴょんぴょん、可愛いじゃん」

「その名前を背負っていくのはあなたのお子さんです。あなたは可愛いと思っても、他人にはバカな名前だとしか思えません。せめて愛称をミミとぴょんぴょんにして下さい」

 よくもこんなに他人によけいなお節介をできるもんだと、私はむしろ感心してしまう。この彦さんって何者なのだろう? と野次馬根性も湧いてきたので、彼のプロフィルを見にいった。

「彦です。二十三歳になりました。
 日本一偏差値が高いといわれる大学を卒業して、理系の専門職に就きました。
 大学も仕事も理系ですが、文学にも造詣が深いです。芥川賞受賞作は全作品読破しています。
 直木賞作品は低俗ですので、お勧めしません。

 漢字と文学とカスタマーサポートについてでしたら、たいていの質問にお応えできます。
 質問によっては有料になりますので、お問い合わせ下さい」

 は? 二十三歳? すっごい自信。私よりも十も年下なのに、こんな男っているんだ。そばに寄りたくないな。
 正直、こんな奴のそばには寄りたくないから、コミュにも入らないでおこう。なにかの拍子に……あなたの生き方は云々、と大上段から意見されそうだ。アンチコミュなんてものは、他人として覗き見しているほうが楽しいのだろう。

END

12に文章だけ出てきた、ネットの住人が主人公です。
この次もネットの住人になりそうです。






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NoTitle

この頃の名前に関しては複雑な心境の私ですが
時代なのでしょうか。実際紅白に出ているグループの
名前はさっぱりわかりません。
このストリーはいかにも現代の世相を映していて興味深い
まのでした。でも魅深兎耳には声を上げて笑ってしましました。
傑作ですね。こんな名前思いつくあかねさん若いなあ。
私は彦さん派ですかね。

danさんへ

こんなのもお読み下さって、ありがとうございます。
キャラしりとりは在庫が少なくなってきていますので、めったに更新もしていませんが。

魅深・兎耳、お察しいただけてると思いますが、きゃりぃ・ぱみゅぱみゅからの連想です。
まったく、danさんのおっしゃる通り、芸名も子どもの名前もすごいですよねぇ。
月と書いて「るな」だなんて、普通に読めるようになってしまいました。

芸名ってものはまた別なんでしょうけど、最近のお笑いや音楽のグループのユニット名もすごいですよね。あまりにたくさんあってかぶらないようにするのが大変なのでしょうけど。

「世界の終わり」なんてインパクトの強いバンド名のわりには……むにゃむにゃ、ここまでにしておきます(..)
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