茜いろの森

* * *

別小説

*  
 「続・ラクトとライタ」(好きだから・第二話)
「ラクトとライタ」続編「好きだから」第二話1 小柄で可愛らしい女性と、彼女よりはやや身体の大きな男性。このカップルは恋人同士なのだろうか。僕が働いている郵便局に時折あらわれるふたりの関係が、急に気になってきた。 郵便物の受付をしながら、さりげなく指に目をやる。ふたりとも、左手の薬指にリングをしている。夫婦か……おそろいの指輪だから、普通に考えたら夫婦だろう。僕と変わらない年ごろのくせに結婚してるだな...

ショートストーリィ(フォレストシンガーズ)

*  
 フォレストシンガーズ「千曲川旅情」
フォレストシンガーズ「千曲川旅情」 メジャーデビュー十周年記念イベントが好評のうちにすべて終わり、心新たに次の道へと進み出した我々、フォレストシンガーズの十一周年記念イベントのひとつは、各自のソロライヴだ。 木村章、本庄繁之、本橋真次郎、そして三沢幸生。俺が終わるとフィナーレは乾隆也。 若い層を中心とする女性人気の高い章でわーっと盛り上げておいて、ちょっとだけ人気的にはこころもとないシゲさんで落ち...

novel

*  
 小説336(黄色いシャツ)
フォレストシンガーズストーリィ336「黄色いシャツ」1 ハルモニームジーク・オオヤマ。 日本語とドイツ語が混在している、私たちの高校の吹奏楽部の名前だ。子どものころからフルートを習っていた私は、大山高校に入学してこのクラブに入部した。「私はあんまり楽器の正式名称を知らないんですけど、あれってなんていうんですか? 鉄琴でいいのかな」 細身で中背の二年生男子が担当している楽器について尋ねると、キャプテンが...

ショートストーリィ

*  
 続・水仙「雪中花」
「花物語」一月・水仙続編です。「雪中花」 昨年の今ごろだっただろうか。睦月がスーパーマーケットに買い物に行くと、一階の仮設ステージに無料ライヴの看板が立っていた。 このスーパーでは不定期にここにステージを作り、歌やバラエティのライヴを行う。今日はマジックショーらしくて、すでに客席にすわっている人もいる。大人たちが席についている周りを、子どもが走り回っている。ステージでは準備が整い、出演者の出番を待...

キャラクターしりとり小説

*  
 キャラしりとり9「罰ゲーム」
キャラクターしりとり9「罰ゲーム」 同じクラスの女子が二名、俺を呼びにきた。「香川くん、益美が校庭で待ってるよ」「俺を?」「そう。鉄棒の裏手のところで待ってた。行ってあげて」 訝しく感じながらも、待っているのならばと、彼女たちの言った場所に出向いた。 校庭の鉄棒の裏には巨大なクスノキが立っている。益美はクスノキの幹にもたれて、ひと待ち顔をしていた。「お待たせ。俺になにか用?」「……香川くんが私に用事...

ショートストーリィ(しりとり小説)

*  
 46「藤ばかま」
しりとり小説46「藤ばかま」 友人に誘われていった植物園は「古典の花々」をテーマにしていた。みどり子は大学では古今集やら万葉集やらを学んでいたのだし、源氏物語をはじめとする平安時代の文学も愛していたから、古代から日本に咲く花々には興味があって、植物園の散策はたいそう楽しかった。「みどりちゃん、苗を売ってるよ」「そうね。なにか買っていこうか」「私たちの想い出の花になるものね」 これ、簡単に育てられます...

連載小説1

*  
 「We are joker」36(第一話完結)
「We are joker」36 ガキのころのまんまの部分もあるものの、そのまんまではいられないところのほうが多くなっている。ロックキッズとはいっても、永遠のキッズではいられないのも当たり前だった。「里子さん、俺、寂しいんだ。今夜は客も来ないから店を閉めて、ふたりで飲みにいかない? 里子さんは勝彦さんの彼女だっけ? そんな女性に手は出さないからさ」 誰か来ないかな、芳郎さんだったらおごってもらえるし、まり乃さん...

ショートストーリィ(グラブダブドリブ)

*  
 グラブダブドリブ・豪「りばいぱる」
フォレストシンガーズショートストーリィ7つ、というのがあります。フォレストシンガーズストーリィ1-第一話「はじまり」私にとっては同じくらいに愛着のあるグラブダブドリブも、6つのショートストーリィにしました。第一話・司「雪の朝」第二話・ジェイミー「プルシアンブルー」第三話・ドルフ「少年」第四話・ボビー「Coin toss」第五話・悠介「個人教授」第六話は真柴豪、グラブダブドリブのプロデューサーです。できましたら...

連載小説(ヴァーミリオン・サンズ)

*  
 ヴァーミリオン・サンズ「シャンパンイエローの薔薇」1
イラスト・Yさん前書きのイラストとはディーンの髪型がちがいますが、別の友人が描いてくれたショーコとディーンとバートです。このストーリィの初期設定では、「時は2013年」。まさにその年になりましたので、公開させていただきます。よろしくおつきあい下さいませね。「ヴァーミリオン・サンズ」「第一話・シャンパンイエローの薔薇」1「お父さん、お母さん、お世話になりました。行ってきまーす」「行ってらっしゃい。私も近い...

forestsingers

*  
 フォレストシンガーズ二月ストーリィ「St Valentine's Day kiss」
フォレストシンガーズのバレンタインディ「St Valentine's Day kiss」1・ 真次郎・三十二歳 戸外は寒いが、ここはあたたかで、ふーっと居眠りしたくなる。仕事と仕事の合間に散歩をして、俺は喫茶店でコーヒーを飲んでいた。そうしていると女の子の歌が聞こえてきた。「シャラララ素敵にキッス シャラララ素顔にキッス シャラララ素敵にキッス シャラララ素直にキッス 明日は特別 スペシャル・デイ 一年一度の チャンス ...

ショートストーリィ(花物語)

*  
 花物語・February  
「花物語」二月・こでまり 単に小出万里江だからだと思っていた。 コイデ・マリエ。ニックネームはこでまり。 去年の暮れにいきなり、父親の転勤が決まった。普通は四月になってから赴任するものだろうし、突然だったのならば父親だけが先に赴任地に行って、家族はあとから、でもいいだろうに、母が宣言したのだった。「家族はいつだって一緒にいるものよ。美景だってまだ中学生、義務教育なんだから転校はできるの。一緒に行き...

novel

*  
 小説337(The solo)
フォレストシンガーズストーリィ337「The solo」1・洋介 希望と失望の繰り返し、人間は誰でもそうなのだろうか。俺の人生もそのまんまだった気がする。乾さんが教えてくれた、「人間万事塞翁が馬」とかいうことわざは、俺のためにある台詞? ガキのころには楽しかった。俺は顔がよくてスポーツ万能だったから、性格も明るかったから、勉強なんかできなくても先生の受けもよく、友達にも人気があった。もうちょっとがんばったら成...

ショートストーリィ(雪の降る森)

*  
 フォレストシンガーズ「小説・雪の降る森」
「雪の降る森」シリーズno.5です。limeさんとけいさんのおかげでここまで書けました。「多謝!!」でございます。小説「雪の降る森」1 突然、悲鳴が響き渡る。きゃああーっ!! あの声は雪瀬だ。つい先刻、女湯のほうにはあたしだけしかいないの、と雪瀬は言っていた。「ユキっ!! なにがあったんだ?! 今行くから待ってろ!! しっかりしろっ!!」「本橋、行くって、目的地は女湯だよ」「そんなもん、かまってられるかよっ!!」 走り...

ショートストーリィ(しりとり小説)

*  
 47「摩訶不思議」
しりとり小説47「摩訶不思議」 三つ年下の弟、本庄繁之とは、希恵が高校を卒業するまでは同居していた。希恵は名古屋の大学に進み、就職も名古屋でし、そのころには繁之が東京の大学に入学したので、姉と弟としてともに暮らしていたのは十五年ほどだ。 あの、いたって普通の少年だった繁之が……希恵は不思議の感にとらわれている。 子どものころからおじさん声で、母などは、なんであの子は子どもらしい可愛らしい声を出さんのか...

連載小説1

*  
 「We are joker」外伝1
「We are joker」外伝1「香る」 1 民宿の庭に子供用のプールを持ち出して、三人の男たちがたわむれている。あの姿を曲にできないかと、友永冬紀はギターを抱えて眺めていた。「風呂じゃないんだからさ」「だけど、これ、いい匂いだぞ」「どれどれ? うん、いい匂いではあるけど、そんな匂いの石鹸って女が使うもんだろ」「男が使ったらいけないのかよ。俺、足が汚れたから洗おうっと。おまえらも、このあとで西瓜を食うんだろ。...

時代もの

*  
 新選組異聞「宵山の夜」
「宵山の夜」1 祇園祭に繰り出す人々の雑踏の中、はなが手を引いていたふたりの子供のうちのひとり、草太がなにものかに突き飛ばされてころんだ。「なにするんやっ!」 気の強い草太は倒れたままで大声を上げる。知らん顔で通りすぎようとしていた若い男が振り向いた。草太をつっ転ばせた張本人であろう、下卑た顔立ちの若者だった。「なんやと。クソ生意気なガキが」「兄ちゃんがわしを突き飛ばしたんやないか」「それがどないし...

番外編

*  
 番外編98(マリッジリング)
番外編98「マリッジリング」1 同病相憐れむとは、彼と僕のこの心境をさすのだろう。いや、そんな気分になったのは僕だけか。 彼の指にもリング、僕の指にもリング、とこしえの愛を誓った、最愛のひととの絆のはずなのに。「デートに行ってくる」「ええ? 休みなのに? 僕はどうしたらいいの?」「クリちゃんだってデートしたっていいんだよ。操さんでも誘ったら?」「モモちゃあん……」 意地悪を言われるのも無理のない部分は...

連載小説(ヴァーミリオン・サンズ)

*  
 ヴァーミリオン・サンズ「シャンパンイエローの薔薇」2
「ヴァーミリオン・サンズ」「第一話・シャンパンイエローの薔薇」3 スパゲティペスカトーレとレタスサラダ、夜食にすればいささか重くて、太っちゃうじゃないのよ、と言いたくなる料理をバートが作ってくれて、ディーンが食卓に並べてくれた。「いただきます。う、椅子の高さが……」「ああ、あなたには高いかな? 落ち着かない?」「いえ、あなたたちの規格に合わせれば、私の身体だと小さいのは当然よね。そっか、そうしてあな...

別小説

*  
 「続・ラクトとライタ」(好きだから・第三話)
「ラクトとライタ」続編「好きだから」第三話1 しまったしまった、やばいやばい、と職場の先輩が呟いている。その理由はこうだった。「すっかり忘れちまっててさ、今朝、かみさんに言われたんだ。昨日はなんの日だか知ってた? え? ってなもんさ。言うんだったら昨日にしてくれよ、今日はなんの日? だったらいいけど、昨日のことを言われたって取り返しがつかないだろ」「なんの日だったんですか」「かみさんは怒ってて、今...

ショートストーリィ(フォレストシンガーズ)

*  
 フォレストシンガーズ「花づくし」
フォレストシンガーズ「花づくし」 男のひとは女になにかを教えるのが好きだそうで、女から教わるのは気に食わないというタイプもいるらしい。けれど、私が結婚したひとは、なに、それ? 俺は知らないよ、恭子、教えてくれよ、と言う性格だ。「母の故郷の、宮崎県のわらべ歌にこんなのがあるんだよ」「歌って」「私は歌うのはいやだから、母に歌ってもらって録音してきたの」 結婚してはじめて、ひとりで里帰りをして、母の歌を...

ショートストーリィ(グラブダブドリブ)

*  
 グラブダブドリブ・ボビー「プカプカ」
グラブダブドリブ「プカプカ」 ふらりと入っていった店では、顎ひげを蓄えた痩せた男が歌っていた。「おれのあん娘はタバコが好きで いつも プカ プカ プカ 体に悪いからやめなって言っても いつも プカ プカ プカ 遠い空から降ってくるって言う 「幸せ」ってやつがあたいにわかるまで あたい タバコ やめないわ プカ プカ プカ プカ プカ」 ブルースフォークとでもいうのだろうか。古い歌だが、何人ものシンガーがカバー...

連載小説(ヴァーミリオン・サンズ)

*  
 ヴァーミリオン・サンズ「シャンパンイエローの薔薇」3 (第一話完結)
「ヴァーミリオン・サンズ」「第一話・シャンパンイエローの薔薇」6 仕事に没頭していれば悩み事は遠くなっているが、それ以外の時間にはショーコの頭の中は、ディーンとバートとあの家とで占められていた。 黒褐色の長い髪に濃いブラウンの瞳、身長は百八十五センチだと言っていたから、ショーコよりは三十センチ高い。ひとつ年下のほっそり優雅なイギリス紳士、ディーン・ロッカート。ものごしは穏やかで優しげではあるが、意...

ショートストーリィ(花物語)

*  
 花物語・March 
「花物語」三月・マーガレット この雑誌、まだあるんだ。 少女のころに胸をときめかせて読んだ雑誌が、当時とは表記を変えた名前で書店の店頭に並んでいる。なつかしくて手に取り、知らない名前の漫画家ばかりが並んでいるにも関わらず、雑誌を買った。 漫画からはじまってジュニア小説にはまり、文学作品や大人の小説も読むようになっていった、中学、高校時代。漫画から卒業しない女性もよくいるようだが、私は漫画は読まなく...

novel

*  
 小説338(ダークマター)
フォレストシンガーズストーリィ338「ダークマター」1「ランだって聞いたことはあるだろ?」 喫煙者大歓迎というおかしなコンセプトの酒場「マギー・メイ」のテーブルで向き合って、俺に質問しているのは真行寺哲司。なにを? と問い返すと、哲司は言った。「バイセクシャルなんて言ってる奴は、ほんとはホモセクシャルなんだってさ。ホモってのは男同士も女同士も含んでの意味で、同性としかセックスできないんじゃなくて、僕は...

forestsingers

*  
 フォレストシンガーズ三月ストーリィ「卒業」
フォレストシンガーズの三月ストーリィ章(真知子)・真次郎(昇)・隆也(まゆり)・幸生(翔太)・美江子(丈人)・繁之(弾)・英彦(恵)「卒業」1 親から離れてはじめての集団生活となると、子どもは不安になるものだ。母親にしがみついて離れなかったり、泣きわめいたり、給食を食べなかったり、友達と遊べなかったり、先生を嫌ったり。 三月生まれなのだから他の子よりも身体が小さくて、母親べったりの木村章もそうだった。四歳の子に...

ショートストーリィ

*  
 結婚ストーリィ「くねくね」
「くねくね」 息子、三十一歳。 母親が言うのもなんですが、長身で爽やかなイケメンです。 一流大学を卒業して一流企業に就職し、年収は約800万円。 嫁、三十八歳。 背が高くてどっしりしたおばさん体型。というよりも、おばさんです。 専門学校を卒業して結婚し、バツイチになって再就職しようとするも、正社員にはなれなくて派遣で息子の会社にやってきました。 どうしたわけだかふたりは恋愛関係になり、つきあいはじめ...

キャラクターしりとり小説

*  
 キャラしりとり10「ルーティン・ルーティン」
キャラクターしりとり小説10「ルーティン・ルーティン」 すこし書いては読み返し、おのれの文章の拙さに苛立って、リズムとテンポの悪さに腹立たしくなる。きちんとプロットを立てたつもりが、書いていると矛盾点が出てくる。煙草の本数ばかりが増えていき、こんなもの、書くのはやめようかとパソコンのディスプレィを睨んでいた。「えーと、ご用はこちらさんでございますな」 とぼけた男の声がして、私は周囲を見回した。「あな...

別小説

*  
 「続・ラクトとライタ」(好きだから・第四話)
「ラクトとライタ」続編「好きだから」第四話1 ショックといえばショックだったのだが、考えてみれば、俺はもてすぎるから結婚できなかったわけで……と言ってみてもやっぱりショックだ。あのガキの楽人が俺よりも先に結婚するなんて。「そうよねぇ。雷太は三十になっても独身。母さんだって、楽人くんよりも雷太が先に結婚するんだとばかり思ってたわ」 五日間の夏休みで帰省して、母にまで言われていると電話が鳴った。受話器を...

ショートストーリィ(フォレストシンガーズ)

*  
 フォレストシンガーズ「tracks of my tears」
フォレストシンガーズ「tracks of my tears」1・章 おしまいになるのはあっけない。スーに捨てられて、幸生が変な歌詞を書いてくれて、この歌詞に曲をつけろと言われたから、挑戦された気分になって気がまぎれていた。 だけど、日がすぎると胸に迫ってくる。俺はもう二度とスーと会えない、あの声が聞けない、あの罵り言葉だって、章、好きだよ、って言葉だって聞けない。 もう二度とスーと喧嘩ができない。あの笑顔も怒り顔も...

グラブダブドリブ

*  
 グラブダブドリブ「約束」
グラブダブドリブ「約束」1・ドルフ 舗道が小雨に濡れて、晴天の日よりも風情を帯びて見える。こういう景色を詩にするといいんだろうなとは思うが、俺には詩を書く能力はない。頭の中で雨のリズムと俺のドラムでコラボなんかしながら歩き出した。「……あのっ、これっ、ありがとうございましたっ!!」 叫び声に足を止めると、俺の前に少女が立っていた。「これって、傘?」「はいっ、ありがとうございましたっ!!」「……お礼を言われ...

ショートストーリィ(しりとり小説)

*  
 48「銀の指輪」
しりとり小説48「銀の指輪」  コンセプトは「宝石」なのだから、宝石にまつわる思い出話をしようと、パールが言う。 ヴォーカルのファイはサファイア、ギターのエミーはエメラルド、ベースのトピーはトパーズで、キーボードのパールは真珠、ドラムのルビーは紅玉がステージネームの宝石だ。 ヴィジュアル系ロックバンド、「燦劇」。惨たらしい劇ではなく、燦々ときらめく劇、という漢字を思いついたのもパールで、五人の中では...

時代もの

*  
 新選組異聞「内緒ばなし」
04/9/30「内緒話」壱 むろんはじめのうちは、隠居は断じていかんと言い張った。スガが隠居の膝に手をかけて揺さぶり続け、たゆまず懲りず飽きずねだったら、山ほどの条件つきで許してくれたのである。「おまえはわしの孫娘ということにする。言い出したら聞かないわがまま者で、どうしても連れてきてくれと駄々をこねまくられてわしが折れた。おスガ、おとなしくしてるんだぞ。できればおまえはひとことも口をきかないのがいちば...

novel

*  
 小説339(Unrequited love)
フォレストシンガーズストーリィ339「Unrequited love」1 他人の空似ってやつなのだろうか。「Makiko's pasture」。 十九歳の駆け出し女優、佐田千鶴との共演は、偶然だったのかそうではなかったのか。必然だとも呼べない気もするが、なんらかの縁があったからこうなったのだろう。 出会いは写真撮影スタジオ。映画にミュージシャンの役で出演してほしいと依頼されて、好奇心もあり、映画なんてかっこいいじゃないか、との興味...

ショートストーリィ(しりとり小説)

*  
 49「若気のいたり」
しりとり小説49「若気のいたり」 校庭の片隅でお弁当を食べ終えて、幸美は温子とともに雑誌を開く。今春に高校生になったばかりの彼女たちにとって、月に一度の楽しみのこの雑誌「朱星」を交互に買う。今月は幸美の番だった。「あ、載ってる載ってる」「ジュリーは載ってるのが当然じゃないの。あっちゃん、今さらなに言ってるの」「ちがうんだ。ジュリーじゃないのよ。ユキちゃんだって知ってるでしょ」「……ジュリーじゃない誰か...

リクエスト小説

*  
 RIKA(version3)「Hallucination1」
三人目のリカのストーリィです。どこかに似た名前のキャラが出てきますが、同名異人ですので、すみません。。。。「Hallucination」11・利佳子 毒があるかもしれない草なのだから、触れるなと言いつけられていた。けれど、そう言われると好奇心が猛烈にそそられる。淡いライラックいろのライラックに似た花は、ライラックにはないはずの甘ったるい香りがする。あたしは偽ライラックを摘んだ。 綺麗な花に似合わない毒々しい香り...

ショートストーリィ(雪の降る森)

*  
 フォレストシンガーズ「小説・雪の降る森・別」
「雪の降る森」シリーズno.6です。limeさんとけいさんのおかげで続いてきたこのシリーズ、今回はlimeさんからネタを頂戴しました。小説「雪の降る森」     別バージョン 五人で露天風呂に入っていくと、先客がいた。湯気でかすんでいてよくは見えないが、小柄な老人であるらしい。おじいちゃんは俺たちを気にもしていないようなので、特に挨拶もせず、てんでに湯に入って手足を伸ばした。「極楽極楽」「兄貴、そういう決まり...

企画もの

*  
 7000HIT御礼「フォレストセブン!!」
メッセージでご感想を下さった慚さんが、「フォレスト7」という形容を出して下さいました。セブン!! 7000hit企画にぴったりということで、お遊びストーリィです。慚さん、ありがとうございました。ご訪問下さった方々にも、ありがとうございました。「フォレストセブン」 なんだって私までがこんな……と思わなくもないのだが、乾くんに言われたのだった。「なんとか戦隊……この場合は七人だからレインボー戦隊か、レインボー戦隊フ...

ショートストーリィ(しりとり小説)

*  
 50「リリシズム(特別編)」
しりとり小説50「リリシズム」 真夏の海、健康的とはいいがたい白い肌に、黒と緑の水泳パンツを身につけた男がいる。大きなパラソルを立てて、シートの上に足を投げ出している彼は、ひとりで呟いた。「しりとり小説節目の第五十話。ってことで、やはりここは著者のメインノベルである、フォレストシンガーズストーリィの主人公、我々が主役ですね。中でも俺がいちばん登場回数が多い? 俺自身ではなく、俺と関わりのあるひとが多...

ショートストーリィ(フォレストシンガーズ)

*  
 フォレストシンガーズ「M」
フォレストシンガーズ「M」  誰にだってあるような想い出のひとこま。私はあなたの人生の通りすがりの女。わかってはいるけれど。「いつも一緒に いたかった となりで 笑ってたかった 季節はまた 変わるのに 心だけ 立ち止まったまま」 いつも一緒になんかいたわけではない。 大学の合唱部の男子部にいた本橋さん。「あいつは怖そうな顔をしてるのに、けっこうもてるんだよな」「歌がうまいし、背が高いし……女の子から見た...

novel

*  
 小説340(千客万来)
フォレストシンガーズストーリィ340「千客万来」1・美江子 ドラマだか映画だかのワンシーンでもあるかのごとく、その光景が目の前にありありと浮かぶ。 この店は私たちの母校の先輩であり、ロック同好会キャプテンであった林原爵さんが雇われマスターをつとめるロック喫茶だ。ロック同好会といえば、私は真っ先に柴垣のヤスさんを思い出してしまう。若いころに海辺で私を口説いたヤスさん。 その話は別件だから置いておいて。 ...

ショートストーリィ(しりとり小説)

*  
 51「むらさき情歌」
しりとり小説51「むらさき情歌」「雨に濡れてるあなたのうなじ 想い流るる春の宵 忘れたいのに 忘れられない 思い出しては切なくて ああ 今宵のネオンはむらさき……むらさきの夜」 メロディも歌詞もなにかに似ている。似すぎている。 「俺が作詞作曲したんだよ。本橋くんに聴いてもらいたくて」と言って、敬一郎に歌を吹き込んだカセットを渡したのは職場の上司なのだから、下手なことは言えなくて受け取ってから、よーく考...

別小説

*  
 「続・ラクトとライタ」(好きだから・第五話)
「ラクトとライタ」続編「好きだから」第五話1 仲良くしてもらっているといっても会うのは外ばかりで、自宅に招かれたのは初だった。 会うのははじめての、楽人さんや絵恋さんの友達にも会って、僕はいささか地に足のついていない状態だったかもしれない。「大人だよね」「なにが?」「だって。結婚記念日パーティって、大人のすることでしょ」「そりゃあそうね」 誇らしそうにも見える表情で絵恋さんはうなずき、楽人さんとは...

novel

*  
 小説341(ドラマティックナイト)
フォレストシンガーズストーリィ341「ドラマティックナイト」1・真次郎 深夜のテレビ局で桜田忠弘に会った。「俺もオーディションに応募しようかな」「桜田さんはオーディションにというようなポジションの役者じゃないでしょ?」「ってーか、俺では年を取りすぎか。きみらに深く関わる大学教授ってのはいないの? 大学教授で探偵でって役でミステリ映画に出たことはあるんだよ」「俺も脚本はまだ知らないんですよ」 おおまかな...

ショートストーリィ(フォレストシンガーズ)

*  
 フォレストシンガーズ「春雷」
フォレストシンガーズ「春雷」 運も才能のうちだと言う。歌で身を立てたいと心に誓うようになったときには、俺の身近には強力なライバルがいた、しかも二名も。 大学を卒業してからは歌手になろうと歩き続け、俺には歌の才能はあるけれど、運がないのは才能が足りないのだと自棄になっていたこともある。あのころ、そのあたりの事情を知っている者には問われた。「人には心のささえってものが必要だろ。おまえのささえはあいつら...

ショートストーリィ

*  
 野良猫ストーリィ「追いかけて」
野良猫ストーリィ「追いかけて」 いやがられても嫌われても、避けられても逃げられても、殴られそうになっても、サブはクロが好きだ。公園に集まる猫たちの長老みたいな、三毛猫ばあちゃんがサブを見て笑っていた。「人間だとサブみたいなのは、ストーカーっていうんだよ」「ボクはストーカーサブ? かっこいいね」「かっこいいと思いたいんだったらそう思っててもいいよ。猫だからね……いいんじゃないの」 今日もサブはクロを追...

ショートストーリィ(花物語)

*  
 花物語・April 
「花物語」四月・チューリップ「ぶんぶんぶん 蜂が飛ぶ お池の回りに野薔薇が咲いたよ ぶんぶんぶん……」 のどかな風景に鼻歌がこぼれる。「咲いた咲いたチューリップの花が 並んだ並んだ赤白黄色」 池の回りには歌の通りにチューリップが並び、その近くには幼稚園からの遠足なのか、赤白黄色の帽子をかぶった幼児たちがたわむれている。 ベンチにすわってコンビニで買ってきたおにぎりを食べていた木の葉は、のどかすぎて眠...

forestsingers

*  
 フォレストシンガーズ四月ストーリィ「桜散る散る」
フォレストシンガーズの四月ストーリィ「桜散る散る」1・隆也 店から出てきた若い男のふたり連れは、俺に軽く目礼してから遠ざかっていく。彼らの話し声が俺の耳に届いてきた。「二月だったらいやだよな」「この名前、そうだね。この花って桜だろ」「桜が散るんだもんな」 そっか、落花イコール桜が散る、だ。サクラチルというのは入試に落ちた暗号のような電報文だ。俺も二十年前を思い出した。 高校受験の春、あれが俺の二十...

ショートストーリィ(フォレストシンガーズ)

*  
 FS四季の歌「早春賦」
フォレストシンガーズ・春「早春賦」 犀川のほとりを歩いている。ただ、歩いている。 歩いていると徒然にもの想う。 日本で一番早く桜が咲くのは高知県なのか。緋寒桜ならば沖縄あたりではもっと早く咲くのだろうが、ソメイヨシノ開花のニュースは四国から届く。和歌山県の紀三井寺の桜の蕾がひとつふたつ、ほころびたとのニュースも、昨夜のラジオから聞こえていた。 北陸はむろん花は遅い。俺が生まれて育った金沢では、三月...

ショートストーリィ(グラブダブドリブ)

*  
 グラブダブドリブ・ジェイミー「測地線」
グラブダブドリブ「測地線」 広い空間の真ん中にピアノが置かれている。ピアノの回りにも空間があって、そこだけが異次元のように思えるのは、ピアノに向かっている人物のせいだろうか。ベージュのドレスをセクシーに着こなした彼女は、ジェイミーの昔なじみだった。 パーティのゲストたちはピアノからはすこし離れて、シャンパングラスや料理を盛った皿を手に、彼女のピアノに陶酔しているようだ。誰も声も立てず、しわぶきひと...

連載小説1

*  
 「I'm just a rock'n roller」1 
ジョーカー続編「I'm just a rock'n roller」1 一ミクロンも売れてはいない。「ジョーカー」という名前を出して知っているひとがいれば、なんらかの関係者か、よほどのマイナーロックバンド好きであろう。 それほどに売れていなくても、一応はプロだ。なのだから、なんだかんだとややこしい手続きもあって、赤石耕平が正式なメンバーになるには時間がかかった。昨年の冬に知り合い、冬紀が勝手に、おまえに決めた、と宣言し、悠...
BACK|全20頁|NEXT